伊藤潤二『うずまき 最終話 遺跡』

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 伊藤潤二『うずまき 最終話 遺跡』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 桐絵と秀一はトンボ池に開いた縦穴の石造りの螺旋階段を下り始めた。底が見えないほど穴は深い。途中、桐絵が階段に取り残された住人に襲われ、それを庇った秀一が落下してしまう。その後を追って、桐絵は果てしなく続く階段を急ぎ足で下りていく。やがて遥か下方に小さな光が見え始めた。
 縦穴の底には大空洞が広がっていた。巨大な渦巻き状の建造物群が禍々しい光を放っており、それを地面を覆い尽くした人々がぼんやりと見つめている。足元の渦巻き状に変形した人々は中心物から遠ざかるほど石化して、遺跡と同化しつつあるようだ。そこには石化した桐絵の両親の姿もあった。そして桐絵は瀕死の秀一と再会する。秀一によると太古に作られたこの遺跡は、地上の人々を一定の周期で誘惑しているらしい。桐絵に逃げるように告げる秀一。もう自分には脱出する力が残ってないという。
「……私も、もう力は残ってないわ……あなたとここに残る……」
 そう呟いて、桐絵は秀一が差し出た手を握りしめた。二人の腕がらせん状に絡んでいく……。

 18話かけて提示されてきた謎の数々は見事に解明されてないのだが、見覚えのあるシンボルに埋め尽くされた地下世界のビジュアルに、なんか辻褄が合った! って気分にさせられる最終回。あれはドロドロに溶けた灯台のレンズにそっくりだし、この渦巻き空間の構造材となるために住民はあんな姿に変形してしまったのか、とか。なぜ?? についてはほぼ説明されないが、秀一の「自らの本能で」云々という言葉から察するに、この災禍がもともと太古の何者かによって作られた遺跡に起因するにせよ、今となっては人知の及ばない「自然の摂理」になってしまっているかのようだ。
 ラヴクラフトの世界観を彷彿とさせる地下遺跡の壮大なイメージは、著者によるとガウディの建築物の影響を受けているという。またこの作品は本来全18話の予定だったのが、書いているうちにページが足りなくなったらしい。そこで担当者に「単行本の最後にもう1ページ書き下ろします」と言ってみたところ、それじゃあってことでもう1話、この最終話を描くことになったのだそうだ。主人公二人が螺旋階段を降り始めたところで終わり! というのも想像力を刺激するラストで一興かと思うが、黒渦町の一つのサイクルを最後まで見届けることのできたのはやはり嬉しい。


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Posted byserpent sea

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