平山夢明『「超」怖い話 ベストセレクション〈3〉懺骸』

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 平山夢明『「超」怖い話 ベストセレクション〈3〉懺骸』竹書房 2013 竹書房文庫

「屍臭」「腐肉」に続く著者3冊目のベストセレクション。本書には2003年の『「超」怖い話 Α(アー)』から2008年の『「超」怖い話 K(カッパ)』までの10冊から選ばれた70話に、書き下ろしの5話を合わせた全75話が収録されている。このレーベルの本はすべて所持しているので、どんな話が選ばれてるのかという楽しみもあるけど、主な目当てはもちろん新規書き下ろし分である。

「地獄になります」幽霊などの具体的な現象の描写はなされず、ただ積みあがっていく死体の数が提示される。アパートに蓄積される怨念を一方的に利用し、なぜか何の障りも受けないように見えた話者の叔母さんが、人並みの幸せを掴もうとした途端、凶事に見舞われはじめる。アパートそのものに彼女を離すまいとする強い意志があるように感じられる。一つの死をきっかけに吹っ切れた女性の執念が怖ろしい。

「山便」山小屋の怪談。筋立てはオーソドックスだけれど、それだけにテクニックの確かさを感じることのできるエピソード。扉に背を向ける配置の和式便所なのだろう。振り返る瞬間にピンポイントで狙いを定めて、雰囲気を盛り上げている。幽霊の姿は部分的にしか描写されないが、ごそごそと動きまわっている感じが不気味。

「塩漬霊」新規書き下ろし分のなかではもっとも長く、著者の怪談の特徴がよく反映されたエピソードである。心身ともに壊れていく人間の描写は相変わらず凄まじく、その裏側にある痛切な哀しみまでもが、きっちりと表現されている。姉妹の確執に由来する怪談には悲惨な末路をたどるものが多く、この作品も例外ではない。ただその過程に、もしかすると救えるんじゃないかという、一抹の希望を感じさせるのが著者のいやらしく、巧みなところだと思う。そのため絶望はより深くなる。

 巻頭に並んだ書き下ろし分は、1ページほどの短いものから、少し長めのものまで、「地獄になります」「ドンとしたもの」「山便」「塩漬霊」「似顔絵」の5話。

 このブログには珍しく新刊ほやほやの本で、収録された全75話は粒ぞろい。お正月休みのおともにはもってこいだと思う。最初から読んでも、適当に開いたところからでも楽しめる。余談だけど、本書の帯は擦れに弱く痛みやすい金色なので、帯まで綺麗じゃないとなんか嫌って人には、早めの購入をお勧めします。


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Posted byserpent sea

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