古賀新一『恐怖のオオカミ少女』

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 古賀新一『恐怖のオオカミ少女』立風書房 1975 レモン・コミックス(恐怖シリーズ)

 北欧。「クリスティ」は両親と幼い妹の「リーナ」とともに、厳しい自然の真っ只中に暮らしていた。夏は短く冬が長い。雪に覆われた山野には、飢えたオオカミが群生している。不幸は妹のリーナがオオカミの群れに両足を噛まれ、不自由な体になったことからはじまる。美しく成長したクリスティが周囲からチヤホヤされ、恋人といい感じになっているかたわらで、家に閉じこもったきりのリーナは日々姉に対するドス黒い怨念をつのらせていた。家中を這いまわり、暇さえあれば姉に恨み言を吐く。家族の忍耐は限界に達しつつあった。
 そんな矢先の出来事である。両親が不在のある夜、落雷のため姉妹の住居が全焼してしまう。焼け跡にリーナの姿はない。彼女は落雷を受け、オオカミと化していたのだ。

 ここまでが前半。ストーリーは姉妹の確執と恨みをつのらせて人間離れしていく妹を描いた前半と、ハッと我にかえってタイトルを思い出したかのようなオーソドックスな人狼ものの後半の二部構成、というか全く別の話をくっつけたみたいになっている。自分は狼男大好きなので、当然面白いのは後半! と言いたいところだけど、この作品に限っては断然前半の方が読み応えがあった。姉妹の確執はホラー&サスペンス系の作品とは相性がよく、コミックに絞っても楳図かずおの諸作をはじめ名作が数多い。この『恐怖のオオカミ少女』もまたそんな姉妹の確執を軸に、濃厚な恐怖シーン(ばかり)を描いた著者渾身の作品だ。

 食事をしている恋人の顔の皮膚がゴムのように見えて不気味……これは夭折した漫画家山田花子の作品に出てきた忘れられない一節だ。実感をともなった素晴らしい表現である。実感がともなっているかどうかはさておき、著者の嗜好が間違いなくがっつり反映されて、これまた脳裏に焼き付いて離れないのが、本作の姉クリスティから見た妹リーナの凄まじい姿だ。
 妹は足に傷を負っただけで、身体の他の部分が悪いわけでもないのに、姉には妹がまるででっかいミミズかヒトの臓物のように見える。暗闇でもぞもぞと蠢き、這いまわり、姉の恋人の写真を食ったり、姉の愛猫を嚙み殺したりする。著者はそんな妹の姿を悪意たっぷりに、黒々とした筆致で描き出している。代表作『妖虫』(←前の記事へのリンクです)でもみられる「黒いはらわた状の怪物」の大盤振る舞いである。オオカミや人狼よりも、こっちの方がはるかに怖い。
 不思議なのは舞台設定で、北欧(おそらくスウェーデン)らしい夏至祭のメイポールや、フィヨルドの漁港っぽいカットこそ挿入されてるものの、キャラクターはいつも通りの黒髪の少女。途中から舞台が北欧ってことを忘れてしまう。雪景色と暗いシーンとのコントラストを狙ったのかもしれないが、印象に残るのは「ひたすら黒い画面」という実に著者らしい作品。



『恐怖のオオカミ少女』
 立風書房 1975 レモン・コミックス(恐怖シリーズ)
 著者:古賀新一

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