江戸川乱歩『少年探偵団』

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 江戸川乱歩『少年探偵団』(『江戸川乱歩推理文庫〈31〉怪人二十面相/少年探偵団』講談社 1987 所収)

 東京に黒い魔物の噂が広がった。影のような怪人物があちこちに現れ、人々を驚かせては消える。他愛のない悪戯のようにも思われたが、後に恐るべき犯罪を企んでいたことが判明する。少年探偵団の団員の家から、貴重なインドの宝石が盗み出されたのだ。現場で目撃されたのが、その「黒い魔物」。
 もともとインドの仏像の額に嵌め込まれていた宝石には、インド人によって呪いがかけられており、宝石の持ち主は絶えず真っ黒な奴に狙われると伝えられていた。そして持ち主の家に女の子がいると、誘拐され、人知れず殺されてしまうのだという。そこで「小林少年」はその家の5歳になる娘「緑ちゃん」の警護に乗り出したが、二人揃って謎のインド人の手に落ち、地下室で水攻めにされてしまう。水嵩はどんどん増し、やがて小林少年は緑ちゃんを背負って泳ぎ始めた。果たして二人は脱出する事ができるのだろうか。

 怪人二十面相と少年探偵団+明智小五郎の2ndバトル。二十面相がストーカー化して少年探偵団をつけ狙う後年の作品群とは異なり、独自に活動する二十面相に少年探偵団が関わっていく展開。二十面相は怪盗稼業に専念していて、明智たちに目を着けられることがなければ、全てを謎のインド人におっ被せて、正体を明かすつもりさえなかったようだ。小耳に挟んだ呪いの伝説をもとに繊細(遠回り)な犯行計画を練り上げ、コツコツと実行する二十面相が怪盗らしくて好ましい。後の少々雑な犯行と比べると尚更である。劇中、彼の冴えっぷりを賞賛するのが、ほぼ彼自身だけってのが気の毒だけど。
 怪盗らしいと言えば、気球での逃走、マンホールからの逃走、犯行予告、地下の宝物室などなど、二十面相の怪盗ライフはお手本のような充実ぶりで、それに対する少年探偵団もBDバッジの活用や集団での変装など、シリーズ第二弾にしては相当組織立った活躍を見せる。作品の前半は怪盗の奇怪な犯行を、後半は探偵の活躍を中心に描く構成で、VSものとしての完成度は高い。どうにか逃げ延びようとする二十面相の悪あがきっぷりと、無情に攻め続ける明智探偵の攻防を最後まで楽しむ事ができた。惜しむらくは折角の小林少年の女装の描写が乏しい所か。

 ~ 大探偵時代、美しさを競いあう二つの花、その名を探偵と怪盗と言った ~



『江戸川乱歩推理文庫〈31〉怪人二十面相/少年探偵団』
 講談社 1987
 著者:江戸川乱歩
 解題:中島河太郎
 巻末エッセイ・乱歩と私:安部譲二(作家)「顔の大きな怪老人」

 収録作品
 『怪人二十面相
 『少年探偵団

 ISBN-13:978-4-0619-5231-7
 ISBN-10:4-0619-5231-5


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Posted byserpent sea

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