山口敏太郎『恐怖・呪い姫 ~実話狂気怪談』

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 山口敏太郎『恐怖・呪い姫 ~実話狂気怪談』TOブックス(ティー・オーエンタテインメント) 2013 TO文庫

 UFO・口裂け女・妖怪ミイラを散りばめた怪しげな表紙と、タイトルに釣られて購入。一読、まさに「釣られた! 」って内容だった。この本に収録されているのは一般的な実話怪談ではない。話中に何らかの超常現象が起きるエピソードは全22話中ほんの5~6話。それじゃあとの話はというと、実話怪談ならぬ狂人漫談といった趣き。これまでに著者が絡まれた迷惑な人々、奇人変人の類いがコレクションのように集められている。
 いくつか例をあげると、まず表題作に登場する「月姫」というハンドルネームのおかま、絵に描いたような自己愛性パーソナリティ障害な人物で、蛇のように執拗に著者に絡みつき迷惑以上の迷惑をかける。収録された中で最もアホなエピソード「地底人はいた」に出てくる自称地底人とその通訳もひどかった。地底語が喋れるけどその意味のわからない人と、地底語が翻訳できるけど地底語が喋れない人の謎すぎるコンビである。とりあえず害のないのが救いか。
 自分が遭遇経験のあるタイプは「邪悪な社員・Sの大暴走のS」のメインキャラのS君だ。人当たりはいいし、元気もある。少々お調子者だが、普通に社会生活を営んでいるように見える。だからこそタチが悪い。平然と嘘をつき、ごまかし、陰口を叩く。そしてそれが全部当事者にバレている。罪悪感がないから脇が甘い。なぜかやたらに自己評価が高いので、実力に見合わない仕事を引き受けて、それがうまくいかないと他人のせいにする。社会常識に欠けてるというか、極端にいびつなのだ。自分が遭遇したTYPE-S君はさんざん同僚に迷惑をかけた末に、社用車を自分の車だと偽って乗り回してたのがバレて本部に転属、やがて退職というコースを辿った。

 この本には「村の鎮守の狐さま」のような、興味深い怪異譚も収録されているのだが、やっぱ奇人変人のインパクトが強い。著者の語り口はTVでのトークをそのまま文字に変換した風で、気難しそうにしてたかと思うと、ボケる、滑る、突っ込む。突っ込みには特撮・アニメネタが多用される。基本軽い本である。あははーって感じで読んでいるうちに、気付けばうっすら寒くなってくる。心もとない、微妙な不安を感じる。
 最近とある業界の方々と話す機会があったのだが、続けて面会した三人が三人とも、心のお医者さんにかかっており、なんらかの薬品を処方されていた。知らない業界のことなので裏話なんかも聴きたかったのに、一切歓談するような空気にはならなかった。しかも同席した知人によると、そのうちの一人は「なんとなく似てるから」って理由で、ずっと自分を同級生じゃないかと疑っていて、後から根掘り葉掘り尋ねてきたらしい。なんか嫌な気分になった。
 こんなことを書いていると、そんなちょっと変じゃないか〜と感じた人々のことがどんどん思い出されてくる。街で見かけた程度の話なら枚挙にいとまがない(霊能・オカルト関係の人が全然いないのがほんと残念)。この本に出てくる奇人変人ほどのピーキーなキャラではないにせよ、誰しもこういった傾向の人物と相対した経験があるのではないかと思う。どうやらこの本はそんなときに抱いた微妙な不安を思い出させるらしい。



『恐怖・呪い姫 ~実話狂気怪談』
 TOブックス(ティー・オーエンタテインメント) 2013 TO文庫
 著者:山口敏太郎

 ISBN-13:978-4-8647-2188-2
 ISBN-10:4-8647-2188-2


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Posted byserpent sea

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