岩満重孝『百魚歳時記』

 岩満重孝『百魚歳時記』 中央公論社 1980 中公文庫

 前に第3巻(←前の記事へのリンクです)の感想を書いた『百魚歳時記』の第1巻。一項目につきおよそ800字、見開き2ページという構成で、魚介類にまつわるイラスト付きのエッセイが130編収録されている。さすがにネタ切れ気味だったのかマイナーなものが中心だった第3巻と比べて、この第1巻には「コイ」「キンメダイ」「フナ」「ニシン」「カツオ」「ウナギ」等々メジャーどころが並んでいる。七割くらいは知ってる魚介類で、その中の多くを食べたことがあった。本書の各項目にはそれぞれその魚介類にまつわるちょっとしたエピソードや、面白い特徴、異名、詩歌の他、食べられるものについては美味しい食べ方が記されている。その「食べられるもの」がとにかく多い。ほとんど食べられるんじゃないかって感じ。しかもゲテモノ的に無理やり食べる「食べられる」じゃなくて、それなりの伝統のある調理法が複数紹介されている。あらためて魚介類に対する日本人の食欲の旺盛さと探究心に驚かされた。

「魚介類」ってことで本書には魚の他にもカニやエビ、貝、イカなどの頭足類も取り上げられている。なかでも貝は魚に次いで多い。自分はこの時期、月に二、三度は「カキ」を食べる。だいたい牡蠣フライと牡蠣汁を交互に。牡蠣汁は味噌汁(赤味噌の)に短冊に切った大根と、スーパーで買ってきた牡蠣を順番に入れて煮るだけという簡単なものだが、牡蠣の出汁が出てめっちゃうまい。一人暮らしの人にもおすすめ。この本では生牡蠣にレモン汁が最高としているが、自分は軽くアミで焙った方が好み。経験上、生牡蠣の方がたくさん食べられるけど。
 貝の話というと、形状が女性器を連想させるってことで、その手の話に偏ることが多く、本書にも控えめながらそれらしい記述がチラホラ見える。例えば「ハマグリ」の項目には「蛤は初手赤貝は夜中なり」という有名な古川柳が引用されている。残念ながら蜃気楼については言及されていない。

 それから「テナガエビ」。うちの実家の近くの川ではテナガエビが捕れた。梅雨があけると懐中電灯とエビ捕り網(一片が10cmくらいの四角い網)を持って、よくエビ捕りに連れて行ってもらった。テトラポットや岩の上に乗って、その隙間から水中の手長エビを懐中電灯で照らしつつ、長い竹の柄のついた網で慎重にすくう。20匹くらい捕れたら、帰って早速油で揚げてもらって、塩を少しだけつけて食べる。香ばしくてこれがまたうまい。本書には「焼いて醤油をつけ、もう一度焙って食べる。これが一番」(p.71)とあり、これもうまそう。久々にテナガエビ食べたくなった。移動中に読むのにもってこいの本。



『百魚歳時記』
 中央公論社 1980 中公文庫
 著者:岩満重孝

 ISBN-13:978-4-1220-0704-8
 ISBN-10:4-1220-0704-6


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