さがみゆき『血まみれ人形』

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 さがみゆき『血まみれ人形』ひばり書房 1988 ヒット・コミックス 238

 先日の『呪われた人形』(←前の記事へのリンクです)に続いて、ひばり書房の人形怪談。著者はさがみゆき。中学を出てお手伝いとして雇われたけなげな少女が、雇用主の母娘の諍いに巻き込まれていく。「第一部 生きているお人形」「第二部 狂った世界」の二部構成。簡単なあらすじ↓

「第一部」「ゆみ子」はある金持ちの家の娘「リエ」の話し相手として雇われた。同い年のリエは「ミチ」という人形をいつも抱いている。そして義理の母親を激しく憎んでいる。曰く義母は悪魔のような女で、私を殺そうとしている。そんなリエの言葉をゆみ子は信じることができない。義母がリエの異常な言動に腐心していることを知っていたからだ。ところがリエの飲み薬に毒物が混入していたことが判明する。薬を用意したのは義母である。疑心暗鬼に陥るゆみ子。その矢先、夜中に徘徊する人形のミチを義母が叩き壊した。「こんな子供だましのいたずらを!!」
「第二部 」ミチは死んだ。義母がミチを殺した。やつれてしまったリエは、やがてミチが蘇って復讐してくれる、そう強く信じているらしかった。そして雷鳴の轟く夜、ゆみ子は確かにミチの姿を見た。しかし義母は幻覚だと取り合ってくれない。なぜだか急に元気になって、地下室の改修をはじめるリエ。とまどうゆみ子にリエは「あの話本気にしてたの。ばかねぇ、ウフフ」と言い放った。単に気に入らなかったから、この地下室の壁の中にあの女を塗り込めてやったのだと。「ミチの苦しさをあいつに味あわせてやるのよ!」

 著者の作品に特徴的な、独特の間合いから繰り出される精神攻撃はごく控えめながら、髪の毛を掴んで引き回す、つま先を口にねじ込む(スリッパ着用)、ブラウスを引き裂いておっぱいを突き刺す、といった簡明直裁な暴力の表現は健在。それが美少女から義母への暴行なので、なおさらポイント高い。あと流血シーンも多い。本作の見所はなんといっても美少女リエの狂いっぷりで、ストーリーが進むに連れてどんどん悪化し、取り返しのつかない状態になっていく。とても「繊細」って感じではないのだけれど、その過程と支離滅裂さが実に上手く表現されている。特にラストの地下室のシーンのリエの目付きはやばい。
『血まみれ人形』のタイトルこそ強引に回収されるものの、実はこの作品、ストーリー上における人形の存在意義がまるで希薄で、人形なしでも全く問題なくサスペンスとして成立する。そもそも劇中の人形のシーンのどこまでが幻覚なのか、怪奇現象なのか、それともイメージシーンなのかがはっきりしない。当然タネあかしもない。おかげで義理の母娘の確執を描いた古典的でカッチリしたストーリーと、実話怪談的なわけの分からない行き当たりばったり感がせめぎ合う不思議な作品となった。雰囲気は『怪奇大作戦』の「青い血の女」。



『血まみれ人形』
 ひばり書房 1988 ヒット・コミックス 238
 著者:さがみゆき

 ISBN-13:978-4-8280-1238-4
 ISBN-10:4-8280-1238-9
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Posted byserpent sea

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