なかのゆみ『呪われた人形』

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 なかのゆみ『呪われた人形』ひばり書房 1980 ヒット・コミックス 怪談シリーズ 115

 幼い「リサ」は寂しかった。家庭は裕福だったが両親は多忙で、同じ年頃の遊び相手もいない。だから庭の片隅で見つけた人形に「モモ」と名付け、いい友達になれるよう願った。モモは産まれてすぐに死んだ妹の名だ。ところがママがそんなモモを見て、驚くほど取り乱した。捨ててくるように絶叫した。
 夜、荒川沿いを走るママの車のヘッドライトに照らされて、捨てられたはずのモモの姿が浮かび上がった。車から飛び出して怯えるママ。そのの目の前でモモの顔が溶解していく。「ママ、私はあなたの子供だったモモなのよ」「こんな顔の私がうまれたのでママは私を殺したワ」「ママはまだうまれたばかりの私にぬれた綿をかぶせて、うつぶせにして殺したのヨ」「私は人間になりたい。この世で生きてみたい。私を殺したおまえみたいな女は殺してやる!」(p.35-37)
 時を置かずメッタ刺しにされたママの遺体が発見された。容疑者となった父親は発狂して病院に収容されたらしい。ひとりぼっちになったリサのもとに、モモが帰ってくる……。

 ここまでが全編の1/3くらい。人形モモの造形を除けばわりと古典的な人形怪談なのだが、ここから予定調和がぶっ壊れて、想定外のストーリーが展開する。プラン通りに途中まで書き終えたものの盛大にページが余ってる、んじゃ残りは行き当たりばったりで行くか! ってノリで書かれたような気がしないでもないが、楽しかったから全然OK。全く先が読めなくなる分、後半は特に面白かった。
 特徴的なのはモモの特殊なスキルだ。チャッキーみたいに凶器を振り回すのは最初だけで、中盤からじわじわと本領を発揮する。そもそもモモの望みは人として生きることなのだが、それには器となる人体がいる。モモのスナッチのスキルは人体に入り込んで乗っ取る(憑依する)という単純なものではなくて、人に触れられた部分のパーツをリサの肉体のパーツと置き換えるという特殊なものだ。「リサの肉体のパーツ」というのがえげつないところで、通りすがりの赤の他人がモモに触っても、リサの体が置き換えられてしまうのだ。終盤のリサは顔面を「神経もうぶ毛もない」爛れたモモの顔と置き換えられたため、佐清みたいなマスクを被って登場する。これがまたシュール。
 この身体のパーツの転移という優れたアイデアに対して、表現は全体にざっくりとした感じ。モモの顔だけとっても、爛れてるのか汚れているだけなのか、絵面からは判断し難い。ただ勢いはあるので一気に読んでしまう。散々えぐい目にあったリサによる締めのセリフは「変な人形を見たら気をつけましょうネ」という淡白なものだった。

 ヒバリ・ヒット・コミックスの他の作品と同様に、この作品も何度かタイトルやカバーイラストを変えて刊行されている。イラストはこの『呪われた人形』↓が一番かっこいいと思う。踊ってるポーズなのが呪いの人形モモ。

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『呪われた人形』
 ひばり書房 1980 ヒット・コミックス 怪談シリーズ 115
 著者:なかのゆみ

 ISBN-13:978-4-8280-1117-2
 ISBN-10:4-8280-1117-X
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Posted byserpent sea

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