加藤一『恐怖箱 学校怪談』

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 加藤一編著監修『恐怖箱 学校怪談』2015 竹書房 竹書房文庫

 ありそうで無かった学校にまつわる怪談を集めた『恐怖箱』シリーズの本。おなじみの実話怪談作家がそれぞれ1〜4話のエピソードを持ち寄っている。全28話収録。一般にイメージされる「生徒が怖がる」学校の怪談とは異なる、「生徒そのものが怖い」話が含まれているのが特徴。対象となる学校も小学校〜専門学校、大学までと幅広い。

 ところで学校の怪談といえば、高校の頃に変なことがあった。何の授業だったか忘れてしまったが、とにかく退屈な授業中のことだった。机に突っ伏して爆睡していた真横の席のデブのS君(友人、普段は温厚な性格)が突然跳ね起きて、こっちに向かってブチ切れ出したのだ。涙目で。静まりかえった教室に響き渡る怒号。後からよくよく話を聞いてみると、爆睡してただけに見えたS君は、実は授業開始直後から強烈な金縛りにみまわれていて、隣の席の自分にずーっと助けを求めていたらしい。

 ……とまあそんなアホな話はさて置き、極端に長い話も短い話もない収録作の中で、印象に残ったのは以下の4編。

「ランドセル」来年小学生になる娘に届いたピカピカのランドセル。蓋を開けると部屋中に潮の香りが広がった。ランドセルを覗き込んだ父娘がそこに見たものは……。収録作の中では3ページ弱と短めだが、印象的な短い話ならではのキレのあるエピソード。親娘はすごく意外なものを見る。
 
「家庭訪問」体験者が受け持った1年生のクラスに気になる生徒がいた。授業態度が良く、笑顔を絶やさないその少年にはある問題があった。クラスメイトと全く交流を持とうとしないのだ。理由は分からない。いじめられているわけでもない。そこで体験者は家庭に問題があるのではないかと考えたのだった。家庭訪問の日、体験者は狭いアパートの一室で、いつも通りの笑顔の少年とその父親と向かい合った。室内にはゴミが散乱し、お世辞にも清潔とは言えない環境だ。話しかけても全くノーリアクションの二人。ふと天井を見上げると、そこには赤黒い煙が漂っていて、ゆっくりと動き始めると、やがて一つの形をとりはじめた。
 前述の「生徒そのものが怖い」エピソード。この後、体験者は逃げるようにアパートを辞去するが、父親と少年には過酷な運命が待ち構えている。心霊云々はさて置き、社会から取り残されたような生活環境で暮らす親子の姿が哀れ。エピソード内で明かされてない謎が多いから、掴みどころのないどんよりとした気分が尾を引く。

「随時制作中」プール掃除をしていた体験者(教師)が、ドロドロに汚れた水に半身を浸けた女生徒の姿を目撃する。二週間前に溜池で溺死したはずの生徒である。幸い彼女はすぐに消えてしまったが、プールの水を抜いてみると、ちょうど彼女がいた辺りから小さな人形が発見される。針金で縛られ石を結わえ付けられた、手作りの制服姿の人形である。名札にはさっきの女生徒の名前が書かれている。続いてもう一体、別の生徒の名の書かれた人形が、今度は焼却炉の中から発見される。
 上の「家庭訪問」と共に、収録作の中では長めのエピソード。強力な「呪い」にまつわる話である。彼女たちはなぜ死ななければならなかったのか、人形を「制作」したのは誰だったのか。こっちは謎がほとんど詳らかになるため、読後感はスッキリ。なんとなくオチが読めてしまうが、やはり呪いの話は面白い。

「授業参観」体験者は6年生になった。担任は女子の間で人気のある若い先生。早速授業が始まったが、体験者は教室の隅に見知らぬ女が立っているのに気付いた。パジャマ姿で裸足という場違いな格好の女に、クラスメイトたちは何の反応も見せない。女は所謂「あぶない人」で、余計な刺激しないように皆黙っているのか。やがて女が一人の男子生徒に顔を近づけ何やら話しかけると、男子は弾かれたように立ち上がり、教室から飛び出して行った。それ以来彼は登校拒否になり、二度と教室に来ることはなかった。しばらくの間平穏な日々が続いたが、ある日投稿者は再び教室であの女を目撃する……。
 女の正体は最後の方で明らかになるが、それで話は終わらない。現象のユニークさもさることながら、体験者の反撃が心地よいエピソードだった。イメージがはっきり浮かぶのは、簡潔明瞭な文章によるところが大きい。

 他にも有名な幼女連続殺人事件にまつわる「湖畔にて」や、宗教団体にずっぱり嵌まった人の話「約束の日」、教室に置かれた「死者の席」の話「あちらさんの席」など、興味深い話が収録されている。学校の怪談といってもバラエティに富んでいて、単調になってないのが良かった。ノスタルジックな読後感の一冊。



『恐怖箱 学校怪談』
 竹書房 2015 竹書房文庫 HO-257
 編著監修:加藤一
 著者:鳥飼誠/渡部正和/戸神重明/神沼三平太/つくね乱蔵/高田公太/ねこや堂
    鈴堂雲雀/久田樹生/橘百花/三雲央/深澤夜/雨宮淳司

 ISBN-13:978-4-8019-0538-2
 ISBN-10:4-8019-0538-2


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