クライヴ・バーカー『腐肉の晩餐』

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 クライヴ・バーカー(Clive Barker)著, 大久保寛訳『腐肉の晩餐 - 恐怖の研究』(“Dread”『ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐』集英社 1987 集英社文庫 血の本〈Ⅱ〉所収)

 全然関係ない話なんだけど、今日電車の中で初老の女性がホライゾンを読んでた。5の下巻。二代と誾がバカかっこいい巻だけど、さすがにあの表紙&厚さはよく目立つ。思わず二度見してしまって、これが二度見か! って思った。

 大学生の「スティーヴ」は「クウェード」という年上の哲学科の学生と知り合いになった。人の恐怖の本質を見極めようとするクウェードは、他人のトラウマを穿り出して増幅、その心が壊れる様子を観察しようとする病的なサディストである。スティーヴはそんな彼の危うさに惹かれていく。クウェードはやがて極端な菜食主義者で動物の肉を忌避する「シェリル」という女性を監禁し、飢餓状態に陥った彼女に腐った肉を食わせることに成功する。そして彼女が肉を口にするまでの過程をすべて写真に収め、それをつぶさにスティーヴに告げたのだった。暴れ、眠り、排泄し、飢え、腐肉を口にして嘔吐するシェリル。クウェードを詰問するスティーヴだったが、ふいに気が遠くなり、気付けば狭い密室に監禁され耳を塞がれていた。スティーヴがもっとも怖れていたのは、幼少時の難聴の経験から突然耳が聞こえなくなることであった。

 ドログチャってしたのがいつ出るかとビクビクわくわくしてたのだが、ドログチャは結局最後まで出てこなかった。これまでに感想を書いた著者の作品には、笑えるほど大量の死体が登場したが、この作品では死亡者も0。予想してたのとジャンルが違ってた。サイコサスペンス、サイコスリラー枠だ。ただし怖さ、不快感は極上。めっちゃ怖かった。
 全体のトーンは会話主体の古典的な怪奇小説、もしくは推理小説っぽい雰囲気で格調高め。いつもより静かな感じだが、やってることはえぐい。とくにシェリルに対する仕打ちは残酷で、仄かにエロい。閉じ込められて精神的にも肉体的にも衰弱していく彼女の様子が克明に描写されている。観察日記みたいな感じで淡々と書かれているのがまた怖い。クウェードの抱く恐怖がやや弱い(平凡な)ように感じられたが、彼自身は『ヘル・レイザー』(1987)の魔導師まっしぐらだ。自分は肉が苦手でも閉所恐怖症でもないけど、そういう傾向の人にとってはシャレにならない作品だと思う。不快感MAX。

 一読後、人物の配置や作品の構成、キャラの病的な傾向の似てる蘭郁二郎の探偵小説『魔像』を思い出したが、訳者による「あとがき」では「恐怖とは何であるか」をテーマにした作品として竹本健治の『恐怖』が紹介されている。これ読んだことのない作品なので、見つかったら読んでみたい。
『腐肉の晩餐』は2009年に著者の製作総指揮で映画化されている(未見)。


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Posted byserpent sea

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