黒沼健『世界の謎と怪奇』

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 黒沼健『世界の謎と怪奇』アサヒ芸能出版 1963 平和新書

 雑誌に掲載された一話数ページの掌編をまとめた新書本。
 これはもともと実家にあった本で、多分推理小説が好きだった祖母が買った本だと思う。怖い挿絵に惹かれて、かなり小さいころからチラ見していた覚えがある。祖母は長いあいだ町内の読書サークルに所属していて、遺品のなかには読み終えた本の短評を書いた読書ノートがある。サークル内で同じ本を回し読みして、メンバーが1冊のノートに1~2行ずつ、交感日記みたいに感想を書いていたようだ。祖母の蔵書には詩歌や古典や推理小説のほかに、この本のような怪奇系の本がちょこちょこ混ざっているので、今でもとても重宝している。このブログで感想を書いた何冊かは(横溝正史とか)、もともと祖母の蔵書だったりする。

 さてその内容は、大きく二つの章に分かれていて「秘境・謎・怪奇」には26編、「怪異譚」には8編の奇談が収録されている。ムー大陸、サルガッソー、ルルドの奇蹟、クラーケン、ポルターガイストなどのメジャーなネタが中心で、これまで感想を書いた新潮社のシリーズと比べてずっと一般向けの、気軽に読める一冊になっている。そのほか目についた、マイナーめのサブタイをいくつかあげておくと、「未来を予見する蔓草」「魔法のキノコ」「与えられた永遠の生命」「中国奥地の有角人」「“火の山” の “白い女”」「空飛ぶ円盤の化石」「霊魂の結婚式」といったところ。相変わらずめっちゃ面白そうだ。

 この本をはじめて本棚で見つけた当初は、適当に挿絵を眺めて、適当に読めそうな話をなんとか読むといったスタイルだったのだが、あるときとんでもなく怖ろしい話にブチ当たった。それは「生き返る死体」という早すぎた埋葬にまつわるエピソードで、棺桶のなかで蘇生した痕跡のある死体の話や、著者が妹の火葬を覗いた話などが、いつもの淡々とした筆致で書かれている。著者が実際に見聞きした話ってところが少し珍しい。
 今読むとそれほどでもないのだけれど、当時はもう怖くて怖くて、自分が死んだら絶対に火葬は止めて、もしも生き返ったときのために、ブザーの付きの棺桶で庭の隅にでも埋めてもらおう、などと本気で考えていた。成長するにつれてそんな考えはどこかへ行ってしまったが、今でもこのエピソードを読み返すと、当時の気分がぼんやりと思い出される。

 カバーそでの推薦文は木々高太郎。「黒沼君は探偵作家クラブの常連の一人で、もうずいぶん長いつきあいとなろう。と言って、黒沼君のは探偵小説ではない。そのネタを提供する方で、全世界の奇妙な物語に精通している〔後略〕」なんて言ってる。もとネタの供給源だったんだ。鈍いグリーンの地に赤と黒の点描画という印象的なカバーのイラストと、上記の怖い挿絵の数々は、作家渡辺啓助の四女で画家の渡辺東によるもの。


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Posted byserpent sea

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Re: 相互リンク復活のお願い

>>かぶらがわさん
ご連絡ありがとうございました!
早速、対応させていただきました。これからもよろしくお願いします!

2015/07/06 (Mon) 00:28 | EDIT | REPLY |   
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2015/07/04 (Sat) 10:13 | EDIT | REPLY |   

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