MODEL Art (モデルアート) 2017年 11月号 No.976

 

 MODEL Art (モデルアート) 2017年 11月号 No.976

 久々の艦船模型特集号。先月の特集がいつものハウツー系のネタながら、色々新機軸って感じだったのに対して、今月号は実にオーソドックス。1/700のタミヤ「島風」、ヤマシタホビー「雷 」、ハセガワ「早波」など、旧海軍の駆逐艦を中心に、一例ずつじっくりと見せる構成になっている。各記事は旧キット、姉妹艦との比較や、製作上のポイントなどをしっかりと押さえた行き届いたものなので、該当するキットを作ろうって人には参考になると思う。紙面のレイアウトもこのサイズの雑誌としては、よく工夫されていて見やすい。自分は潜水艦以外ろくに艦船模型を作ったことがないけれど、なぜか駆逐艦の作例や完成品を見ると作りたくてムラムラしてくる。で、同型艦を集めたくなる。戦艦はそうでもないのが不思議。

 NEW KIT REVIEWではでかい(1/16)「T-72」、小さい(1/72)「エイブラムス」、1/48「Su-35」などの、かっこいいキットが取り上げられているので、駆逐艦目当ての人も興味を引かれるかも。久々の連載記事「FOLLOW YOUR HEART」はまたしても「ギャラクティカ」ネタ。地味な機体だったはずのメビウス1/32「コロニアル・ラプター」がフル装備状態になっている。別売パーツを使えばこの状態にできるらしい。劇中ではCGで描写される機体なので、作例もそのCGっぽさを狙って製作。とてもかっこよく仕上がっている。
 それから今月号に限らず、最近あちこちに配された小さい記事が目につく。今月号なら「ウォーターシステム」や「フィギュア教室」の記事。多少とっ散らかってる感はあるが(特集に絡ませればよかったのに)、これが結構ためになる。今のところ全く使い道は思い付かないけれど、「ウォーターシステム」はぜひ使ってみたい。海面作って潜水艦並べようかな。



 - 作例リスト (掲載順) - 航空機 戦車 艦船 車/バイク ■その他

連載記事『MA版 これだけは作ろう 第8回 Sd.Kfz.251/10 Ausf.D.3.7cm (Pak35/36) 搭載車を作る(完成編)』
『Sd.Kfz.251/10 Ausf.D.3.7cm (Pak35/36) 搭載車』タミヤ 1/35「ドイツ ハノマークD型装甲兵員輸送車」+「ドイツ 37mm対戦車砲」 ※ニコイチ改造・ジオラマ作品

特集「進化する艦船模型」
『日本海軍 駆逐艦 島風』タミヤ 1/700
『日本海軍 特型駆逐艦Ⅲ型 雷 1944(対空兵装増備時)』ヤマシタホビー 1/700 ※同社「綾波」「吹雪」再掲
『日本海軍 駆逐艦 早波』ハセガワ 1/700
『日本海軍 駆逐艦 夕雲』
『日本海軍 駆逐艦 清霜』ハセガワ 1/700「夕雲」改造
『海上自衛隊 補給艦 ましゅうSP 邦人救出作戦』アオシマ 1/700

特別記事「追悼 サム・シェパード 最速に挑んだ男の愛機を作る」
『ベル X-1 (イエーガー スーパーファイターズ)』アメリカレベル 1/32 ※ジオラマ作品
『NF-104A』ハセガワ 1/32「F-104G/S」改造

連載記事『モデリングJASDF 260回 』
「Aggressor Archive vol.18」

情報「World Modelers News No.3 ヤング・B・ソン氏に聞く」
「RAF Spitfire Mk.ⅠPilot WWⅡ」ヤング・ミニチュアズ 1/10バスト・モデル
「101st Airborne Division WWⅡ - CURRAHEE」
「Polish Winged Hussar 17th Centry」
「GERMAN STORMTROOPER WWⅠ」
「BRITISH SAS JEEP GUNNER North Africa 1941」
「ROMAN SIGNIFER 1st Century A.D」

特別記事
「ポルシェ・シンガー 911(964)」ヴィジョン 1/43 ※完成品の紹介記事

情報「もう悩まない! 水面/海面表現のニューマストアイテム」
「ウォーターシステム (水底カラー/大波小波/さざ波)」KATO ※マテリアルの紹介記事

NEW KIT REVIEW
『ソビエト軍 T-72B 主力戦車』トランペッター 1/16
『アメリカ主力戦車 M1A2 SEP』フライホーク 1/72 ※ジオラマ作品
『川崎 キ102甲』ソード 1/72
『A-4E スカイホーク』ホビーボス 1/48
『スホーイ Su-35 フランカーE』キティホーク 1/48
『UH-1D ヒューイ』キティホーク 1/48 ※ジオラマ作品

