鈴木亨『古墳探訪 空から見た古墳』

 

 鈴木亨『古墳探訪 空から見た古墳』中央公論社 1998 中公文庫 す17-3

「私は学者ではない」という著者がカメラマンと一緒にセスナに乗り込み、全国各地の古墳を上空から見てまわり、歴史エッセイとしてまとめあげた超労作。TV番組『空から日本を見てみよう』に十数年先行する「空から古墳を見てみよう」である。
 取り上げられているのは、河内、大和、中国、九州、関東の古墳群で、各記事には航空写真と簡単な地図が附載されている。主なものをあげると、河内の「古市誉田古墳群」「百舌鳥耳原古墳群」、大和の「佐紀盾列古墳群」「大和・柳本古墳群」、中国の「五色塚古墳」「造山古墳」、九州の「乗場古墳」「岩戸山古墳」、関東の「埼玉古墳群」「太田天神山古墳」などなどなど。

 自分はわりと古墳見学に行ってる方なんだけど、できれば事前に被葬者や特徴、その古墳にまつわるエピソードなどにざっと目を通してから出かけるようにしてる。よっぽど特徴的な古墳だったり、石室をぼっちり見学できたりしない限り、人は誘えない。単にこんもりとした森を遠目にぼんやり眺めてる人になってしまうからだ。まぁ森を眺めてまったりってのも悪くはないんだけど、やっぱ前方後円墳は教科書に載ってたカットで上から見たい、できれば他の古墳も……。常日頃、そんな不満を抱いてる古墳ファンに、本書はもってこいだと思う。「仁徳天皇陵古墳」や「箸墓古墳」などの、空撮されることの多いメジャーどころ以外の古墳もしっかり載ってるのが嬉しい。なかには見学に行ったことのある古墳もいくつかあって、上から見たらこんな風に見えるのかと感慨深かった。

 それにしても前方後円墳。なぜあんな形状になったのだろうか。古墳にまつわる謎は数多いが、やっぱ一番気になるのはあの独特の形状である。後円のところが墳墓で、前方が祭壇の変形ではないかというのが今のところ有力な説で、なるほどそうかもって気もするが、後期の古墳には前方部に埋葬されている例もありいまひとつスッキリしない。元々の目的が失われ、形状だけが残ったってことだろうか。おなじみヒストリーチャンネルの『古代の宇宙人』では、しっかり宇宙人と関連づけられていた。またか! と思う反面、あれほど美しく整った形状を見せられれば、天空からの視線を想像してしまうのも無理からぬことだと思う。著者もそんな感じの感想をさらっと記している。
 本書の残念なところは「文庫サイズ」ってことの一点。電車で読むにはもってこいだけど、写真がキモの本だけにもっと判型が大きければどんなによかったかと思う。ぼちぼち情報が古くなってきているかもしれないが、それぞれの古墳についての丁寧な記述は読み応えがあるし、考察もニュートラルでよかった。視点を変えることは大切で、なにより楽しい。おすすめ。



『古墳探訪 空から見た古墳』
 中央公論社 1998 中公文庫 す17-3
 著者:鈴木亨

 ISBN-13:978-4-1220-3269-2
 ISBN-10:4-1220-3169-9


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