高階良子『血まみれ観音』

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 高階良子『血まみれ観音』(『血まみれ観音 横溝正史=原作 〜高階良子傑作集〜』角川書店 1995 角川ホラー文庫 H601-6 所収)

 この記事は29日に投稿するつもりだったんだけど、例のNASAの会見のあとふて寝したので(寝る前に五島勉の『宇宙人 謎の遺産』を読んだ)、久々にすごく時間がかかった。普段なら寝る前には書き終わる量なのに、モチベーションってほんと大事。……当夜はかなり早い時間からNASATVを開いて、全裸待機な感じでスタンバってました。まだ定説になってないのに、勝手に定説のように思い込んでることってありますよねー。……というわけで以下いつもの感想文↓

 主人公はサーカスの花形で、華やかな衣装の下に醜い人面疽を隠した少女「潤」。実は名家のお嬢様らしいのだが、その出自を知っているのは彼女をサーカスに連れてきた「アザのおっさん」だけ。あるとき怪しい男の訪問をきっかけに、潤はアザのおっさんに連れられてサーカスから逃げ出すことになった。彷徨の始まりだ。潤が連れて行かれたのは超場末のドヤ街だった。しばらくはアザのおっさんの顔馴染みの男達と共に、汚いバラック小屋で雑魚寝の生活を送る潤だったが、そこで殺人事件が発生する。被害者はアザのおっさん。犯人に誤認された潤は警察に追われて夜の街を逃げる。そして身を隠した邸宅の庭の片隅で、住人の男性と運命的な出会いを果たすのだが……。

 この作品は少し前に感想を書いた横溝正史『夜光虫』(←前の記事へのリンクです)の優れたコミカライズ作品だ。1973年から少女マンガ雑誌『なかよし』に短期連載されている。人面瘡や片輪者の集団など外連味のやたら強い『夜光虫』を、なんでまた少女マンガ雑誌に?? って感じだけど、大筋のロマンチックな貴種流離譚、ボーイ・ミーツ・ガールの物語ってところを汲んでのチョイスだろう。もちろん読者層に合わせて多くの点が改変されてるけど。

 なかでも最大の変更点は主人公二人の性別が入れ替えられているところで(『夜光虫』の白魚鱗次郎→本作の潤)、主人公の薄幸の少女ぶり(けど根性がある)がクラシックなヒロインらしくて味わい深い。そのほかにも片輪者の集団はドヤ街の柄の悪いおっさん連中に置換されているし、捜査官は出てくるけどあくまでも脇役の一人としての扱いだ。ストーリーはうまく整理されていて、舞台がスパスパ入れ替わった『夜光虫』に比べると、状況が掴みやすくなっている。また『夜光虫』では随所に盛り込まれた和風の要素が妖しい雰囲気を盛り上げていたが、本作では和風の要素はすべて慎重に取り払われ、結果として西洋風のロマンチックなサスペンスに変貌している。当時の読者は大いにハラハラドキドキしながら読んだことだろう。
 それにしても原作の大筋をほぼ完全に維持しつつ、ここまで違和感なく少女マンガ化した著者の手腕はすごい。コミカライズの見本のような作品。



『血まみれ観音 横溝正史=原作 ~高階良子傑作集~』高階良子
 角川書店 1995 角川ホラー文庫 H601-6
 解説:富樫ゆいか

 収録作品
 『血まみれ観音
 『地獄でメスがひかる
 『闇におどるきつね


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Posted byserpent sea

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