川島のりかず『血ぬられた処刑の島』

0 Comments
serpent sea
 川島のりかず『血ぬられた処刑の島』ひばり書房 1988 ヒット・コミックス 怪談シリーズ 229

 おでこにピンクの星形のアザが出た子供は死刑。それを匿ったりした者も同罪。物語の舞台はお手本のようなディストピアと化した日本だ。

 牢屋みたいなところに監禁されている主人公の花林。そのおでこにはピンクのアザがばっちり浮かんでいる。このアザは致死性の謎の伝染病の感染者に現れるという。彼女はアザの意味も知らないままに、家族によって監禁……匿われているらしい。
 しかしそんなシチュエーションは長く続かなかった。隣人の密告により花林の罹患が当局に発覚したのである。牡牛のマスクを被った係官(死刑執行人)に連れ去られる花林。泣き叫ぶ両親たち。ところが偶然にも事故を起こして大破した護送車から、花林は無傷で脱出に成功する。逃走劇のはじまりだ。

 ……しぶとい! 前に感想を書いた『みな殺しの家』(←前の記事へのリンクです)の紫音も相当にしぶとく図太かったが、本作の花林も実にしぶとい。見た目はかなりか弱い感じなんだけど、度々捕らえられても常に逃げ延びてるし、目の前で人が惨殺されてもケロッとしている(←逃亡仲間がどんどん死んでる)。押切蓮介のマンガにでも出てきそうな逞しさがある。
 終盤、拿捕された花林が連行される刑場は、子供の生首がうずたかく積み上げられた夢の島(ゴミ捨て場)のような景観で、畳み掛けるように死肉をついばむカラスの群れや、吊り下げられた首の無い子供の胴体が描写される。このあたりの一連のシーンは、昨今なかなかお目にかかれないビジュアルで非常に見応えがあった。

 この作品の世界観は過酷で残酷だ。人間不信と疑心暗鬼、悪意と殺意に満ちている。ただそんな環境だからこそ、ヒロインに付与された上記のような心身の強靭さには、そこはかとない著者の優しさが感じられる。この作品に限らず、相当無茶な設定の作品にもぼんやりとした光明が感じられるのは、悲観的楽観主義者っぽい著者のメンタルが大いに反映されているからに違いない。
 あと花林を匿った咎で逆さ吊りにされた花林ママが、律儀にスカートを太腿で挟んでるシーンも良かった。なんか慎ましくて。もちろん読後感はスッキリ。


関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply