『ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』

0 Comments
serpent sea
ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 怪奇っぽいテーマを掲げた巻が続いたが、やっぱ前巻が苦しかったのかこの第23巻はテーマなし。ところが当時、雑誌『ほんとにあった怖い話』では「幽霊寮」なる特集を組んでいたらしく、そのエピソードがこの第23巻に集中している。おかげで図らずも「幽霊寮」のテーマがぴったりな巻になった。このどーにもビシッと決まらない感じが好ましい。

 さて、この巻のざっくりした印象はというと、とにかく絵が綺麗。少年マンガっぽいタッチはほとんどなくなって、すべてよく整った少女マンガ風のタッチで統一されている。単純に作画が安定しているかどうかの一点でみれば、これまでの巻の中では間違いなくトップクラス、実に読みやすかった。ただあらためて感じたのだが、淡白な少女マンガのタッチは頭からいきなりトップギヤに入れるような、強引な怪奇ムード作りには全然向いてない。この手の短編だとじわじわムードが出てくる前にページが尽きてしまう。そのため結構苦労してるなーって感じのエピソードもあった。

 反面、日常にすっと不吉な影が射すような描写、得体のしれないものに怯える登場人物の心理描写などは、淡白な少女マンガタッチの得意とするところである。「第一話 奇々怪々女子寮」などはその好例で、派手さはないけれど、ゾッとするような繊細な描写が光る。少女マンガに由来する「白い心霊マンガ」の王道を行くエピソードだ。それからもう一編、「第七話 屍の館」は珍しい自衛隊の寮を舞台としたエピソードだった。舞台となる「問題の部屋」に度胸試しをするように、隊員が入れ替わり立ち替わり宿泊する。すると皆同様の恐怖体験をする。いよいよ語り手(投稿者の父親)の番になった。真夜中に彼が見たものは……、という話。類話の多いシンプルなストーリーにシンプルなめくりの効果がよく効いている。子供心にはこのエピソードが最もコワイんじゃないかと思う。
 他にも寮やアパートにまつわる話が複数収録されている。「第八話 童子への贈り物」は座敷わらしで有名な岩手のR旅館を舞台にした話。火事で焼けてしまう前の出来事だ。幽霊屋敷好きには楽しめる一冊だった。



『奇々怪々女子寮 他』画・佐和田知生 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、’92『ハロウィン』10月号 掲載
 「第一話 奇々怪々女子寮」投稿者・東京都 茂手木裕美さん ※幽霊屋敷
 「第二話 橋に出る幽霊」投稿者・熊本県 羽田由美子さん ※橋の怪

『第三話 真夜中の白い指』投稿者・東京都 Qちゃん 画・赤津みづは ’92『ハロウィン』10月号 掲載 ※心霊スポット・虫の知らせ

『さわがしい隣人 他』画・天ヶ江ルチカ ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、’93『ハロウィン』1月号 掲載
 「第四話 さわがしい隣人」投稿者・東京都 P.N KAORUさん ※幽霊屋敷・金縛り
 「第五話 すれちがう霊たち」投稿者・新潟県 水沢ひろこさん(仮名) ※肝試し・家族の体験

『異界の狭間から… 他』画・七色虹子 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第六話 異界の狭間から…」投稿者・静岡県 匿名希望さん ※路上の怪・家族の体験
 「第七話 屍の館」投稿者・宮城県 カラスさん ※幽霊屋敷・家族の体験

『第八話 童子への贈り物』投稿者・大阪府 榮本明美さん 画・黒田祐乎 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※妖怪

『第九話 幽霊アパート』投稿者・長崎県 M・Mさん 画・藤方萌葱 ’93『ハロウィン』3月号 掲載 ※幽霊屋敷



『ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:赤津みづは 他

 ISBN-13:978-4-2579-8506-8
 ISBN-10:4-2579-8506-2


関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply