『ほんとにあった怖い話〈7〉読者の恐怖体験談集』

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serpent sea
ほんとにあった怖い話〈7〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1989 ハロウィン少女コミック館

 突然作画レベルが爆上げした第6巻に続いて、通常のストーリーを運ぶには困難なレベルの作画が特徴的な第7巻。幸いこの本に収録されているのは通常のストーリーを持たない実話怪談ばかりなので、特徴的な作画はかえって不気味な雰囲気を盛り上げるのに一役も二役も買っている。また非常に整ったエピソードも収録されているから、まさに玉石混淆って感じの一冊。ただしこの場合の「石」はその辺の石ころじゃなくて、触るだけで嫌なことが起こりそうな「呪いの石」だ。

 まず「玉」の方は『第9話 憑かれた町』。前巻で印象的な異世界もの、霊感少女ものを担当した市川みなみ作画の渾身のエピソードだ。60世帯ほどの小さな住宅地で自殺者が相次ぐ。どうやら町全体が強烈な霊障を受けているらしい……。子供が表で遊ばなくなったという発端から、霊能者が登場する最終局面まで、主人公(投稿者の友人)家族が目の当たりにする凶事の数々が淀みなく描き出される。怪異そのもの表現もさることながら、嫌な感じがする雰囲気作りがとにかく上手い。このエピソード、知る限りでは関連本などでも特に言及されてないようだし、別のアンソロジーに収録されたりもしていないはず(TVドラマについては未詳)。めっちゃもったいない。これだけピックアップして感想書こうか迷ったほどの好編だった。

「呪いの石」の方はというと、巻頭を飾る一連のエピソードの数々だ。山岸涼子の有名な作品に『汐の声』という傑作心霊マンガがある。TV撮影のために幽霊屋敷を訪れた霊能者の女の子の恐怖体験を描く、心霊ドキュメンタリーっぽい作品である。傑作心霊マンガだけにあちこち怖いのだけど、そこにあらわれる幽霊がこれまた怖い。頭身、年齢、装束が奇跡的な不気味さを醸し出していて、ちらっと見ただけでも強く脳裏に焼き付いて離れない。で、なんで『汐の声』のアレなのかっていうと、この本に収録されている「第1話 死の淵へ招く霊」以下、美里和歩作画の作品に登場するキャラクター(一般人)の容姿が、ことごとくアレを連想させるのだ。立ってるのか座ってるのか分からない、子供なのか大人なのかもはっきりしない。もちろん狙ってやってないことは分かるのだが、じっと見てるとゲシュタルト崩壊しそうで、とにかく不気味。突然頭部がずれてたりするし。平均的な投稿内容のグレードを数段引き上げているように感じた。

 それからこの第7巻にはオリジナルビデオ「ほんとにあった怖い話・シリーズ」(1991〜1992)で映像化された傑作エピソード、「霊のうごめく家」の原作(第10話)のほか、岩本松徳作画の古き良き怪奇マンガって感じの一連のエピソードが収録されている。お得感たっぷりなので、このシリーズ読んでみたいけど全巻集めるのはちょっと……って人にも、お薦めできる一冊。



『死の淵へ招く霊 他』画・美里和歩 ’89『ハロウィン』初夏の増刊『ほんとにあった怖い話』, ’89『ハロウィン』1月号 掲載
 「第1話 死の淵へ招く霊」投稿者・ 沖田順子さん
 「第2話 鏡に写った顔」投稿者・神奈川県 伊従美千代さん
 「生と死のはざまで… 他」
  「第3話 生死のはざまで……」投稿者・宇都宮市 藤本聡子さん ※戦争の怪談
  「第4話 目の錯覚さん」投稿者・宮崎市 TOWAさん
  「第5話 子供の頃から…」投稿者・静岡市 匿名希望さん

『真夜中の足音 他』画・岩本松徳 ’89『ハロウィン』初夏の増刊, 秋の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載 
 「第6話 真夜中の足音」投稿者・秋田県 斉藤斉さん
 「さまよえる自殺者 他」
  「第7話 父の心配 −「真夜中の足音」後日談 −」投稿者・秋田県 斉藤斉さん
  「第8話 さまよえる自殺者」投稿者・東京都 匿名希望さん

『第9話 憑かれた町』投稿者・八王子市 匿名希望さん 画・市川みなみ ’89『ハロウィン』秋の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載

『霊のうごめく家 他』画・みつきけい ’89『ハロウィン』秋の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載 
 「第10話 霊のうごめく家」投稿者・山口県 陽子chan ※幽霊屋敷
 「第11話 浮かぶ首」投稿者・神奈川県 戸倉明子さん

『男の影 他』画・田中夕子 ’88『ハロウィン』12月号, 5月, 10月号 掲載
 「第12話 男の影」投稿者・大阪市 匿名希望さん
 「第13話 越える人」 ※路上の怪
 「第14話 トイレの前の女」投稿者・東京都 佐藤順さん ※トイレの怪談
 「第15話 笑う男の子」
 「第16話 川」 ※霊感少女
 「第17話 開かずのトイレ」投稿者・新潟県 松本広美さん ※トイレの怪談
 「第18話 影」投稿者・大阪市 匿名希望さん ※トイレの怪談
 「第19話 霊園へ向かう女」 ※路上の怪



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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Posted byserpent sea

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