『ほんとにあった怖い話〈27〉読者の恐怖体験談集』

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 『ほんとにあった怖い話〈27〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館

 読者層の変化に合わせてか前巻同様、投稿者(体験者)の年齢は高め、学校の怪談やコックリさんなどのエピソードはすっかり無くなって、住居や職場での体験談が中心になっている。全体の印象も粒揃いとは言い難く、短めのエピソードは埋め草にもなってない感じだった。そんな第27巻だが、本書には超ハイレベルなエピソード「第一話 秘湯の怪」「第二話 残照の風景」の2編が収録されている。

「第一話 秘湯の怪」は男二人が旅先の温泉旅館で、本来入れるはずがなかった閉鎖された温泉に入ってしまってドッキリって話。幽霊やその類の怖い何かが出てくるわけではないのだが、不気味な雰囲気は上々。ジャンルは判然としないけど、異空間にうっかり足を踏み入れてしまったかのような趣がある。お湯を並々と湛えた湯船が怖い。
「第二話 残照の風景」では一人の投稿者による幼い頃の二つの体験が語られる。まずマクラはTVからCMの牛が貞子ばりににゅっと出てくる話。わけが分からない不気味な話で、本シリースにもこれまで類例がない。ただ幼児の体験談として、妙なリアリティが感じられる。TVから頭を突き出した牛と幼女を1ページに収めたコマが素晴らしかった。続いて本エピソードのメインとなったのは、夕暮れになると知らないおばさんが家にやってきて、幼い投稿者を無理やりどこかへ連れ出そうとする話。腕をぐいぐい引っ張られ、泣き叫んでるにも関わらず、すぐそばにいる母親には全く気付いてもらえない。そんなことが毎日のように続いたという。おばさんの正体は全く分からない。劇中でも幽霊然とした表現はされておらず、精神を病んだ実在の人のようにも見えるが、もし連れて行かれれば神隠し待ったなしな予感は濃厚にする。作画レベルの高さもさることながら、夕暮れのノスタルジックな雰囲気と、ヤバイ怖さを両立させた傑作エピソードで、一人の投稿者の複数の体験を描いた話はこれまでにも多々あったが、構成の上手さも群を抜いている。
 この2編の作画担当は『鵼の絵師』の猪川朱美。他にもわりと読めるエピソードはあったが、正直この2編のために一冊買ってもそう損した気分にはならないはず。



『秘湯の怪 他』画・猪川朱美 ’94『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第一話 秘湯の怪」投稿者・埼玉県 羽佐間稔さん(仮名) ※旅先の怪談
 「第二話 残照の風景」投稿者・静岡県 M・Oさん ※霊感少女

『月夜の霊園 他』画・荻野優子 ’93『ほんとにあった怖い話』11月号、’94年1月号、’93『ハロウィン』5月号 掲載
 「第三話 月夜の霊園」投稿者・東京都 斎藤由紀子さん ※心霊スポット
 「第四話 白銀列車」投稿者・埼玉県 匿名希望さん ※鉄道の怪談
 「第五話 最後のメッセージ」投稿者・宮城県 匿名希望さん ※虫の知らせ

『拒絶の報復 他』画・茶々丸 ’93『ほんとにあった怖い話』9月号、’93『ハロウィン』10月号 掲載
 「第六話 拒絶の報復」投稿者・大阪府 匿名希望さん ※生き霊
 「第七話 私を見る私」投稿者・愛媛県 藤岡あゆみさん ※幽体離脱・金縛り

『白日の影 他』画・塚田さとみ ’93『ほんとにあった怖い話』9月号、’94年1月号 掲載
 「第八話 月夜の霊園」投稿者・東京都 秋野麻紀さん(仮名) ※生き霊
 「第九話 あやかしの街路」投稿者・兵庫県 荒川夕規子さん(仮名) ※路上の怪

『第十話 廻る足音』投稿者・兵庫県 佐藤真紀子さん 画・天ヶ江ルチカ ’93『ほんとにあった怖い話』11月号 掲載 ※山の怪談

『青山・百物語り 他』画・佐和田知生 ’93『ほんとにあった怖い話』9月号、11月号 掲載
 「第十一話 青山・百物語り」投稿者・埼玉県 匿名希望さん ※スタジオの怪談
 「第十二話 残像」投稿者・石川県 道上こずえさん ※病院の怪談



『ほんとにあった怖い話〈27〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館
 著者:佐和田知生 他

 ISBN-13:978-4-2579-8548-8
 ISBN-10:4-2579-8548-8
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Posted byserpent sea

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