情報
『カルビン先生のフィギュア教室 第2回 顔を塗ろう その1』 ※DVD連動企画

連載記事『ジオラマ大作戦 NO.17 光を塗装で描写するジオラマを作る(2)』
『シトロエン 11CV スタッフカー』タミヤ 1/35 ※ミニアート1/35「フィギュア」「街灯」などを用いたジオラマ作品

連載記事『日本機大図鑑 連載第150回』
「慣性起動器把手」

連載記事『北澤志朗のネオヒストリックガレージ 連載第88回』
『ニッサン KHGC210 スカイライン HT2000GT-ES ’77』アオシマ 1/24

連載記事『FOLLOW YOUR HEART 第40回』
■『バトルスター・ギャラクティカ コロニアル ラプター』メビウス 1/32



 次号の特集は「マスキングなんて簡単だ!? (仮題)」。NEW KIT REVIEWではタミヤの1/35「ブルムベア後期型」などが予定されている。

日本海軍 駆逐艦 島風」タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ


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『本当にヤバイ ホラーストーリー ケータイ地獄』

 

 永遠幸 地獄少女プロジェクト, ナフタレン水嶋, 秋本葉子, 福月悠人, 大塚さとみ,立樹まや著『本当にヤバイ ホラーストーリー ケータイ地獄』講談社 2012 講談社コミックスなかよし 1368

 第1巻「友だち地獄」に続く第2巻は「ケータイ地獄」。2巻目にしてなんとも足が早いネタ持ってきたなーって感じ。冒頭、閻魔あい嬢が出てきて「あなたは携帯電話をもっていますか? 今回は携帯電話にまつわるお話…」なんてアナウンスをしてくれるのだが、全エピソードの登場人物が誰一人として携帯電話を「電話」として使用してなかった。どちらかというと「ネット地獄」。
 収録作は全部で6編、うち1編は前巻に続いて『地獄少女』のスピンオフっぽい作品、それから心霊4コマ『うしろの心霊ちゃん』が2ページ3話×3回という構成で収録されている。「ケータイ地獄」とはいうものの、基本的にはケータイをきっかけに生じる対人関係の悩みやすれ違いをテーマにしているため、印象は前巻の「友だち地獄」によく似ている。多少教訓めいたところも同様。また前巻には微妙に実話怪談っぽいニュアンスのエピソードが含まれていたが、それらしい話は今回はなし。
 
『理科室のふたり』立樹まや
 主人公は中学二年生の「ミキ」。家業が芸能プロダクションってことで、学園ヒエラルキーはバカ高く、取り巻きも多い。しかしそんな取り巻きの中に一人、どうにも癇に障るクラスメイトがいた。うろちょろ寄ってくるわりに、ミキのことを崇めようとしないのだ。しかも謎のイケメンと仲良くしているらしい。二人がいつでも理科室でイチャイチャしてると聞きつけて、さっそく横槍を入れるミキだったが……。
 こう見えて古典的な学校の怪談を一捻りしたエピソード。怖さはそうでもないけど意外性があった。携帯は一応カメラとして使ってたりするけど、全然ストーリーに絡んでこない。グロテスクな表現は、対象読者の年齢層を考えると充分か。登場人物の間で最も重要なのは空気を読めるかどうか。幼いうちからサバイバルだなー。

『オトモダチ』福月悠人
 クラス委員の「小花」は入学式の日に入院したクラスメイトの「梨穂」と頻繁にメール交換をしていた。「メールってたのしいなぁ♪」なんて思いながら、学校生活の細々とした出来事を書いて梨穂に送信する。そんな風に過ごしていた矢先、クラスで不幸が起こった。テストで一番をとったクラスメイトが轢き逃げにあったのだ。つい先日も自分がテストで二番だったことを梨穂にメールしたばかりなのに。そこに梨穂からメールが届いた。「よかったネ(・▽ < )⌒☆」
 この後も似たパターンのの出来事が続く。ありがちな呪い系の怪談かと思いきや、超常現象の発生しないサイコものだった。真犯人は静かに狂っていた身近な人物で、前話に続いて意外性があってよかった。収録作品の中ではピカイチのエピソード。

