古賀新一『いなずま少女』

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 古賀新一『いなずま少女』ひばり書房 1983 オカルト・シリーズ 135

 ツインテールの主人公「冴子」は近所の森で、夢の中で見たボロ小屋を発見する。小屋の中には古びた墓石がまるで人目を憚かるかのように設置されていた。冴子が小屋に足を踏み入れた時、激しい雷鳴が響き渡り、墓石から奇怪な老婆が出現した。
 襲い来る老婆を振り切り、どうにか逃げ帰った冴子だったが、夜が更けに再びその老婆に遭遇することになる。雷が窓の外の枯れ木に落ちたかと思うと、見る見る老婆の姿に変化し、燃え上り、窓ガラスを破壊して冴子の部屋に侵入したのだ。「血を早くおくれ……」と冴子の首筋に歯を立てる老婆。
 ……冴子の両親にはこの謎の老婆に心当たりがあった。以前この家にお手伝いとして住み込んでいた老婆が、両親に邪険にされて家を出た後、落雷を受けて死亡していたのである。さぞ恨みを残して死んだに違いない。父親は老婆の死を確かめるために、件の小屋に赴き墓を暴くが、そこに見たのは寝棺に横たわる若々しい女性の姿だった。冴子の生気を吸って若返ったのであろう。
 それ以来、老婆は隙を見ては出現し、冴子を襲う。そしてどんどん若返っていく。反対に冴子はミイラのように老いさらばえた姿に変貌していくのだった。

 タイトルからはピカチュー的な能力の少女、レールガンみたいなキャラを想像してしまうが、本作の「いなずま少女」は怨念とイナズマの力を得て顕現した吸血鬼っぽいキャラクターだ。エナジードレインを行ってる風なので、正確には吸血鬼というより吸精鬼か。老婆の姿からどんどん若返り、最終的には主人公の冴子と同年齢(中学生)くらいの容姿になって、彼女と入れ代わろうとする(ただし入れ歯はそのままなので、咳き込んだ拍子に入れ歯がスポーンと吹っ飛ぶという壮絶なシーンがある)。
 エナジードレインの他にも特異な能力がある。吸血鬼はコウモリをはじめ闇属性っぽいものに変化することが知られているが、いなずま少女の場合は枯れ木や材木、コンクリートなどの、なんとなく土木属性なものに憑依し変化する。時にイナズマを操ったり、分身する能力も有しているが、この辺りの設定はかなりゆるくて、行き当たりばったりに能力が発揮されてるように見える。よく言えば「計り知れない」感じ。

 ストーリーは上記のように、老婆が主人公めがけてぐんぐん迫ってくるだけのシンプルな話のはずなのだが、計り知れない老婆のキャラクターと、著者の「キメの絵と絵の間をざっくりと埋めていく」という手法のおかげで、どゆこと? ってなること請け合い。まったく先が読めない。
 冒頭の6ページめには古木の林立する森と、石段を登る少女たちの小さな姿が描かれている。まるで熊野古道のような素晴らしい森の風景だが、素晴らしすぎて「ずい分さびしいところね」というセリフが少々不釣り合いに感じられる。そもそもストーリー上の重要度の低い「近くの森」をここまでのスケールで描く必要があったのかどうか。……それでも著者は心の赴くままに描き、黙々とその間のコマを埋めていく。道徳的な教えを垂れるでもなく、ありがちな「カッコいい絵面」にも執着しない。作品の有する超個性的なグルーヴ感は、独自のスタイルを貫く著者のこの姿勢の賜物である。

 本書にはこの表題作の他に『恐怖の材木少女』『血、血がほしい!』の二つの短編が収録されている。どっちも一筋縄ではいかない好短編。



『いなずま少女』
 ひばり書房 1983 オカルト・シリーズ 135
 著者:古賀新一

 収録作品
 『いなずま少女』
 『恐怖の材木少女』
 『血、血がほしい!』

 ISBN-13:978-4-8280-1046-5
 ISBN-10:4-8280-1046-7


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Posted byserpent sea

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