『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 学校の怪談やコックリさんなどのポピュラーなネタはすっかり影をひそめ、家と職場にまつわる体験談が中心の巻。投稿者の年齢は前巻に続いてやや高めで、海外からの投稿もある。全体の印象はライトな絵柄、ソフトな怪異表現といった感じ。各話ごとに様々な怪異が生じてはいるが、総じてゆるめの話で占められた一冊だ。ところがそんな中に一編、とんでもないエピソードが含まれていた。泥の中のダイヤモンド、いや、ポップコーンの中の臼歯って感じの傑作エピソード、それが「第七話 子供達の家」である。作画はこれまでにも良作をものにしてきた時任竹是。

「第七話 子供達の家」のストーリーはいたってシンプルだ。千葉県A市の新興住宅地に越してきた当時10歳の投稿者が、新居で複数の子供の霊や動物霊を目撃し様々な怪異に見舞われるというもの。後にその土地にまつわる曰くが判明する。絵に描いたような幽霊屋敷ものである。作画担当者はそんなシンプルでオーソドックスなストーリーを、極上の作画で極上の作品に仕上げている。トビラ含めて28ページ、一切の隙も妥協も感じられない。トビラからしてめっちゃ怖い。ぐにぐに変化する視点や歪んだ構図が不安感を煽り、ただそこにいるだけのゴーストの姿も素晴らしくイビツに、不気味に表現されている。なかでも3ページにわたって描かれる投稿者とゴーストのファーストコンタクトは秀逸で、まるで自分がそこにいたかのように感じさせられる。絵柄は暗く、じっとりとしていて、古い木造家屋の匂いが漂ってきそうな雰囲気である。上手く例えられないが、つげ義春とひよどり祥子をいい具合にミックスした感じか。
 それにしてもこんな傑作が顧みられることなく埋もれてしまうのは実に惜しい。昨今の雑誌にポンと掲載されても、遜色がないどころか、並の作品なら全く太刀打ちのできないレベルの一編である。幽霊屋敷もののファンにとっては、この一編のためだけにこの本を買ったとしても、きっと後悔することはないだろうと思う。それくらいの作品。

 あとこの第18巻の巻末には、姉妹シリーズ『ほんとにあった怖い話 作家編』の広告が掲載されている。「〜作家編」もなかなか面白いシリーズなのでいずれ感想を書こうと思う。



『さまよえる亡霊 他』画・茶々丸 ’92『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号、5月号 掲載
 「第一話 さまよえる亡霊」投稿者・東京都 匿名希望さん ※幽霊屋敷・職場の怪談
 「第二話 ふりむいても誰もいない」投稿者・宮城県 高橋知美さん ※霊感少女・幽霊屋敷
 「第三話 死神が通り過ぎた夜」投稿者・愛知県 名古屋っ娘さん ※家族の心霊体験集

『第四話 からみつく腕』投稿者・大阪府 しゆさん 画・丸傳次郎 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※金縛り・幽霊屋敷

『見知らぬ人影 他』 画・塚田さとみ ’92『ほんとにあった怖い話』5月号、’91『ハロウィン』12月号 掲載
 「第五話 見知らぬ人影」投稿者・静岡県 石川一美さん ※心霊写真・職場の怪談
 「第六話 視線外の世界」投稿者・神奈川県 NAKOさん ※霊感少女

『第七話 子供達の家』投稿者・茨城県 匿名希望さん 画・時任竹是 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※幽霊屋敷・神隠し

『サウスエンド奇禍談 他』画・黒田祐乎 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第八話 もうひとりの兄」投稿者・イギリス(ロンドン在住) A.Sさん ※幽霊屋敷
 「第九話 棲みついた影たち」投稿者・兵庫県 A.Nさん S.Yさん ※幽霊屋敷・職場の怪談

「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。



『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:茶々丸 他

 ISBN-13:978-4-2579-8224-1
 ISBN-10:4-2579-8224-1


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コメント

幽霊屋敷?
あけましておめでとうございます。

今年も更新を楽しみにしております。
貴殿にも怪奇体験がおありとか。

ささやかながら、私が10年ほど前まで過ごした家(鎌倉市某所)が、昔の処刑場跡地に建てられていたこともあってか、しばしば怪奇現象があったようです。
伝聞形なのは、私自身は10年近く住んでいながら怪奇体験ゼロだったため。
ちなみに父親もゼロ。
不思議な体験をしていたのは、もっぱら母親と兄でした。

