鳥飼誠, 怪聞亭, つきしろ眠『恐怖箱 赤蜻蛉』

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 鳥飼誠, 怪聞亭, つきしろ眠共著, 加藤一監修『恐怖箱 赤蜻蛉』竹書房 2009 竹書房文庫

 おなじみ竹書房の実話怪談集。でも内容はおなじみって感じでもない。心霊、祟りのイメージが強い「恐怖箱レーベル」にしては、奇談をメインに収録した本書はかなり異質な雰囲気。短めの話、全50話が収録されている。

「白い車の男、黒い車の女」黒いクラシックカーに乗って現れる美しい黒衣の女が、事故現場の大破した車両を、嬉々として見てまわっている。その姿はどうやら体験者にしか見えてないらしい。
 決して怖ろしくはないけれど、女の醸しだす邪悪さは魅力的で、とてもインパクトがあった。自動車にまつわるものらしいが、その正体を窺わせるような記述は一切ない。ただ一連の行動には、何らかの秩序があるようにも感じられる。どことなく外国の怪談の雰囲気。

「骨董品屋」日本刀に惹かれて骨董品屋を訪れた中学生の話。そこで見せられた日本刀の刀身には、いくつもの女の目が映り込んでいた。その刀には強烈な因縁があるという。
 日本刀の持つイメージからすると、もっと多くの怪談があってもいいような気もするけど、さすがに身近なアイテムってわけでもないので、こうした実話怪談集ではたまにしか見かけない。しかしその数少ない話には、どれも独特の血なまぐささが漂っている。

「おぶつだん」1ページにも満たないほどの短編ながら、気味の悪い日常の断片が、切れ味よくまとめられている。園児に池のスケッチさせると……という話。

「りんごジュース」定年を迎えた体験者の男性が、滞在先のホテルで少女の霊と遭遇する。生前の印象を濃厚にとどめた少女の幽霊は、体験者にそれと感じさせないほどに愛らしくあどけない。こんな幽霊なら遭遇しても悪くないかも、と感じさせる魅力がある。薄暗いホテルの廊下で、少女が一瞬かいま見せる凄惨な姿は、類例がないわけではないけれど、美しく切ないイメージだ。

「おかいこさま」幼い頃、母親の実家が養蚕業を営んでいたという体験者の話。もちろん怪異は養蚕にまつわるものである。「回転簇(かいてんまぶし)」「変わり者探し」など、聞き慣れない言葉を交えつつ、まったく馴染みのない養蚕をなりわいとするの家の生活が、短いページ数でいきいきと描かれている。「おかいこさま」とは金色に光る蚕の繭から生まれる猫で、蚕室の守り神であるという。
 怪異自体もさることながら、半世紀前という時代設定や、地方色豊かな登場人物のセリフには、まるで民話でも読んでるような気分になった。

 他にも猫や犬など動物にまつわる話、器物にまつわる話などが、まとまって収録されている。印象的なものをあげるだけでも結構な数になりそうだったので、今回は最初から特徴的なものを5編程度選ぶつもりで読んだ。怖いかどうかっていうと、あまり怖くはない。でも奇談っぽいのを好きな人にはきっと楽しめる一冊だと思う。


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Posted byserpent sea

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