『うしろの心霊ちゃん』ナフタレン水嶋

『教えてあげる』秋本葉子
「杏菜」は著しく優柔不断な、決められない女だった。メニューからなにから、全然決められない。そんな彼女にもってこいなアプリがあった。それが無料相談アプリ「KKR」である。「悩みを相談してね! なんでもおこたえします」とある通り、とにかくなんでも答えてくれる。KKRの答えの通りにやっていれば間違いない。すっかり頼りきりになった杏菜だったが、いつもスマホに向かってブツブツ呟いている様子を、キモいというクラスメイトがではじめた。いじめの対象になったのだ。それを相談すると、KKRはこう答えた。「邪魔なものを除去しましょう☆」
 ピンときた人がいるかもしれないが、コックリさんものである。「KKR」→「コックリ」ということらしい。アプリのマスコットもキツネだったりする。スマホ、アプリと装いは異なっているが、ストーリーは古典的。古い話がこんな風に生き残っていくのかと思うと、なんだか頼もしい。劇中、コックリさんについての軽い解説もある。
「コックリサン…? なんなの? それ…」「むかしはやった占いみたいなものかな? 」

『うしろの心霊ちゃん』ナフタレン水嶋

『消えないアドレス』大塚さとみ
「莉音」は高校一年生。買ったばかりのケータイを修理に出したところ、代用に借りたケータイに知らない人のアドレスが入っていた。思い切ってメールしてみると、相手は一つ上のイケメン。それを知った友達の「萌愛」が、自分が付き合いたいと言い出した。
 これも大筋はどこかで聞いた感じの話。実はこのイケメン、一年前に「ひどい死に方をしている」らしい。第1話の『理科室のふたり』にも似ている。『ちゃお』じゃなくて『なかよし』だけど、キャラのネーミングはさくら学院ぽい。

『うしろの心霊ちゃん』ナフタレン水嶋

『地獄少女 仮想世界の友だち』永遠幸 地獄少女プロジェクト
「美月」はMMORPG「ジゴ・クエスト・オンライン」に夢中だった。毎日いつものパーティでクエストに精を出している。メンバーは皆、美月より年上らしく、なにかにつけて彼女を可愛がってくれる。それが心地よかった。ところがある時、パーテイの一人が美月の写メを見たいと言い出した。「制服姿がいいな(^_^)☆ 夏だし水着でもいいよ」結局彼女は追放されてしまうのだが、後日こんなメールが届いた。「おまえのせいだ おまえなんて この世界から消えろ やめろ やめろ やめろ」……そしてある夜、何者かが美月の部屋に侵入した。
 ほぼSAOな感じのエピソードに、地獄少女がフュージョン。閻魔あいが「魔王が あらわれた!」と登場したり、相当カオスなエピソードである。大部分を占めるゲームの世界の描写はざっくりだけど、リアル世界の侵入者の描写は短いながら上々。



『本当にヤバイ ホラーストーリー ケータイ地獄』
 講談社 2012 講談社コミックスなかよし 1368
 著者:永遠幸 地獄少女プロジェクト/ナフタレン水嶋/秋本葉子/福月悠人/大塚さとみ/立樹まや
 ISBN-13:978-4-0636-4368-8
 ISBN-10:4-0636-4368-3


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H・P・ラヴクラフト『ダニッチの怪』

 

 H・P・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)著, 大瀧啓裕訳『ダニッチの怪』(“The Dunwich Horror”『ラヴクラフト全集〈5〉』東京創元社 1987 創元推理文庫 所収)

 マサチューセッツ州、ダニッチという村落で未曾有の怪事件が発生した。発端は1913年、「ラヴィニア・ウェイトリー」という身体に障害のあるアルビノの女が、一人息子「ウィルバー・ウェイトリー」を出産した時点にさかのぼる。父親は不明。ウェイトリー家は荒廃したダニッチの村落のなかにあって、代々恐れられ忌避されてきた。ウィルバーはそんな孤立した環境で異常なスピードで成長し、先祖伝来の怪しげな学問に打ち込みはじめた。
 一方ウィルバーの祖父「老ウェイトリー」は古びた家屋の改築に着手する。また定期的に大量の牛を買い入れるようになった。これはダニッチの怪事件が発生した1926年まで止むことはなかった。やがて祖父が死亡し、母親が姿を消した後も、ウィルバーは一人学究に精を出した。ところがあるとき魔道書『ネクロノミコン』を盗み出そうと大学に侵入し、番犬に襲われてあえなく死亡してしまう。露わになった彼の身体は、人間のものとは著しく異なっていた。そしてダニッチで怖ろしい事件が発生する。

