高階良子『闇におどるきつね』

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 高階良子『闇におどるきつね』(『血まみれ観音 横溝正史=原作 ~高階良子傑作集~』角川書店 1995 角川ホラー文庫 H601-6 所収)

 隣の家の男子を「辰巳にいさん」と呼びヘビーに慕っている「あや子」。最近、彼女は身辺にキツネの気配を感じるという。もちろん野生の動物がうろうろしてるわけではない。人に障る霊的なキツネに取り憑かれているというのだ。
 きっかけは辰巳にいさんの所属するオカルトクラブの集まりだった。あや子は彼らの行っていたコックリさんを邪魔してしまったのだ。それというのも玲子という美人が辰巳にいさんにベタベタしていたからだ。家を飛び出したあや子はその足で神社に向かい、キツネの像を殴りつけた。するとその直後から、彼女の周囲に異様な現象が起きはじめた。最初のうちあや子の言葉には誰も耳を貸そうとしなかったが、ついに衆人環視のなか激しいポルターガイスト現象が発生する。

 先日の『血まみれ観音』(←前の記事へのリンクです)と同じ傑作集からもう一作。この作品は1977年、オカルトブームの最中に少女マンガ雑誌『なかよし』に発表されている。『血まみれ観音』からぴったり3年後の作品だが、随分とモダンでシリアスな雰囲気に絵柄が変化している。内容はシンプルなコックリさんにまつわる怪談ではなく、予想外にマジメなサイキックものだった。
 物語の途中からオカルトクラブの先輩で超心理学の研究者が登場して調査をはじめる。「キルリアンフォトマシン」(※)を持ち出したりして、めっちゃそれらしい。で、その調査の結果はというと、実はオカルトクラブの行ったコックリさんにはキツネの霊なんて降りてなくて、ポルターガイストなどの現象はすべてあや子の強力なPK(念力)が原因だったことが判明する。後にコミック版が同じ『なかよし』に連載された小野不由美の『ゴーストハント〈1〉旧校舎怪談』を彷彿とさせる展開だ。
『ほんとにあった怖い話』のような実話系を除けば、あまり多くないコックリさんを扱った作品群の中で、その現象の原因を心霊的なものに求めず超能力の発現として描いた本作は、その点において先駆的な作品の一つではないかと思う。コックリさんや神社をモチーフにしながらも、タイトルから連想されるような和風ホラーのジトッとした怖さとは無縁の、洋風テイストのさっぱりした作品だった。

 この作品と『血まみれ観音』収録されている角川ホラー文庫の『血まみれ観音 横溝正史=原作 ~高階良子傑作集~』には、ほかにもう一本『フランケンシュタイン』の少女マンガ版『地獄でメスがひかる』が収録されている。これも大変面白い作品なので、近々感想書こうと思います。


 ※ 最近、古代宇宙飛行士説で無茶な感じで取り上げられてる大発明家ニコラ・ステラの発案、旧ソ連の技術者によって開発された特殊な写真機。日本ではオーラなどの未知の生命エネルギーが写るって触れ込みで、70年代のオカルトブームの頃に紹介されたが、正体は高周波・高電圧をかけた対象物(人体とか)が発散する水蒸気(湿気)の発光を撮影する装置である。以前は15万円~という価格で日本でも販売されてました。



『血まみれ観音 横溝正史=原作 ~高階良子傑作集~』高階良子
 角川書店 1995 角川ホラー文庫 H601-6
 解説:富樫ゆいか

 収録作品
 『血まみれ観音
 『地獄でメスがひかる
 『闇におどるきつね


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Posted byserpent sea

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