つのだじろう『うしろの百太郎〈5〉』その2

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 つのだじろう『うしろの百太郎〈5〉』講談社 1983 KCスペシャル 35

 ──『うしろの百太郎〈5〉』その1から続く。

「第十七章 転生輪廻の謎」
 後研究所に不思議な電話がかかってきた。電話の主は霊能者「船越」を名乗る女子中学生だった。一つの可能性を信じ、少女の暮らす千葉の海辺の町へと向かう一太郎父子。少女の名は「船越和子」。一太郎父の推測通り、今は亡き霊能者「船越和人」の魂を宿していた。先だって雷に撃たれて気絶した和子は、目覚めると人格が変わってしまっていたのだという。そんな和子の協力を得て、早速調査に乗り出した一太郎父子のもとに、別の案件が持ち込まれた。生後半年の赤ん坊が大人の口ぶりで話すらしい。赤ん坊は「一文字助綱」と自ら名乗り、刀剣に対する深い知識と執着を見せた。後研究所では退行催眠による船越和子の記憶の調査に並行して、一文字助綱に関する調査が進められた。

 霊能者の死を衝撃的に描いた前話に続いて、またちょっと違う意味で衝撃的な一話。なんとあの船越先生が女子中学生として復活する。船越先生の魂が女子中学生の身体に入り込み、その主導権を奪ってしまったのだ。見た目は子供、頭脳は大人の状態である。なので復活といってもサブタイにある転生輪廻というより、ほぼ憑依という方がしっくりとくる。もう一人の被験者である赤ん坊の方は、正真正銘前世の記憶を持って生まれ落ちたらしい。日本刀を片手に薀蓄を語るオムツ姿の赤ん坊が超シュール。
 実はこのエピソードはかなり解説寄りで、船越先生の復活という一大イベントこそあるものの、ストーリーはさて置きって感じでオチらしいオチもない。それでもズッシリとした読み応えがあるのは著者の力量によるものだろう。輪廻転生、前世の記憶、刀剣の薀蓄、オーラ、退行催眠などの雑多な情報が、二人の転生・再生キャラをサンプルに実に手際よくまとめられている。で、最後に女子中学生船越先生は一太郎のクラスに転入する。

「第十八章 幽霊寺の怪」
 後研究所にまたまた不思議な電話がかかってきた。「無明寺」という廃寺で暮らす家族のもとに、幽霊が電話をかけてくるというのだ。早速調査に向かった一太郎父子。到着早々、件の電話がかかってくる。その内容は誰かを墓場へと誘うものだった。その夜、一太郎は廃寺の一室で父と枕を並べて眠りについた。真夜中に電話のベルが鳴る。受話器を取った一太郎はそのまま墓場へと導かれ、気付けば白骨を掘り起こしていた。その後自宅に戻った一太郎だったが、怪異は彼を逃しはしなかった。自宅の電話が鳴る。幽霊からの電話だ。再び無明寺の墓地へと誘われる一太郎。それを止めようとしたゼロは瀕死の重傷を負い、一太郎は墓地の一角に口を開けた防空壕へと吸い込まれてしまう。壕の中には日本刀を手にした兵隊の怨霊の群れが待ち構えていた。

 雨の墓地、廃寺、防空壕という絶好のロケーションで展開される極上の幽霊談。湿気過多な抜群の雰囲気で、画面はいつにも増して真っ黒。ページが重い。さらに今回は解説分はほぼゼロ。ごってりしたストーリーがトーンダウンすることなく最終ページまで続く。目新しさこそ感じられないが、オーソドックスなモチーフが効果的に関連づけられ、配置されており、著者には余裕すら感じられる。横綱相撲って感じ。研究所と無明寺の距離感が曖昧だったりするが、文句なしの好エピソードである。廃寺の家族の父親が刺殺されるオチも、後味の悪い凄惨なもので実にそれらしい。特にラスト一コマの絵面のかっこいいこと。このプリントのTシャツが欲しいくらい。次巻では今回生じた問題がさらに拡大し、一太郎父子を追い詰めていく。



『うしろの百太郎〈5〉』
 講談社 1983 KCスペシャル 35
 著者:つのだじろう

 ISBN-13:978-4-0610-1035-2
 ISBN-10:4-0610-1035-2
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Posted byserpent sea

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