 クトゥルー神話体系の中核をなす超重要な作品。「ネクロノミコン」「ミスカトニック大学」「ヨグ=ソトホース」など、クトゥルー関連のキーワードが頻出する。著者の作品としては早い時期に日本で紹介されており、江戸川乱歩はラヴクラフトと本作の熱心な紹介者だった。『幻影城』所収の「怪談入門」では他の作家よりも多めにページを割いて、著者についてこんな風に記している。「彼の作には次元を異にする別世界への憂鬱な狂熱がこもっていて、読者の胸奥を突くものがある。その風味はアメリカ的ではなく、イギリスのマッケン、ブラックウッドと共通するものがあり、或る意味では彼等よりも更らに内向的であり、狂熱的である。」(※1) さすがの慧眼。あと水木しげるのファンにはあのヨーグルト!!の原作(原案)として知られている。

 この『ダニッチの怪』は多段式ロケットみたいな作品で、フォークロアっぽいプロローグから、SFモンスターホラーなクライマックスへと驚異的に跳躍する。
『怪奇小説傑作集〈1〉』の平井呈一による解説には「マッケンに心酔したラヴクラフトは、このマッケンの世界からコスミック・ホラーという異次元の恐怖を創造して、『ダンウィッチの怪』その他の作品で、まったく新しい恐怖の世界をひらいた」(※2) とある。確かにラヴィニアとウィルバーは性的な描写こそ除かれているが、マッケンの『パンの大神』(“The Great God Pan”)の「ヘレン」から分化したみたいなキャラで、ウィルバーが死亡する6章までは『パンの大神』の影響が色濃く感じられる。ただし、ここで終わっても充分ですーって感じのウィルバーのショッキングな死に様さえ、実は壮絶なクライマックスへ向けての前振りだったのだ。著者は著者ならではの神経質さ、執拗さで、全編に細かい伏線を配し、謎を積み上げ、小説とはいわず巨大生物もの(怪獣もの)が陥りがちな中だるみを回避し、見事に緊張感を維持している。クトゥルー云々はさておき、でっかい怪物の出でくる小説として極上の作品だと思う。90年も前に書かれた作品ながら、今読んでも面白い。

 自分は創元推理文庫の『ラヴクラフト全集〈5〉』よりも前に、『怪奇小説傑作集〈3〉』でこの作品に接していたので、少々古めかしい雰囲気の傑作集の訳の方が馴染み深く、今でも読み返すときは傑作集を読んでいる。ただ初めて全集を読んだとき、めっちゃ読みやすい! って思った。さらに全集には本作についてかなり詳細な解説があって、舞台となった場所の写真なんかも載っている。どちらも入手しやすい本なので、興味がある人は下記の収録作品なども参考にお好みでどうぞ。併録されている作品はどちらも名作揃いです。あとそれから本作を原作にした映画『ダンウィッチの怪』(1970)のDVDが出ます。製作総指揮はロジャー・コーマン。


 ※1. 江戸川乱歩『江戸川乱歩推理文庫〈51〉幻影城』講談社 1987 p.299
 ※2. ブラックウッド他著, 平井呈一訳『怪奇小説傑作集〈1〉』東京創元社 1969 創元推理文庫 p.390



『ラヴクラフト全集〈5〉』
 東京創元社 1987 創元推理文庫
 著者:H・P・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)
 訳者・作品解題:大瀧啓裕

 収録作品
 『神殿』(“The Temple”)
 『ナイアルラトホテップ』(“Nyarlathotep”)
 『魔犬』(“The Hound”)
 『魔宴』(“The Festival”)
 『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』(“Herbert West-Reanimator”)
 『レッド・フックの恐怖』(“The Horror at Red Hook”)
 『魔女の家の夢』(“The Dream in the Witch House”)
 『ダニッチの怪』(“The Dunwich Horror”)
 『資料『ネクロノミコン』の歴史』(“History of Necronomicon”)

