『恐怖のいけにえ』

 恐怖のいけにえ

 三人の美人TVクルー「ジェニファー」「カレン」「ビッキー」は、カーニバルの取材にカリフォルニアの小都市ソルバンクを訪れた。ところが痛恨のホテル予約ミス。祭りで賑わう町には一つの空室もない。くそー車内泊かよーと諦めかけたところに救いの手が差し伸べられた。たまたま知り合ったカエル顔のおっさん「ケラー」が、自宅に泊めてくれるというのだ。郊外にある彼の屋敷は、クラッシックでなかなか豪華な作りである。妻と二人で暮らしているらしい。
 体調を崩したビッキーを一人部屋に残し、取材に出かけるジェニファーとカレン。床の通風孔から這い出した何者かが、ビッキーに忍び寄る。

 タイトルは『悪魔のいけにえ』(1974)を彷彿とさせるが全く無関係、ってわけでもなくて、パッケージのスタッフリストによると『悪魔のいけにえ』の脚本家が原案として参加しているらしい(あれの脚本って?? ってツッコミは無し)。他にも何やらその道の人がずらずらと並んでいて、撮影の人が後に『ファンタズムⅡ』(1989)の製作やってるとか、スタッフ・キャストだけ見るとなかなか楽しめそうな作品ではある。まあ実際には本編が始まる前のキャストのコメントを見た時点で、微妙に不安な気分にさせられるのだが(見覚えのない俳優が「オレが出た中で一番怖い作品だよ! オムツ着けてがんばった! いえ~い!」なんて言ってる)。

 内容はツーリストトラップもの。屋敷に隠れ棲む何者かによって、TVクルーが次々と殺害されていく。夫婦はその何者かを地下室に匿ってるらしい。実にシンプル設計。古き良き~って感じのオーラビンビンなので(1980年の映画です)、オーソドックスなスラッシャーかと思って見てたのだが、これが大間違いだった。その「何者か」が大問題だったのだ。
 盛大にネタバレになってしまうが、夫婦が屋敷の地下室に匿っていたのは「ジュニア」こと二人の愛息、パワー系の知的障害者だったのである(オムツ着用)。さんざん焦らしてこれかよ! ってのもあるけど、問題はそのジュニアの描写である。妙に筋肉質でずんぐりした体型をグレーに汚れた布切れで包み、きったないオムツを当てている。目の焦点は合ってないし、ろくに言葉も話せない様子。そして昆虫や小動物を殺すように、簡単に人を殺してしまう。
 よく知られているように、この手の作品には知的障害者っぽいキャラが頻繁に登場する。派手な暴れっぷりばかりが印象に残るが『悪魔のいけにえ』の「レザーフェイス」や『13日の金曜日』(1980)の「ジェイソン」などは、紛れもなくそういう属性を付与されたキャラクターだ。しかし本作のジュニアは、それら超人的(怪物的)なキャラとは明らかに一線を画している。俳優自ら施設に足を運んで研究したというキャラクター造形がリアル過ぎるのだ。そのせいでジュニアのパワーが炸裂するクライマックスのアクションにも、なんとも言い難い哀愁が漂っていて爽快感がない。熱演ではあるのだが。

 この作品には派手な流血シーン、ゴアシーンはほとんどない。実は夫婦とジュニアの出生には重大な秘密があって、それに関する過去の一連の出来事が劇中で語られるのだが、そこが一番怖かったので(妊娠→去勢→殺害のくだり)、音声のみで回想じゃなくて映像化して欲しかった。
 おっぱいは最初に殺害される女性一人分(入浴シーン)。予想外に丁寧に作られた作品だったが後味は悪い。映像特典89分収録。



『恐怖のいけにえ』(“THE UNSEEN”)
 1980 アメリカ
 監督・脚本・原案:ピーター・フォレグ
 製作:アンソニー・B・アンガー
 出演:バーバラ・バック/シドニー・ラシック/スティーブン・ファースト/レリア・ゴルドーニ/カレン・ラム
 上映時間:91分


関連記事
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)