『ほんとにあった怖い話〈9〉読者の恐怖体験談集』

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serpent sea
ほんとにあった怖い話〈9〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1990 ハロウィン少女コミック館

 全25話を収録した前巻に比べると、この第9巻に収録されたエピソードは全9話と極端に少ない。このシリーズは基本的に各巻投稿者一人につき一つのエピソードを収録してるので、話数が少ない場合は長いエピソードが収録されているか、同一投稿者による複数の話が一つにまとめられているかのどちらかってことになる。この第9巻は後者。ガツンと来るような怖いシーンこそ無いものの、なんとなーく不気味で不吉な雰囲気の一冊となっている。

 この巻には優れた狐憑きのエピソードが収録されている。コックリさん系の話はこれまでにも数多くあったけど、最終的に病院に収容されるような狐憑きの話は確か初めてだったと思う。それが第1話「狐日和」。キツネに憑かれるのは投稿者(女性)の親友の女の子。同じ高校への進学を約束をしていた二人だったが、投稿者の家の経済事情から別の高校に進むことになってしまう。そして進学して一月も経たないうちに、投稿者は親友が「キツネに憑かれた」というウワサを耳にしたのだった。
 投稿者は病んだ親友に怖れを抱き、どこかで煩わしく思いながらも、彼女に対する後ろめたさからその関係を絶つことができない。「きっと美江(親友)、治りますから、これからも弥生(投稿者)さんのお友達でいさせてやって下さい!」(p.35)とか、相手の母親にペコペコされるのめっちゃ怖い。この辺りはつのだじろうのコックリさん、狐憑き関連の名作にもあまり描かれることのない嫌なニュアンスで、それが非常に上手く表現されている。
 それからこのエピソードで特異なのは、怪奇現象らしい怪奇現象を一切描いてない点だ。狐憑き云々の話は親友の家族と霊能者の言、同窓生のウワサによるもので、登場人物(回想込み)の誰一人として怪奇現象を目撃していない。せいぜいやけに足が速かったとかそのくらい。妄言やウワサの飛び交う中心に、病んだ少女がポツンと放置されている構図がなんとも痛ましい。

 そのほかにも小学生の女の子が学校で霊にセクハラされる「第五話 私のお腹を押すのは誰!?」、しっかりとした幽霊屋敷が出てくる 「第六話 骸骨幻想」「第七話 死の間 霊の間」など、興味深いエピソードが多かった。地味にコックリさんが復活して来てるのも特徴。作画は全体に安定している。



『第一話 狐日和』投稿者・福島県 P・N弥太郎さん 画・林正之 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.8 掲載 ※憑き物

『合宿ぶきみ譚 他』画・鷹魏真知子 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.8 掲載
 「第二話 合宿ぶきみ譚」投稿者・茨城県 蓮田和子さん ※学校の怪談・旅先の怪談・心霊写真
 「第三話 コックリさんの夜」投稿者・鹿児島県 野平翼(仮名)さん ※霊感少女・コックリさん

『第四話 業界奇談』投稿者・東京都 匿名希望さん 画・市川みなみ ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.8 ※旅先の怪談・コックリさん

『骸骨幻想 他』画・三浦尚子 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.8, VOL.9 掲載
 「第五話 私のお腹を押すのは誰!?」投稿者・神奈川県 菱沼芳枝さん ※学校の怪談
 「第六話 骸骨幻想」投稿者・静岡県 山館あけみさん ※幽霊屋敷
 「第七話 死の間 霊の間」投稿者・北海道 寺田美嘉夜さん(仮名) ※幽霊屋敷

『雨の日の親子 他』画・佐藤志保里 ’89『ハロウィン』7月号 掲載
 「第八話 バンド仲間の幽霊つき合宿!?」投稿者・茨城県 鬼沢和代さん ※旅先の怪談
 「第九話 雨の日の親子」投稿者・千葉県 市原剛さん



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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Posted byserpent sea

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