手塚治虫『ブルンガ1世〈2〉』完

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 手塚治虫『手塚治虫漫画全集 MT170 ブルンガ1世〈2〉』完 講談社 1983

 冒頭でマスターが死亡し、束縛から解放された「ブルンゴ」。ひとまず動物園に収容される「ブルンガ」とブルンゴだったが、逃げ出して山中に潜伏する。ところがブルンゴがハイカーを平気で襲うため、二匹はケンカ別れしてしまう。二匹を追っていた「ジロ」と「太郎」は、ストッパーのブルンガを失い凶暴化したブルンゴに襲撃されるが、どうにか洞窟に逃れることができた。そして二匹の子供の誕生を目の当たりにする。ヒトにボコられながらブルンゴがもうけた子供は、ヒトにそっくりの姿をしており、母親と同様ヒトを食料にするらしい。食われまいと抵抗するジロたちを救ったのは、洞窟を破壊して現れたブルンガだった。
 二人を救ったブルンガはその日を境に姿を消す。ブルンゴもまた人類を滅ぼすという野望を抱いて子供と共に地下へと逃れた。やがて夥しい数の悪魔の姿をした生物の群れが地上に侵攻を開始する。

 というわけで『ブルンガ1世』完結。TVアニメのプランでは、ブルンガと少年のペアが怪事件を次々解決していく一話完結の作品だったというから、すごい変わりようだ。そもそもこの第2巻ではブルンガがほんの少ししか出てこない。どんどん異形の子供を産んで、世界征服を企むブルンゴのピカレスクとなっている。マンガで読む分には一話完結式のヒーローものよりも、現行のこの形の方が読み応えがあるように思う。
 手塚治虫らしいなーと思うのは、二匹の怪物が人のメンタルを持っているところで、著者は人のメンタルを持たないロボットや怪物や動物があまり好きではなかったようだ。『どろろ』などにはしっかりその手の妖怪も出てくるから、不得手というより、やっぱ好みじゃなかったのだろう。描いてると飽きてくるとか。でもそのおかげで何の感慨もなく黙々と人を飲み込むケモノっぽさと、ヒトに似たメンタルを兼ね備えたブルンゴのような魅力的な悪役が出来上がるのだから面白い。ブルンコの悪役ぶりにヒトの悪人が霞んでしまって、太郎の敵討ちのエピソードなどは余計に感じられるほどだ。

 自分はとにかくこのブルンゴのキャラ、変身前の可愛いとこも、変身後の気味の悪い姿も、最後までブレない性格も大好きなのだが、著者はこの作品自体気に入ってなかったらしい。おなじみ漫画全集の「あとがき」はこんな身も蓋もない一節で終わっている。
「ぼくは何年かに一度ジレンマで谷底に落ち込むことがあって、この「ブルンガ1世」のときのコンディションは最低だったのです。何をかいてもつまらなく、人気も出ず、ちょうど虫プロの倒産もからんで、お手あげの状態だったのです。/「ブルンガ1世」のあと、週刊誌には長い間連載ができなくなってしまいます。次に「ブラック・ジャック」をかきはじめるまで、ぼくにとっては長い長い冬の時代でした。」



『手塚治虫漫画全集 MT170 ブルンガ1世〈2〉』
 講談社 1983
 著者:手塚治虫

 ISBN-13:978-4-0610-8770-5
 ISBN-10:4-0610-8770-3


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