『江戸川乱歩の美女シリーズ 湖底の美女』

 江戸川乱歩の美女シリーズ 湖底の美女

 信州白樺湖畔の「白樺湖レイクサイドホテル山幸閣」を舞台に連続殺人事件が発生する。一人目の被害者は著名な画家「河野陽水」の娘「陽子」。ホテルでは呼び物の一つとして「マリンガールの水中ダンスショー」を開催していた。地下の水槽からロビーの喫茶室のモニタに、魚の餌付けをする「マリンガール」の様子が生中継されているのだ。陽子の遺体はこの水槽で発見された。絞殺され、重しをつけられて水槽に沈められていた。おりしも河野家では陽水とその妻「忍」との離婚問題が持ち上がっていおり、その最中の犯行であった。
 一方、「明智探偵」は助手の「文代」「小林君」と連れ立って白樺湖を訪れていた。休暇中との理由で事件がらみの調査を断る明智だったが、たまたま居合わせた「浪越警部」らの強い要請に重い腰を上げることになった。

 前回感想を書いた『湖畔亭事件』(←前の記事へのリンクです)のドラマ版だが、登場人物の名前以外に原作との共通点を探すのが困難なほど徹底的に翻案された作品である。原作には出てこない明智探偵一行を登場させて、さりげなーくシリーズの一本に仕立てている。監督は名匠井上梅次、脚本はなんだかんだで明智役の天知茂と縁の深い宮川一郎。最初の事件が発生するまでに20分ほどかかっているが、その間に数多いメインの登場人物の人となりや、浪越警部言うところの「怪しく絡みあった人間模様」が実に手際よく描き出されている。
 原作に縛られない気楽さからか、本作の明智探偵はやけにフランクで親しみやすく、同行した文代君も新婚旅行の新妻のようにはしゃいでいる(原作のシリーズでは本当に結婚してます)。また平田昭彦がシリーズで唯一出演したのがこの作品で、悪徳弁護士「上村」役をいやらしく好演している。

 この作品には原作の超重要アイテム、覗き趣味の主人公が愛用する特殊な装置「覗き目がね」が出てこない。代わって用意されたのが、水中ダンスショーを中継しているカメラとモニタである。原作では「覗き目がね」から見た光景を「幻灯のような」と表現しているから、幻灯→TV中継という発想だろう。ただしロビーで大勢で鑑賞しているせいで、覗き感はゼロ。変態っぽさ、おどろおどろしさは残念ながら乏しい。そのあたりを補強する意味からか、手作り感満点のドクロこけしや、ドクロマスクがかなり強引に挿入されてはいるが、効果のほどは疑問。自分はこのドラマの方を先に見てたんだけど、やはりこのこけしとマスクには唐突な印象を受けた。チープで好ましいけど。
 ところで劇中、レイクサイドなのにマリンガールの水中ショーをソファに座って眺めている様子、どっかで見たなーって気がしてたんだけど、思い出した。「ミキモト真珠島」の「海女の実演」。パノラマ島の発想の元となった乱歩ゆかりの地である。

 今回これを書くにあたって少し調べてみたところ、驚くべき発見があった。なんとシリーズ中で明智探偵が着てるものすごい衣装の数々は、天知茂の私物だったのだそうだ。この作品でも細かいチェック柄(市松模様)の、天知茂以外にはとても着れそうにない柄のジャケットを披露している。
 このシリーズ第19作をもって井上梅次が監督を降板。五十嵐めぐみも本作を最後に文代役を交代している。



『江戸川乱歩の美女シリーズ 湖底の美女』(シリーズ第19作)
 1982
 監督:井上梅次
 脚本:宮川一郎
 原作:江戸川乱歩
 製作:松竹/テレビ朝日
 出演:(レギュラー)天知茂/五十嵐めぐみ/大和田獏/荒井注
    (ゲスト)野川由美子/松原千明/平田昭彦/高橋昌也/牟田悌三
 上映時間:92分


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