 ISBN-13:978-4-4885-2305-3
 ISBN-10:4-4885-2305-6


『怪奇小説傑作集〈3〉』
 東京創元社 1969 創元推理文庫
 著者:ラヴクラフト・他
 訳者:大西尹明/橋本福夫
 解説:平井呈一

 収録作品
 『ラパチーニの娘』(“Rappaccini’s Daughter”)ナサニエル・ホーソーン(Nathaniel Hawthorne)
 『信号手』(“No.1 Branch Line:The Signalman”)チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)
 『あとになって』(“Afterward”)イーディス・ワートン(Edith Wharton)
 『あれは何だったか?』(“What was it?”)フィッツジェイムズ・オブライエン(Fitz-James O’Brien)
 『イムレイの帰還』(“The Return of Imray”)R・キップリング(Rudyard Kipling)
 『アダムとイヴ』(“Adam and Eve and Pinch Me”)A・E・コッパート(A.E.Coppard)
 『夢のなかの女』(“The Dream Woman”)ウィルキー・コリンズ(Wilkie Collins)
 『ダンウィッチの怪』(“The Dunwich Horror”)H・P・ラヴクラフト(H.P.Lovecraft)
 『怪物』(“The Damned Thing”)A・ビアース(Ambrose Bierce)
 『シートンのおばさん』(“Seaton’s Aunt”)ウォルター・デ・ラ・メア(Walter de la Mare)

 ISBN-13:978-4-4885-0103-7
 ISBN-10:4-4885-0103-6


 

 ラヴクラフト・他著 大西尹明, 橋本福夫訳『怪奇小説傑作集〈3〉新版』東京創元社 2006 創元推理文庫


 

ダンウィッチの怪』[DVD]


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睦月影郎『生娘だらけ』

 

 睦月影郎『生娘だらけ』祥伝社 2016 祥伝社文庫

 十八になる家老の息子「修吾」は、三沢藩士の子女が通う女ばかりの藩校「桜桃舎」に下男として潜入していた。桜桃舎では十七になる「珠代姫」が身分を隠して学んでおり、その身辺を警護する密命を帯びていたのだ。そしてもう一つ、彼には特殊な務めがあった。
 桜桃舎の生娘たちが出す下肥は、近在の豪農に高値で買い取られており、できた野菜などは献上品として用いられていた。確かにどっかのおっさん産というよりも、武家の生娘たちのものだと思えば気分がいい。修吾はそんな下肥の管理と百姓たちへの采配を一任されていたのである。
 修吾は何かと忙しなく立ち働きながら、女の園の暮らしをエンジョイしていたが、あるとき美人剣術指南役の「弥生」に素破(忍者)と疑われ、捕えられてしまう。そしてどエロい責めを受けるのだが……。

 タイトルに偽りなしの「生娘だらけ」な一冊である。著者の作品の多くには超能力者や妖怪やらがザクザク登場するが、本作は前に感想を書いた『姫の秘めごと』(←前の記事へのリンクです)同様、超常的な要素が全くないタイプの作品(くノ一は出てくる)。とはいえ当然、普通の時代ものではない。あくまでも背景扱いなのが少々残念ではあるが、下肥云々のくだりなど、なさそうでありそうな絶妙なさじ加減が心地いい。実際に江戸時代には下肥を出す階層によってその買取価格が違ってた、なんて話もある。大奥の下肥は価値が高かったとか。
 主な女性キャラは、剣術指南役で年上の「弥生」、年下の村娘「小梅」、娘たちの教育係で後家の「真弓」、そして「珠代姫」という面々。なかでも弥生と小梅はダブルヒロインって感じの活躍をみせる。それぞれのキャラ付けは上記の『姫の秘めごと』で書いたので重複を避けるが、毎度似通った「いつものキャラ」であっても、主人公との関係性が異なっているので意外に飽きがこない。微調整に工夫が凝らされている印象。

 で、本作のお姫さま「珠代姫」について。今回は上記の登場人物のほかに、姫の母親や下働きの少女たちの濃厚な濡れ場があるため、肝心の姫の出番が少なからず食われてしまっているように思う。お姫さま目当ての自分としては寂しい限りだが、嬉しいことに主人公との濡れ場のほかにも上質なエロシーンが用意されていた。男女の身体を学ぶ講義のなかで、「教材」となった珠代姫が皆の前で体をさらすのだ。同門の少女たちの、同性ならではの容赦ないリアクションが素晴らしい。ナイス羞恥プレイなので、この手のが好きな人には強くオススメできる。フェティッシュなエロてんこ盛りで、気楽に読める作品。



