『ほんとにあった怖い話〈6〉読者の恐怖体験談集』

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serpent sea
ほんとにあった怖い話〈6〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1989 ハロウィン少女コミック館

 突然作画レベルが爆上げした第6巻。作画はこれまで徐々に向上してきてはいたのだが、この巻は別格な感じ。無性に突っ込みたくなるような作画はほとんどない。今回は「わたしだけが見た」「わたしだから見れた」「霊感がある」「予知能力がある」という投稿者のオンパレードで、霊感少女スペシャルといった趣き。心霊現象の主体をあっち側にではなく、どこまでも自分の内なる才能に求める霊感少女たち。作画の向上した本書では、そんな彼女たちの醸し出す微妙なニュアンスをばっちり表現している。

 なかでもSAOをはじめとする異世界転移ものの先駆的な作品『遥かなる異郷ガーディアン』の市川みなみによる「第3話 霊感少女夜話」は、タイトルからして全力で霊感少女。投稿内容自体はわりと他愛ないものなんだけど(←けどしっかり怖いです)、少女マンガ調のコマ割りから生じる絶妙の間と、後輩「今、いたでしょ」、先輩「うん……」って感じのそっけないセリフで、二人の霊感少女の交感が見事に表現されている。文章では上手く説明できなくてモヤモヤしてしまうのだが、アリが触角を摺り合わせて体表成分を確認し合うような、独特の雰囲気が秀逸。滲み出る優越感と、無駄に秘密めいてるところがこそばゆい。小林一生の「私には見える」の三つのエピソードも、投稿内容自体に目新しさはないものの、画風そのものがいい具合に歪んでいて非常に不気味だった。

 この巻には霊感少女もののほかに、異世界ものが3編収録されている。どれも投稿者がなにかの拍子に別の世界に迷い込んでしまうという話だ。市川みなみの「第1話 もうひとつの街」で投稿者が迷い込んだのは無人の新宿。わけの分からない状況に戸惑う投稿者の心情と、空虚な町の不気味さが端的に表現されている。またほんの一コマ、二コマで、投稿者がそこで遭遇した者の正体が、解釈の余裕を残しつつ暗示されているのもよかった。「第5話 ゴースト・クラッシュ」は以前投稿された話の前日談という変わりダネ。これも友人と旅行に行った投稿者が、全員揃って現世とは少しずれた世界に迷い込むという異世界ものなんだけど、さすがにエスカレートし過ぎ。大冒険過ぎて実話怪談の味わいに欠ける。作画は濃いめの少年マンガのタッチでかなり濃いめ。

 収録作は少ないものの、霊感少女でお腹いっぱいって感じの一冊。



『もうひとつの街 他』画・市川みなみ ’89『ハロウィン』初夏の増刊『ほんとにあった怖い話』, ’88『ハロウィン』4月号 掲載
 「第1話 もうひとつの街」投稿者・神奈川県 匿名希望さん ※異世界・霊感少女
 「第2話 父帰る」投稿者・静岡県 P.N.さくじろー
 「第3話 霊感少女夜話」投稿者・和歌山県 藤本聡子さん ※霊感少女

『第4話 死者の想い』投稿者・大阪府 匿名希望さん 画・瀧清流 ’89『ハロウィン』初夏の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載 ※霊感少女

『第5話 ゴースト・クラッシュ』投稿者・東京都 若林万里子さん 画・しどりまさあき ’89『ハロウィン』初夏の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載 ※路上の怪・異世界

『夢の中でも死にたくない 他』画・三浦尚子 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第6話 夢の中でも死にたくない」投稿者・愛知県 穂高麻里さん(仮名) ※霊感少女・異世界
 「第7話 霊体験家族」投稿者・新潟県 木村圭子さん(仮名)
 「第8話 北枕は死人の枕」投稿者・石川県 道上こずえさん

『遊ぶ女の子 他』画・小林一生 ’88『ハロウィン』8,11月号 掲載
 「第9話 遊ぶ女の子」投稿者・新潟県 有馬洋子さん(仮名) ※路上の怪・トイレの怪談
 「私には見える」投稿者・北海道 松本章子さん(仮名) ※霊感少女
  「第10話 予知」
  「第11話 金縛り」
  「第12話 幽体離脱?」



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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Posted byserpent sea

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