雨がっぱ少女群『麻衣の虫ぐらし〈1〉』

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 雨がっぱ少女群『麻衣の虫ぐらし〈1〉』竹書房 2017 バンブーコミックス

「桜乃麻衣」20歳、入社一年目でリストラされ現在無職。貯金もなく、明日をも知れぬ身の上である。頼みの綱は地中海料理「ボルボレータ」での週末のアルバイトと、友人の「清水菜々子(菜々ちゃん)」の畑の手伝いだ。菜々ちゃんの畑はもともと彼女のお爺ちゃんのものだったが、お爺ちゃんが体調を壊して以来、彼女が一人で管理している。麻衣にとって菜々ちゃんは生活に必要不可欠な存在であり、けなげに働く愛らしい妹である。菜々ちゃんにとっての麻衣もまた、自らの寂しい日々を支えてくれる頼もしい姉のような存在だった。そんな二人に、何くれとなくちょっかいをかけてくる友人がいる。老舗旅館の娘「須藤来夏」である。環境保護に熱心な彼女は、ふとしたきっかけから二人と知り合った。身の回りに生息する様々な昆虫に翻弄されながら、彼女たちは関係を深めていく。

 表紙のイラストと、どうやら美少女&昆虫ものらしいってことで購入。帯に「断筆宣言から9年」とか書いてある。実はこの特徴的なペンネーム、どっかで見たなーって思ってたんだけど、帯の内側の広告見て思い出した。というか本持ってた。それは『怖い心理テスト あなたの中のサイコパス』ってタイトルの本で、コミックじゃなくて挿絵っぽい絵を描いてる。協力はTVや実話怪談本でおなじみの西浦和也。今回感想を書くにあたって検索してみたら、著者はアダルトコミックの業界では相当評価の高い人だそうで、確かに本作にも陰に陽にエロっぽい描写が散見される。この絵でエロマンガだと、ちょっと重いんじゃないかなって気もするが(とにかく絵が上手いので)、著作リストにはめっちゃ面白そうなタイトルが並んでいる。ぜひ買ってみようと思う。

 本作で描かれる主人公たちの日常は、タイトルやカバーの「彼女たちの軽やかな日々」というリードから予想される「美少女たちのほのぼの暮らし」からかけ離れたシビアな日常である。幸福三割、不幸七割って感じで実にリアル。さらに後の方にいくほど不幸度が増していく。数話読んだところで、なんか思ってたのと違う! って思った。同時にめっちゃ絵が上手い! とも。
 作品の舞台は地方都市の郊外にある農園で、トマトやブロッコリー、柿なんかも生産している。これまた美少女キャラが百合百合しく戯れるにはあまり似つかわしくないリアルな農園である。ただ「その辺の畑」「その辺の堤防」「その辺の林」をごく自然に描き出す表現力はすごい。季節ごとの空気の移り変わりまでひしひしと感じられる。
 各話で登場する昆虫も「ナミテントウ」「チャノミガ」「クロナガアリ」等々いたって地味である。益虫もいるが農業メインなだけに、害虫多めの印象。著者は季節の移ろいと、それとともにある人と昆虫との関わりを丁寧に描いていく。人も昆虫も同じ循環する自然の中にあり、その生命は同様にはかない。そんな感じのことが言外に示されていて、おかげで画面には常に寂寞とした雰囲気が漂っている(もちろん女の子たちは常に可愛い)。続刊が楽しみな一冊。



『麻衣の虫ぐらし〈1〉』
 竹書房 2017 バンブーコミックス
 著者:雨がっぱ少女群

 ISBN-13:978-4-8019-6090-9
 ISBN-10:4-8019-6090-1


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