『生娘だらけ』
 祥伝社 2016 祥伝社文庫
 著者:睦月影郎

 ISBN-13:978-4-3963-4204-3
 ISBN-10:4-3963-4204-7


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並木伸一郎『モンスターUMAショック』

 並木伸一郎『モンスターUMAショック』竹書房 1994 竹書房文庫

 寝る前に読む本と同じくらいチョイスが重要になってくるのが、移動中に読む本だ。気楽に読めて、適度な刺激があって、中断してしまうことになるから、ストーリーのある本はできれば避けたい。どこから読んでもOKならなおいい。そんな時に重宝するのがオカルト系の本、短い体験談がたくさん載ってる実話怪談集や、UMA本だ。
 そこで今回はこの『モンスターUMAショック』を久々に再読してみた。表紙カバーに瑞洋丸の甲板に吊り下げられたニューネッシーをいっぱいに用い、帯にはパターソン・フィルム、さらには「証拠写真100点公開」なんて書いてある。発売時期を考えるとさすがにマンネリだろって気もするが、最強の布陣であることに間違いはない。表紙で釣って、勢いでさらっと読ませる、そんな感じの方針で編集されている。

 内容はカラー口絵8ページ、モノクロの本文は雑な感じで5章に分かれている。基本、写真と解説という構成だが、いくつかの項目には実話調の目撃談・遭遇談が採用されている。ラインナップはUMAと宇宙人、モンスターっぽい謎の生物全般。獣人タイプUMAの「ビッグフット」「ヨーウィ」、水棲UMAの「キャディ」「ネッシー」、謎の生物「ドーバー・デーモン」などなど、おなじみのメンツだ。一体について一項目が設けられており、目撃者によるイラストも多数収録。また各章の間には「UMA写真館」として、有名どころのUMA写真をキャプション付きで紹介している。

 この本が出た1994年には記憶に残る出来事があった。当時は直近のツチノコブームも今は昔って感じで、UMA業界は正直停滞していたように思う。そこに追い討ちをかけるように、例の「外科医の写真」のフェイク騒動が持ち上がったのである。もともと疑問視されてきた写真だけに、UMAファンにとってはやっぱりかーって感じだったんだけど、ワイドショーなどで取り上げられて、やっぱネッシーはいなかった的な論調で語られた。
 この本はそんな状況下で刊行されている。上記のような軽めのコンセプトの本ながら、「外科医の写真」の一件を踏まえた上で「モンスターは実在する!」と記した巻頭巻末の著者の言葉は、悲壮感が感じられるほど熱い。さらにこうも書いている。「キャディの目撃や、新たな怪獣探査により、太古のロマンが一気に再燃しそうな気配である。」(p.229) この言葉通り、翌年には待望の新キャラ「スカイフィッシュ」「チュパカブラ」が賑々しくデビューし、トルコのヴァン湖では水棲生物の素晴らしい映像が撮影された。これらはTVでも大きく取り上げられ、UMA業界は再び活況を取り戻していく。以下目次に沿って内容を紹介。

「PART1 スクープ! 私はモンスターを激写した!」
 最初の章はUMA宇宙人ごちゃ混ぜの章。「宇宙から来たモンスター」「沼地のビッグフット」「超能力猛獣モギィー」など、怪生物を激写した際のレポートである。この時点で最も新しく公開された最古の「ネッシー」画像(ヒュー・グレイの写真よりも古い)も、新聞紙面の転載という形で掲載されている。

「UMA写真館 漂流漂着したUMAたち」
 有名なグロブスター系の怪物の写真を6枚収録。それぞれにキャプションがついている。表紙の「ニューネッシー」はここで紹介。UMAファンなら見たことのある写真ばかりだと思う。

「PART2 戦慄と恐怖、怪奇生物クリーチャー」
 モンスターの収録数が最も多いのがこの章。「カエル男」「トカゲ男」「鳥人オウルマン」「ヒツジ男」などなど、ショッカーの怪人みたいなUMAがメインに取り上げられている。「ドーバー・デーモン」もこの章。記事は現場の写真、スケッチ、遭遇談で構成されていて、読み応えがあった。特に自動車と並走する「トカゲ男」の話は本書の中でもトップクラスの面白さ。それから世界的な知名度は不明ながら、日本では根強いファンのいるニュージーランド沖の怪物「カバゴン」もここで紹介されている。

「UMA写真館 カメラマンがキャッチした獣人たち」
 獣人タイプのUMAの写真を4枚収録。キャプション付き。ベネズエラの獣人の「モノス」もここで紹介。

「PART3 現代に甦った伝説のクリーチャー」
 獣人、哺乳類っぽいUMAをまとめた章。イギリスの「黒犬」、アメリカ・イリノイ州の獣人UMA、アメリカの「人狼シャギー」、オカルティックな有名UMA「ジャージー・デビル」の4例を収録。目撃談・遭遇談中心の構成。イリノイ州の獣人UMA「泥まみれの化け物」の目撃スケッチがひどい。

