『死霊館』

 死霊館

 アメリカ、ロードアイランド州、ハリスヴィル。「ペロン夫妻」と五人の娘たちが、広大な敷地に建つ古びたその屋敷に越してきたのは1971年のことだった。家族の新しい生活には引越しの当日から不吉な影がさした。まず閉ざされた地下室が見つかり、翌日には決して室内に入ろうとしなかった愛犬が死亡する。屋敷中の時計は午前3時7分で停止していた。さらに娘の一人はベッドで足を引っ張られ、妻の身体には覚えのない痣が浮き出した。腐臭が鼻をつき、亡霊の姿がかいま見えることもあった。
 屋敷に巣食う邪悪なモノの存在を確信した妻は、著名な心霊現象の専門家「ウォーレン夫妻」に調査を依頼する。すると時を置かずして屋敷の凄惨な来歴が明らかになった。屋敷は悪名高いセイラムの魔女裁判に関わりのある物件で、後年、殺人事件が発生していた。かつてここで暮らしていた母親が、自らの生後間もない赤ん坊を殺害したのである。ウォーレン夫妻の調査をきっかけに、怪奇現象は苛烈さを増していく。

『アナベル 死霊館の人形』(2014)との2枚組「ツインパック」を購入。約29分の映像特典(「体験者が辿る過去の恐怖」「専門家が語る悪霊の世界」「背筋も凍るホラー映画の舞台裏」)がついている。監督は『ソウ』(2004)シリーズのジェームズ・ワン。てことでどんなきっつい幽霊屋敷かとワクワクしながら見てみたら、びっくりするほど真っ当な幽霊屋敷ものだった。実話が元になっていることから関係者への配慮があったのか、こういうのも撮れるのよ! って感じなのかはわからないけど、『ソウ』のイメージからはかけ離れた作品になっている。もちろんへぼい映画ってわけではなくて、その真逆。このジャンルの作品としては、近年稀に見るほど丁寧に作られた上質な作品である。グロいシーンも不潔なシーンもないし、テーマもザ・家族愛って感じの美しさなので、家族で見ても割と大丈夫な気がする(PG12指定)。少々残念だったのは神父が活躍しないこともあって、オカルティックなアイコンが乏しいところ。それから可愛い五人姉妹のそれぞれの個性的な設定があまり生かされてないように思う。

 上記の通り実話ベースのこの作品、誠実そのものの登場人物も全て実在の人物をベースにしている。当然可愛い五人姉妹も実在した。ゴーストハンターな役どころの「エド」と「ロレイン」の「ウォーレン夫妻」は、世界的に著名な心霊・悪魔研究の専門家で、1950年代から1万件以上の心霊事件に関わっている。最もよく知られたケースは映画『悪魔の棲む家』(1979)のモデルになった「アミティビル事件」だろう。並木伸一郎の本でも夫妻は「全米一のデーモン・ハンター」なんて紹介されていて、古くからなじみ深い。呪いのアイテムてんこ盛りの資料館(死霊館)も「オカルト・ミュージアム」として実在し、全米はおろか世界中から集められた呪物が収蔵されている。劇中の資料館では立派な鎧兜がやけに目立っていたが、実際のミュージアムにも日本産のアイテムがちらほら混在しており、どんな謂れがあるのかめっちゃ興味深い。

 また劇中では「悪魔祓い」を行う際の教会とのやりとりが、いかにも面倒臭そうな感じで描写されている。実は1973年に映画の『エクソシスト』が公開されるまで、カトリック教会としては悪魔祓いは「無しの方向で」ってことになっていたのだ。『エクソシスト』をきっかけに「悪魔憑き」の症例が爆発的に増え、それに追随する形で「古代の野蛮な儀式」として封印されつつあった悪魔祓いが見直されたのである。この作品の案件が発生したのは1971年、まだ教会が悪魔祓いに否定的だった頃の出来事である。
『エクソシスト』以降、悪魔祓いのための典礼は改訂され、先代のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は自ら三度の悪魔祓いを行なったという。



『死霊館』(“The Conjuring”)
 2013 アメリカ
 監督:ジェームズ・ワン
 出演:ヴェラ・ファーミガ/パトリック・ウィルソン/リリ・テイラー/ロン・リビングストン/シャンリー・カズウェル
 上映時間:112分


 死霊館&アナベル 死霊館の人形 ツインパック


関連記事
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)