どうも拙宅に出現する「ヤツ」は、透明で姿が見えないながら、かなりの高速で室内を飛び回り、急激に人体に攻撃を加えるタイプだったそうです。
母は「とにかく気配だけがグルグル私の周りを旋回して、急に飛びかかってきて髪の毛を掴んだりするから鬱陶しくてたまらない!」とよく怒ってました。

兄もよく廊下で「見えない何か」に突き飛ばされたりしていたそうです。
兄によると、一度だけその姿が見えたことがあるそうで、「男の頭部だけが飛んでいた。上目遣いでイヤな目つきで睨んできた」と言っていました。

もとも頭だけで「髪の毛を掴んだり」「突き飛ばしたり」出来るかは不明です。

実は怪奇現象は拙宅だけでなく、近所でも頻発しておりまして、隣家では「ザンバラ髪の男が急に襖を開けて部屋に入ってきた」ことがあります。
(その時は隣家で一人留守番をしていた奥さんが悲鳴を上げながら拙宅に避難してきました)
また偶然とは思えないくらいの頻度で、近隣で発狂者が発生していたのも事実です。

そのエリアの怪奇話はかなり有名で、大学時代、帰省した私が深夜タクシーで帰宅しようとしたら、運ちゃんに「え!お客さん、あそこに住んでんの?あそこは幽霊坂って言って私らは誰も行きたがらないよ!」と言われたこともあります。

余りに奇怪な現象が多発する為、宅地造成したゼネコンに知り合いがいる人が調べてもらったところ、どうも昔処刑場があったエリアのようで、造成中に人骨が多数出てきた、ということ

昔の処刑は斬首でしたから、兄が見た「頭だけの幽霊」はそれなのかもしれません。
(もっとも全身ヴァージョンもあるみたいですけど)

Re: 幽霊屋敷?
>>水引さん

寝る前に心洗われるような素晴らしいコメントありがとうございます!
今年もよろしくお願いします!

いやー、自分の場合はリアルな心霊体験っぽいことに最高に近づいたのは、せいぜい↓これくらいで、
http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-248.html
第六感には全く恵まれてないらしく、まともな体験はまるでないのです。
でも「幽霊屋敷」にはなんだかんだで3回ほどに関わったことがあって、
そのうちの1回は数年間住んでました。映画のリングみたいに床下から井戸が出てきたりして、見るからにヤバげな建物だったのですが、
幽霊の方は華麗に回避してしまったようです。「幽霊屋敷」と呼ばれてたのを知ったのも、そこから引っ越した後だったし……
しかもかなり住み心地が良かったんですよね。
自分は怖がりなので突然出られても困ってしまうのですが。

それにしてもお兄さん、お母さんの体験は素晴らしいですね。
素晴らしいっていうのもなんですが、やっぱり素晴らしいとしか言いようがない。
限界集落のようなブログのコメント欄に埋もれてしまうのがもったいないくらいです。
特に面白いと感じたのは隣家の方のくだりで、よくある幽霊屋敷よりも広範な「土地丸ごと感」が素晴らしいです。
というかめっちゃ怖いですね、ザンバラ髪の男。

実話怪談の本やその手のブログなどを読んでいると、
頭だけの幽霊は結構目撃されていて、自分がたまたま固めて読んだのかもしれませんが、
関西方面、京都、兵庫などでの目撃例が多いように思います。
多くの場合は屋外で飛んでいる(空中にある)のが目撃されるだけで、障りがあることは稀なようです。
それに加えて、なぜそんなものが見えたのかに関して語られることも少ないです。
お兄さんが目撃されたものの場合は、土地の因縁を感じさせるところが面白いですよね。
妖怪にもこの手のがいるので、飛んでるだけじゃ妖怪みたいですけど、
「因縁」がついた途端、にわかに幽霊度が増して怖さも大幅アップです。
貴重な体験談ありがとうございました!

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