伊藤潤二『なめくじ少女』

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 伊藤潤二『なめくじ少女』(伊藤潤二『伊藤潤二恐怖マンガCOLLECTION〈7〉なめくじ少女』朝日ソノラマ 1998 所収)

 伊藤潤二の著作のなかでも多くを占めるワンアイデアものの代表的な作品のひとつが、この『なめくじ少女』である。もともと有名な作品だったけど、数年前に妙な騒動に巻き込まれていたので、そっちで知ってる人がいるかもしれない。

 ある日女の子の舌が、でっかいなめくじになってしまう。口から伸びた20センチくらいはありそうななめくじが、女の子の顔を這い回り、粘液まみれにしている。耐えきれなくなって切断しても次々に生えてくる。なめくじには塩ってことで、口中に塩を含ませようとするが、しょっぱ過ぎて耐えられない。食事もままならなくなった彼女はどんどん痩せ細り、業を煮やした両親が、浴槽いっぱいの塩のなかに女の子を沈めようとするのだが……。

 という感じで、シンプルなストーリーながら、そもそも着想から驚異的に奇怪なので、とんでもないものを読んだ気分になる。不快感MAX。
 作品の冒頭には両親がなめくじを執拗に殺しているという因果話っぽい描写があるのだけれど、怪異との関連には一切触れられず、また女の子自身、なめくじが大嫌いだったらしいのだが、それもモノローグで語られるだけで、それらしい描写はない。そんなわけで因果話としての印象はごく薄く、生理的な不快感と不条理さだけが極端にクローズアップされている。ねばねば系では『うずまき』のなかに出てきた「ヒトマイマイ」と双璧をなす気色悪さだ。

 この作品は以前感想文を書いた『漂着物』や『阿彌殻断層の怪』のように、ホップステップのあと、どこかの空間に華麗にジャンプするような作品ではない(表現が下手すぎて申し訳ない)。しかし最後の跳躍がない代わりに、そのステップの威力は強烈。……相変わらず彼女は裏庭にいる。そして哀しそうな目で、じっとこっちを見つめているのだ。


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Posted byserpent sea

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