「UMA写真館 海と湖に出現したUMAたち」
 水棲UMAの写真を6枚収録。「リーン・モンスター」「ネッシー」「モーゴウル」「マニポゴ」「モラーグ」の有名な写真が集められている。キャプション付き。

「PART4 現代にタイムスリップした白亜紀の世界」
「白亜紀の~」というだけに、恐竜を連想させる陸海空のUMAを収録した章。本書刊行時点で直近の目撃例があったカナダの「キャディ」が大きく取り上げられている。目撃談、スケッチ、死骸の写真、考察からなる記事は、本書の目玉だけに読み応えがあった。西アフリカの「海竜ガンボ」の記事では、関連としてUMA目撃例の中でも歴史的、かつ劇的なUボートに吹っ飛ばされた未確認生物の話が紹介されている。他にアイルランドの「コエロフィシス」、アメリカの「翼竜」などを収録。

「UMA写真館 奇獣・珍獣たち」
 著者の本ではおなじみの「翼ネコ」をはじめ、怪しい動物5例を収録。「ジャッカ・ロープ」「ユニコーン」など。

「PART5 絶滅したはずの猿人・原人・動物が生きている!」
 メインは獣人タイプのUMA。なかでも「ビッグフット」にページが割かれていて、パターソン・フィルムの解析にも言及されている。他に「ヨーウィ」「アルマス」などメジャーどころを収録。

 写真が多い構成だけに、本文がモノクロなのは惜しい。めっちゃ見辛い写真もあった。収録された全ての目撃例に、目撃地点がかなり詳細に記されているのが良かった。短めの面白い目撃談・遭遇談がたくさん載ってるので、電車内で読むのにぴったり。



『モンスターUMAショック』
 竹書房 1994 竹書房文庫
 著者:並木伸一郎

 ISBN-13:978-4-8847-5913-1
 ISBN-10:4-8847-5913-3


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江戸川乱歩『人でなしの恋』/『木馬は廻る』

 江戸川乱歩『人でなしの恋』
 江戸川乱歩『木馬は廻る』(『江戸川乱歩推理文庫〈5〉陰獣』講談社 1987 所収)

 エロっぽい人形というと、球体関節人形。そりゃ魔改造フィギュアやラブドールもエロいけど、こればかりは刷り込みみたいなものだからしょうがない。エロい。あのぐりっとした球体パーツがエロエロしいオーラのもとになってるような気もするが、あまり掘り下げないでおく。で、球体関節人形といえばハンス・ベルメール、伝統的な構造の人形を倒錯的に作り変えた「始祖」だ。しかし人形愛の人かというと、そうでもないイメージ。日本では四谷シモン。ベルメールにインスパイアされた先駆的な人形作家で、こちらは自身が認める人形愛まっしぐらな人である。
 ベルメールの作品はヒンデンブルクが爆発した1937年に日本で紹介されている。四谷シモンがベルメールの作品を初めて見たのは1965年のことだったらしい。以来、日本製の球体関節人形は、ベルメールを始祖として頂きながらも、四谷シモンの強い影響のもとに連綿と作り続けられることになる。
 ネット上ではレディ・メイドのスーパードルフィーなども含め、多くの人形作家によって生み出された人形の画像を見ることができる。どの人形も美しく、神秘的な雰囲気を漂わせていて、オブジェのように展示されているものもあれば、個性的な衣装で飾られ、相当慈しまれてるなーってことが伝わってくる人形も多い。こうした人形たちが程度の差はあれ疑似恋愛の対象になり得ることは想像に難くない。中には『人でなしの恋』の浮世人形のようなヘビーな愛され方をしている人形がいるかもしれない。
 面白いのは、さかのぼればベルメール由来の外貌を備えたそれらの球体関節人形が、機能や取り扱いの点で伝統的な人形に先祖返りしていると思われることだ。わりと言及されることが少ないが、ベルメールの人形2体のうち先に作られた個体、初号機には、素晴らしいギミックが搭載されていた。人形のヘソから体内を覗くと、電球で照らされたパノラマが見えるのだ。そこには6部屋に区切られた円環状のケースが収められていて、一つ一つの小部屋がそれぞれパノラマを内蔵しており、乳首を押すと場面が切り替わった。この初号機については製作の過程が克明にドキュメントとして残されているので、作りかけの装置を確認することができる。
 ベルメールの『人形のテーマのための回想』には下に貼った装置の図(※1)が載っていて、内蔵されたパノラマに関して次のような解説がされている。「パノラマは、小さなオブジェ、物質、悪趣味な色彩写真から生まれてきたものである。6つのそれぞれ色違いの小さな懐中電燈用電球が、順ぐりに必要な照明を供給する。」(※2) この電飾を施したのはベルメールの弟らしい。また『ベルメール写真集』では編著者がパノラマの様子をもう少し具体的に記している。謂く「このパノラマは、六つの色つき豆電球が照らし出す、北極の海に沈む船や少女たちの痰で飾られていると称されるハンカチや砂糖菓子やエピナル版画〈中略〉を収めた六つの箱から成っている」(※3)

