久田樹生『「超」怖い話 怪神』

0 Comments
serpent sea
 

 久田樹生『「超」怖い話 怪神』竹書房 2014 竹書房文庫 HO-218

 罰当たりキャラが頻繁に登場する実話怪談には、因果応報の法則に則った話が多い。神社仏閣や墓地を心霊スポットとして突撃、酷い目にあった、なんて話はその最たるものである。この本はそんな因果応報をテーマにまとめられている。タイトルには「神」とあるけど、神仏にまつわる話の他にも、幽霊、狐狸妖怪の話、なんだかよく分からないものを見た、聞いた、感じた話が数多く収録されている。中には「期待」のように、ほとんど何も起きてない話もある。またいつもと同じくらいの厚さの本に100話も収録されているので、1~2ページの短い話が多い。モチーフごとにゆるく分類された短い話がずらっと並んでるのはなかなか壮観。もちろん数ページに及ぶ「指輪」「托卵」といった長めの、濃いエピソードも数編収録されている。印象的な話を簡単に紹介します↓

「雨の夜道」帰り道、呼ぶ声が聞こえる。進行方向をよく見ると、十字路の真ん中に大きな漬物石のようなものが落ちている。声はそこから聞こえてくるらしい。
 1ページの短い話である。どこが?? って聞かれると困ってしまうが、神仏にまつわるエピソードの中でも、なぜかこの話に特にカミサマっぽさを感じた。地方に行くと道の傍の小さな祠に、石が祀られているのを見かけることがある。丸いのもあればゴツゴツの岩っぽいのもあるが、どう見てもただの石で、地元住民の中にもその由来を知ってる人がいるかどうか。この話に出てくる漬物石は、そんな路傍に祀られた石を連想させる。

「綿毛」空中を浮遊するタンポポの綿毛のような光を見る少女たちの話。これケサランパサランかもしれない。初潮を迎えた途端、見えなくなるというのも興味深い。大人には見えないのか。同様のきっかけからそれまで見えてたものが見えなくなる話に「盆踊り」がある。
 自分が「ケサランパサラン」という言葉を初めて聞いたのは小学校低学年の頃で、同じクラスの女子が大胆にも「飼ってる」などと言い放っていた。おじいさんが畑で捕まえたらしい。クラスメイトから本当にそんなのがいるなら、持ってきて見せてくれとせがまれていたが、人に見せたら絶対ダメとのことだった。

「雷雨」激しい雷雨の日の、教室での出来事である。学校のすぐ近くの城跡に、凄まじい音を立てて雷が落ちた。目をこらすと雷が落ちたちょうどその辺りに、二人の人間が立っているのが見える。赤いカッパを着た女性と女の子である。誰かが叫んだ。「なんで、あんなにはっきり見えるの?」
 だだ怪しいものを見ただけのエピソードだが、荒天とはいえ白昼、大勢で同じものを見ているのが面白い。騒がしい教室の状況がよく伝わってくる。舞台設定はいい雰囲気だし、城跡の「二人の人間」のイメージも鮮やかだ。最後に載ってる城跡の後日談もよかった。

「クラス」授業参観の後、あまりにも小柄な一人の生徒について長男に聞いてみた。どうもまともな家の子ではないらしい。しかも彼は嘘をつくのだという。自分の真横にいつもお化けがいて、いじめてくると。三ヶ月ほど過ぎた頃、たまたま街中でその男の子を目撃した。隣にトレーナー姿の太った醜い女が立っている。そして咥えタバコのまま男の子を何度も小突いている。母親なのだろう。ふと女のすぐ隣に寄り添うように立つ何かが目に入った。
 これも白昼の街中で怪しいものを目撃する話。醜悪な物体Xが登場する。親の因果が子に報いってやつか、ずっと昔の因果なのかは分からない。バチを当てるなら子供や子孫じゃなくて本人に当てろよって思う。実際にそれらしい親子を見たことがあるのも手伝って、救い難い雰囲気がひしひしと感じられる嫌な話だった。

「遊び」体験者の女性が中学生の頃の出来事である。友人の家の庭に石碑に見立てたグレープフルーツ大の石を立て、割り箸製の鳥居を作った。邪神様を拝む遊びをしていたのだ。それから時を置かず、気味の悪い出来事が頻発するようになった。石のせいかもしれない。ただ遊びでやってただけなのに……。
 前記の「雨の夜道」と同様に石をモチーフにしたエピソード。ものすごく気になるところで終わっている。謎が謎のまますぎる。後日談的なものでいいからもう少し読みたいところだが、ここでブチっと終わるのが実話怪談。
 以前「石」について書いたときの繰り返しになってしまうが、自分は子供の頃、河原で感じのいい石を見つけては、持って帰ってコレクションしてたことがある。かなりの数になったところで祖母に見つかって、もとの場所へ帰すことになったのだが、どうして拾ってはダメなのかは教えてくれなかった。祖母もよく知らなかったのではないかと思う。そういえば化石は大丈夫なのかな。オレゴン州産出とか書いてあるんだけど。

 というわけで短い話中心で全100話、長めのを読むのとはまた違った趣があって良かった。取材の資料を見てる感じだった。グロ無し。極端にどぎつい話もないので、そういうの苦手な人には向いてそう。神仏の話は多いけど、抹香臭さ、説教臭さも控えめ。姉妹編として『「超」怖い話 怪仏』がある。



『「超」怖い話 怪神』
 竹書房 2014 竹書房文庫 HO-218
 著者:久田樹生

 ISBN-13:978-4-8019-0031-8
 ISBN-10:4-8019-0031-3

関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply