三津田信三『禍家』

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 三津田信三『禍家』光文社 2007 光文社文庫

 両親を亡くし祖母と二人で東京郊外に越してきた「棟像貢太郎」(もうすぐ中1)は、初めて見るはずの町並みに妙な既視感を覚える。町の奥に位置する鬱蒼とした森。その近寄りがたい禍々しさが貢太郎に言い知れぬ不安を感じさせた。隣近所の住人に暖かく迎えられながらも、貢太郎の不安は拭い去れない。そして貢太郎にとって最悪なのは、これから祖母と暮らす一軒家に途轍もなく嫌な気配が漂っていることだった。
 案の定、引っ越しの当日から数々の心霊現象が貢太郎を襲った。そこで貢太郎は近所に住む同級生の女の子「礼奈」と彼女の兄の家庭教師「詩美絵」とともに、家の来歴を探り事態の収拾を図ろうとする。やがて彼の住む家が過去に発生した一家惨殺事件の舞台だったことが判明する。

 怪異を目撃するのがほぼ主人公だけに限られているので、純粋なホラーとしても、サイコサスペンスとしても解釈できる作品。小難しいところのない、あっさりめのジュブナイルだが、怖いシーンはばっちりある。まずは何回かある廊下で主人公が追いかけられるシーン。具体的に幽霊の姿こそ見えないが、「ぴたっ、ぴたっ」「ガチャ、ガチャ」などの稲川淳二を思わせるオノマトペの効果に、主人公のひびりっぷりが相まってスリル満点。畳み掛けるように怪異が発生する風呂場の場面も良かった(浴槽のフタがじりじりと持ち上がって……)。暗い廊下の気配、風呂場でシャンプーなど、定番のネタがしっかり描かれているのが印象的だった。
 残念なのは冒頭から仰々しく書かれた「森」が前半以降ほとんどスルーされているところで、ここはもう少し書いて欲しかったと思う。主人公が踏み込んだ森の中の雰囲気がすごく良かっただけになおさら惜しい。他に主人公がどうも小学生らしくないとか、シミちゃんの正体がわりと早い段階で割れてしまうなど、多少気になるところもあったけど、それで楽しさを削がれるようなことはなかった。エピローグはB級ホラー風味。タイトルは「まがや」と読む。


  三津田信三『禍家』角川書店 角川ホラー文庫


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