江戸川乱歩『怪人二十面相』

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 江戸川乱歩『怪人二十面相』(『江戸川乱歩推理文庫〈31〉怪人二十面相/少年探偵団』講談社 1987 所収)

 記念すべきシリーズ第1作。怪人二十面相と明智小五郎 with 小林少年率いる少年探偵団のファーストバトルである。

 明智小五郎はスーツ姿で既婚、物語の前半は海外に行ってて登場するのは後半戦から。不在の明智探偵に代わって全編、とくに前半に大活躍する小林少年は明智探偵をヘビーに崇拝中。登場するたびに女の子っぽい描写をされるが、ネジが一本飛んでるみたいに肝が座っている。マスコットは伝書鳩のピッポちゃん。二十面相は窃盗グループの親玉って感じで、まだまだ正気を保っている。人間以外に化けてないし。……というのがメインキャストの現状。
 ストーリーは主要な三つの事件が矢継ぎ早に発生するシンプルな構成で、小林少年、二十面相、明智探偵の順にそれぞれの見せ場が用意されている。少年探偵団はラストの美味しいところでちょこっと活躍。こうして第1作を読み返してみると、このシリーズの作品のハチャメチャさ加減は、ひとえに二十面相のぶっ飛びぶりにかかっていることがよくわかる。

 荒唐無稽さがエスカレートしていく後の作品に比べると、かなり大人しい印象の本作だが読み応えは充分だ。とくに楽しかったのは最初の地下室のシーン。小林君の余裕っぷりがおもしろい。これまでに一体どんな修羅場をくぐってきたのか。無性にいたいけな「七つ道具」にも唆られる。中盤の「鉄道ホテル」での明智探偵と二十面相のやり取りもよかった。中だるみや凹むような展開は皆無で、「そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。」(p.7) という抜群の書き出しから、一気にラストまで読むことができる。コバヤシ少年がやたら可愛い『乱歩奇譚』を見てるせいで、なんか印象変わるかなーと思ったんだけどそうでもなかった。原作の小林君もあんなだった。羽柴は小林君にベタ惚れって以外全然イメージが違うけど。

 あと「怪人」っていうと、ショッカーの改造人間とかを連想してしまって、子供のころ「なんで怪人?」って思ってたんだけど、この作品が発表された1936年当時の「少年雑誌倫理規定」に基づいて「怪盗」の「盗」の文字を「人」に改めたのだそうだ。今となってみれば「怪人」の方が断然二十面相らしい。本文挿絵は小林秀恒。



『江戸川乱歩推理文庫〈31〉怪人二十面相/少年探偵団』
 講談社 1987
 著者:江戸川乱歩
 解題:中島河太郎
 巻末エッセイ・乱歩と私:安部譲二(作家)「顔の大きな怪老人」

 収録作品
 『怪人二十面相
 『少年探偵団

 ISBN-13:978-4-0619-5231-7
 ISBN-10:4-0619-5231-5


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Posted byserpent sea

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