土屋健『デボン紀の生物』

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 土屋健『デボン紀の生物』群馬県立自然史博物館監修 技術評論社 2014 生物ミステリーPRO

 その柑橘系っぽいネーミングのせいか、「デボン紀」のイメージは地味だ。「ジュラ紀」「白亜紀」の恐竜や、「カンブリア紀」のやたらキャラの立った生物群と比べると、代表的な生物があまりメジャーじゃないのも地味さに輪をかけている。しかし長い生物の歴史のなかで、超重要なのがこのデボン紀である。もちろんどの地質年代も理屈としては等しく重要なんだけど、デボン紀にはこれ以上ないほどキャッチーで特別なイベントがあった。それが生物の陸への進出である。

「魚の時代」とも呼ばれるデボン紀には、現生種である「ハイギョ」や「サメ」、「シーラカンス」の先祖が登場する。現在海や川で見られる多くの魚が属する硬骨魚類もこの時代に現れた。また今はいなくなってしまったけれど、板皮類の「ダンクレオステウス」(Dunkleosteus)という、本書の表紙に載ってるでっかくて怖い魚が海中を泳ぎまわっていたのもこの頃である。この本を(繰り返し)薦めてくれた知人はこのダンクレオステウスなどの甲冑魚の大ファンで、数年来状態のいい化石(←ものすごく高い)の購入を目論んでるらしい。彼が化石を入手した際にはぜひ写真を撮らせてもらって、できればここにアップしようと密かに楽しみにしてる。
 そんな彼にしてみれば、デボン紀を代表する生物と言えば躊躇なく甲冑魚! なんだろうけど、デボン紀には「アカントステガ」(Acanthostega)と「イクチオステガ」(Ichthyostega)という二大スターがいる。これらの生物については前にジェニファ・クラック著『手足を持った魚たち 脊椎動物の上陸戦略』(←前の記事へのリンクです)の感想でもちょこっと触れたけど、この機会にぜひそのスター性に富んだ勇姿をご覧いただきたい↓ ……地味とか、そういう感想は無しの方向で。

 ※「Tree of Life Web Project」の「アカントステガ」の項目↓
 http://tolweb.org/Acanthostega

 ※「Tree of Life Web Project」の「イクチオステガ」の項目↓
 http://tolweb.org/Ichthyostega

 本書には約6000万年にわたるデボン紀(今から約4億1900万年前〜)に生息していた生物が、化石の写真やイラストを用いてとても分かりやすく解説されている。漢字さえ大丈夫ならどの年代の読者でもOK。もしも漢字がダメでも、本書に限らずこのシリーズは写真がすごくいいのが特長で、眺めているだけでも楽しいと思う。白眉は数ページに及ぶ「三葉虫類」の項目。ほんの数センチほどの個体が鮮明に、見事に拡大されていて物欲を超刺激される。このトゲトゲの一本一本まで完全に掘り出された三葉虫、ヤフオクに出てることがあります。時には軽自動車なら買えそうな値段で。
 イラストの方は洋風のこってりした感じじゃなくて、スイーツでいうと和菓子の落雁みたいな雰囲気なので、これは好き嫌いが分かれそう。でも生々しさがないので、爬虫類苦手って人には向いてるかもしれない。しっかり読んでも見てるだけでも楽しいおすすめの本です。

2015092301.jpg

 というわけで、それらしい化石を出してきました。この休みは珍しくプラモデルを作ってたので、今日はPCの机で撮影。
 手前のはデボン紀の三葉虫の仲間(Metacanthina barrandei)で採集地はモロッコ。オレゴン州ポートランドのオーガニックな感じ? の店で買いました。端っこの小さいケースに入ってるのも三葉虫。これはルーブル美術館の近所の雑貨屋みたいなところで購入。データが付いてないので詳しいことは全く分からないけど、丸まっている形状が可愛らしい。色もいい。集めたいなあ、三葉虫。
 箱に入ってるハマグリみたいなのはデボン紀の「パラスピリファー」(Paraspirifer)。ずいぶん前に東急ハンズの化石コーナーで買ったもの。採集地はオハイオ州で値段はかなり安かったと思う。2000円前後だったかな。画像ではよく分からないけど、表面が金属っぽくキラキラしていて(黄鉄鉱化しているらしい)とても気に入ってます。

 このスピリファーの仲間は古生代の最も成功した腕足動物で、本書でもしっかり取り上げられている。両端が翼みたいにびゅっと伸びた、もっとかっこいい形のものもある(欲しい)。江戸時代中期に編纂された寺島良安の『和漢三才図会』では「石燕」という名で雑石類(巻之六十一)に分類されている。中国では古くから粉末状に砕いた石燕を漢方薬材として用いたり、安産のお守りとして「コヤスガイ」(←前の記事へのリンクです)みたいに妊婦に握らせたりしてたらしい。『竹取物語』に出てくる「燕の子安貝」の正体がこれなんじゃないかとも言われている。また九州の方では腕足類の現生種「シャミセンガイ」(Lingula)を味噌汁に入れたりして食べるのだとか。自分は食べたことがないけど、どんな味がするんだろう。

 ところでこの「生物ミステリーPRO」というシリーズ、最近ポスター付きの箱入りセット本が出てわりとまじで凹みました。途中からだけどコツコツ買ってただけにめっちゃ悔しい&これから買う人羨ましい。……次は同シリーズの『石炭紀・ペルム紀の生物』の感想書こうと思います。


 古生代の生物 4巻セット』 技術評論社 生物ミステリーPRO ヽ(`Д´)ノ


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Posted byserpent sea

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