手塚治虫『ブルンガ1世〈1〉』

0 Comments
serpent sea
 

 手塚治虫『手塚治虫漫画全集 MT169 ブルンガ1世〈1〉』講談社 1983

 主人公の少年「ジロ」はある日、ホームレスっぽい老人から不思議な生物を託された。トランクに入ったその生物は人が念じれば、思い描いた姿に成長し、精神を反映して邪悪にも善良にもなるという。生物の名は「ブルンガ」。悪魔がこの世に創造した最後の生物である。
 その夜、「太郎」という青年と知り合ったジロは、二人してブルンガにイメージを注入することになった。ジロは「りこうなイヌのように、かわいいリスのように、人間の友だちになれる動物に!」と念じ、太郎は「トラとウマとワシとサメの強さを持った動物!」と念じる。実は太郎はイエロー・マイスと名乗り、アメリカで銀行強盗を繰り返し刑務所送りになった札付き。彼は自分の思い通りにブルンガを育て上げ、操ろうとしているのだ。
 やがてブルンガは二人のイメージした通りの、愛らしく、賢く、凶暴な怪物へと成長する。そして同じ頃、海の彼方のイスラエルでは、ブルンガのつがいとなるメスの怪物「ブルンゴ」が誕生しつつあった。

 手塚治虫の作品としては珍しいでっかい怪物が大暴れする作品。もともとはTVアニメ用の企画だったらしく、子犬のような通常の姿から、巨大怪物へとモリモリ変形するブルンガは実にアニメ向き。動いてるところを見たかった。人間のキャラ描写はかなり薄めで、怪物同士の交流と、数々の破壊、戦闘シーンがメインになっている。
 この巻の途中から登場するブルンゴは「ライオン、トカゲ、蛇、ハゲタカに似てドウモウで、おれには忠実な奴隷……。残忍で冷酷、殺人もアッというまにやってのける、なんにでもばけられる怪物!」という贅沢な願望から誕生した、ハイスペックに邪悪でキュートなメスの怪物である。ブルンガと比べるとその変形はグロテスクで、平気で人を襲い貪り食う。そんな凶暴な怪物なのに、マスターには絶対服従というギャップがまた素晴らしい(通常形態はめっちゃかわいい)。ブルンガと同様、人語を解し、話す知性を備えている。この作品には女性のキャラクターが出てこないが、ブルンゴは一匹でそれを補って余りある活躍を見せる。著者は気に入ってなかったらしいが、どこをとっても非常に魅力的なキャラで、途中からすっかり主人公になっている。第1巻はブルンガと駆け落ちしていたブルンゴの妊娠が判明するところで終わり。二匹の行く末が気になる。



『手塚治虫漫画全集 MT169 ブルンガ1世〈1〉』
 講談社 1982
 著者:手塚治虫

 ISBN-13:978-4-0610-8769-9
 ISBN-10:4-0610-8769-X


関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply