『魔の巣 MANOS』

 魔の巣 MANOS

 どこかに向かってドライブしてる家族(夫婦と娘と犬)が道に迷った。場所はアメリカ南部のどこか。幼い娘はグズるし、母親はうるさいし、「俺はこれまで道に迷ったことがない」なんて言い張ってた父親の面目丸つぶれである。ぼちぼち日も暮れかけ、やばい状況になってきたかなーって頃、砂漠の道無き道を行き着いた先で建物らしきものに行き当たった。玄関らしきところにはみすぼらしい風体の男が立っている。この建物の使用人のようだ。とりあえず一夜の宿を求めてはみたが、男はシンプルな受け答えさえ覚束ない様子。精神と身体と言語に問題があるらしい。そこで家族はコレ幸いと勝手に宿泊を決めてしまうのだが、実はその建物は「マノス」なる邪神を信仰するカルト教団の本拠地だったのである。家族ピーンチ!

 久々に録りっぱなしになってたドラマや、積んであった映画をまとめて見ることができた。この藤子不二雄Aチックなタイトルの作品は、ずいぶん前にまとめて買った中の一本だったと思う。ジャケットがかっこいい。で、なんで今まで見ないでいたかというと、パッケージの裏に書いてあるちょっとした解説や煽りが、ことごとく視聴意欲を萎えさせたからである。言わく「カルト過ぎて、ご免なさい。こんな凄い映画はもう遭えない!」「ハロルド・P・ウォーレン監督のエド・ウッドを超えるカルトな演出を観れる唯一の作品」「トラッシュ・ムービーの傑作」。今回見てみる気になったのはひとえに上映時間のおかげだ。

 画質は著しく悪い。拾ったVHSに入ってたアメリカンポルノのような画質だ。ノイズがオーブのように入るシーンもある。変色もある。しかしその画質の悪さが、かえってプラスにはたらいている。そんな作品である。カメラアングルは不安定で、不必要にアップになったり引いてみたりする。カットの繋ぎもあまり見たことのない感じで不自然だ。無茶なことに舞台となった「とある怪しい建物」の外観を全然映さずに最後まで押し切っている。エロいシーンはせいぜい美人妻の着替えくらいで、グロいシーンは皆無である。思うにこの映画には、積極的に「映画を撮りたい」というスタッフがいなかったのではないだろうか。ノリノリで自ら館の主人を演じてる監督でさえ、映画の成功は露ほども信じてなかったに違いない。真面目に見れば見るほど、なぜこれを作ったのか?? という疑問が浮かんでくる(1966年といえばアメリカでは『ミクロの決死圏』が公開され、日本ではガメラとバルゴンが大坂を舞台に大暴れしていた)。作品の存在自体が怪しく、いかがわしく感じられる。この映画の美点を挙げるとするなら、作品全体が濃厚に醸し出すその怪しさ、いかがわしさだろう。拾ったVHSに入ってたアメリカンポルノのような。

 自分はトラッシュ・ムービーが好きってわけではないけれど、その手の映画が好きな人にはたまらない作品だと思う。きっともう見てるだろうけど。



『魔の巣 MANOS』(“Manos:the Hands of Fate”)
 1966 アメリカ
 監督:ハロルド・P・ウォーレン
 出演:トム・ネーマン/ジョン・レイノルズ/ダイアン・マーハ/ハロルド・P・ウォーレン/ステファニー・ネイルソン
 映像色 : カラー
 上映時間:68分


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