さがみゆき『血まみれカラスの呪い』

 

 さがみゆき『血まみれカラスの呪い』ひばり書房 1986 ヒット・コミックス 58 怪奇ロマンシリーズ

「あの人が私を狂わせてしまったのです。けれど私はすこしもあなたを恨んではおりません……」(p.06)

 転校してきた「由利桜子」さんは絵に描いたようなサイコパス美少女。主人公の「小野けい子」がそのことに気付いたのは、彼女と互いの血を舐めあって心の友の誓い(Omertà)を立てた後だった。その直後から、由利さんの残虐な振る舞いはエスカレートしていく。カラスの雛と、その親ガラスを惨殺し、でかいアリンコを踏みにじる。自宅には等身大の奇怪な人形がぞろぞろ吊り下げられて、すっかりオバケ屋敷の様相を呈している。人形は全て彼女の母親のハンドメイドらしい。
 そんな由利さんに振り回されるけい子だったが、次第に自分自身の嗜虐的な性向に気付きはじめた。見渡せば世の中は残酷なことに満ちている。誰もが多かれ少なかれ残酷なものを好み、それをひた隠しにしているのだ。やがて二人は由利さんの母親に主導され、クラスメイトのメガネ女子を発狂させてしまう。二人の残酷な「いたずら」はどこまでエスカレートするだろうか。

 衝撃的な入れ歯、カツラのキャストオフシーンや、キャッチーな絵柄が頻出してネタっぽく扱われることの多い作品だが、古典的な少女小説の要素を備えていることも見逃せないポイントだ。というか本質的には「少女小説の読者の女の子たちが、思いつくままてきとーに(ときにふざけたりしながら)話した怖い話」って感じの作品だと思う。そのためピー音でまるまる聞こえなくなるような暴言を吐くキャラが出てきたり、とんでもない出来事が起こっても、どことなく慎ましやかで、そこはかとない品が感じられる。こういうニュアンスって簡単に狙って出せるものではないから、もともと著者に備わったセンスなのだろう。
 よく言えば『ジュニア それいゆ』とかに載ってそうな本作のクラシックな絵柄も、そんな作風によく似合っている。絵的には非常に見せ場が多いが、一番のおすすめは由利さんがけい子の腕にかぶりつくシーン。「ガブ」っといってるのに、無表情なつぶらな瞳がかわいい。血筋の「血」、誓いの「血」、流れ出す「血」など、いろいろな意味合いの「血」に囚われた少女たちの妖しく楽しい日常を、品良く、たどたどしく描き出した愛すべき作品。



『血まみれカラスの呪い』(旧題:美少女とカラス)
 ひばり書房 1986 ヒット・コミックス 58 怪奇ロマンシリーズ
 著者:さがみゆき

 ISBN-13:978-4-8280-1058-8
 ISBN-10:4-8280-1058-8


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