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「《Musée》personnel」(1948)と題された写真がある。小物の並んだ飾り棚をモチーフとして選んだ、ベルメールのファンにはとても興味深い写真である。そこに並んでるのはおそらく彼の宝物なのだろう。ブリキの長靴を履いた猫、ミシンのミニチュア、ミニョネット3体、アフリカっぽいお面のミニチュア、カラフルな何か(ビーズ?)が入ったガラス瓶2本、ジャイロスコープ、根付けっぽい人形、赤いダイス、蒸気自動車のミニカー2台などなど、めっちゃ趣味がいい。いかにも宝物になりそうなものばっかりのラインナップだ。母親から幼年時代の思い出の品々が詰まった大きな箱が送られてきた、なんてことがあったらしいから、飾り棚に並んだいくつかは、その箱に入っていたものかもしれない。そして人形の体内には、当然、上記のような細々とした玩具の類いが収められていたのだろう。バカバカしくて、無邪気で、個人的で、実にノスタルジックなギミックである。
 ちょっと前にTVで霊能者っぽい人が、人の形をしてるのに中が虚ろ、だから人形には何かが憑きやすい的なことを言っていた。そういったスピリチュアルな妖しさが人形の大きな魅力であることは間違いない。しかしベルメールの人形にはきっと何も憑かないだろうなって気がする。ベルメールは一貫して人形をおもちゃとしていじくりまわし、それを撮影した。腹部に球体パーツを持つ二体目の人形(おっぱいが可動する2号機)にいたっては、バラバラのまま、ゲッターロボみたいに無茶な合体分離をさせたあられもない姿が多くの写真に収められている。

『人でなしの恋』は美しい一体の人形がでろでろに愛され、粉々に破壊される歪んだ愛欲の物語で、人形愛を題材にしたものとしては古典中の古典って感じの作品だ。著者自身、結構気に入っていたらしく、後年映画にもなってるし漫画化もされている。『木馬は廻る』は回転木馬の真ん中に突っ立って、ラッパを吹くことを生業にする中年男の切ない恋の話である。アウトラインは以前感想を書いた『踊る一寸法師』(←前の記事へのリンクです)と似るが、この作品にはエログロい要素は皆無。ろくに犯罪さえ起こらない。怪談でもない。それでも自分はこの作品が特に好きだ。ケレン味がない分、著者の筆力をより確かに感じることができる。見たこともない場末の「木馬館」の光景が、まるでヘソの穴から覗いたパノラマみたいに目に浮かぶ。ストレスでパンパンになった男が、なすすべもなく、ただ狂ったようにラッパを吹き鳴らす。それはなんとも痛々しく、切なく、ノスタルジックな光景である。


 ※1. ハンス・ベルメール(Hans Bellmer)著 種村季弘,瀧口修造訳『イマージュの解剖学』(“Anatomie de l'image”)河出書房新社 1975 p.21
 ※2. 同上 p.20
 ※3. アラン・サヤグ(Alain Sayag)編著 佐藤悦子訳『ハンス・ベルメール写真集』(“Hans Bellmer Photographe”) リブロポート 1984 p.15

 参考 Harry Jancovici, Bellmer : dessins et sculptures, Paris, La Différence, coll. « L'autre musée », 1983. 「《Musée》personnel,1948」が載ってます。



『江戸川乱歩推理文庫〈5〉陰獣』
 講談社 1987
 著者:江戸川乱歩
 解題:中島河太郎
 巻末エッセイ・乱歩と私:和久峻三(作家)「少年時代の私の乱歩」

 収録作品
 『踊る一寸法師
 『毒草
 『覆面の舞踏者』
 『灰神楽』
 『火星の運河』
 『モノグラム』
 『お勢登場』
 『人でなしの恋
 『鏡地獄』
 『木馬は廻る
 『陰獣』

 ISBN-13:978-4-0619-5205-8
 ISBN-10:4-0619-5205-6


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