『ほんとにあった怖い話〈5〉読者の恐怖体験談集』

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serpent sea
ほんとにあった怖い話〈5〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1989 ハロウィン少女コミック館

 前巻の感想では「相変わらず少年、少女マンガのタッチが混在」と書いたけど、この第5巻はぐぐっと少年マンガに寄っている。話数が減った分、シチュエーションだけでは終わらない長めの話が多い。突飛な話はほぼなくなって、作画も含めて非常に安定した印象。
 そんななかにあって「第四話 連れてこないで」の作画は、投稿者のそらまめちゃんが気の毒になるほどの崩壊ぶりだった。普段なら作画の出来不出来はあまり気にならないのだが、ちょっと異例なほどの崩れっぷりに内容がちっとも頭に入ってこなかった。それから目立って崩れたりはしていないものの「第九話 霊感家族三代記」はトーンを多用したアッサリ作画で、母子三代にわたるキツメの心霊体験とは全然似合ってないように感じた。投稿内容が優れているだけに惜しい。

 この巻にはジャパニーズホラーの先駆的な作品「ほんとにあった怖い話・シリーズ」(1991〜1992)で映像化されたエピソード、「第三話 ひとりばっちの少女」「第十三話 婆 去れ!!」が収録されている。鶴田法男監督による非常に有名なオリジナルビデオのシリーズだ。以前書いたようにほとんど顧みられることのないこのアンソロジーだが、もしもこの本がなかったら「ほん怖シリーズ」に続く『女優霊』(1996)『リング』(1998)『回路』(2001)「呪怨」(2000〜2003)などの作品群は存在しなかったか、もっと異なった形になっていたもしれない。そう考えるとこの本の見かけによらない重要さがよくわかる。(ここで映像版との比較記事でも書ければよかったんだけど、ちょこちょこ見てたフジテレビのドラマ版と記憶が混ざってしまってるし、今VHSが見れない環境なので割愛します。)

 ところで「第十三話 婆 去れ!!」のエピソードは、「この話を聞いた人のところにドアをノックする霊が出る。なにも考えずにドアを開けてしまうと、死んでしまうと言われている。ただしそのときに「婆 去れ!!」と唱えた人はセーフ」というシンプルなもので、近年「友達の知り合いが〜」と前置きして語られる典型的なフォウフとなっている。「この話」というのがこの一連の話そのものなのが面白い。「婆 去れ!!」という呪文については由来もなにもさっぱり分からないが、もともとは怪談本編にあたる「この話」が存在していて、呪文はそれに由来するものなのかもしれない。怪異に対抗するための呪文といえば、メジャーなところで口裂け女の「ポマード」が思い出されるが、あの場合はウワサが発生した初期の段階では呪文なんてなくて、それが伝播していく過程で付加されたものだったばずだ。この「婆 去れ!!」も「この話を聞いたら~」という無慈悲なオチに対抗すべく発想されたものが、本編そっちのけで伝播されたのだろうと思う。子供って根強い。
 またこの怪談は、この本、もしくは映像作品をきっかけに広く語られるようになったものと推察されるが、雑誌にこのエピソードが掲載されるよりも以前に、呪文こそ違うもののほぼ同様の話を実際に聞いたことがある。思いのほか古くから語られていた話なのかもしれない。

 というわけで粒揃いの第5巻、上記の「第三話 ひとりばっちの少女」「第十三話 婆 去れ!!」のほかにも、古典的な人形怪談「第八話 のびる髪」、二階が閉ざされた家に暮らす少女の体験「第七話 二階がこわい」、霊感少女モノの「第十五話 おじいさんの顔」などが印象に残った。



『冬の日の親子』画・小林一生 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第一話 語りかける姉」投稿者・神奈川県 大野陽子さん(仮名)
 「第二話 冬の日の親子」投稿者・兵庫県 安藤若菜さん(仮名) ※駅の怪談

『第三話 ひとりばっちの少女』投稿者・茨城県 柳瀬茉莉子さん 画・瀧清流 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載 ※プールの怪談

『冬木立幽霊模様』画・亜木蒼子 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第四話 連れてこないで」投稿者・東京都 そらまめちゃん
 「第五話 乗せて…ください」投稿者・大阪府 永田幸子
 「第六話 いじめないで」投稿者・埼玉県 松延志貴 ※学校の怪談

『二階がこわい』 画・有久祐子 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第七話 二階がこわい」投稿者・新潟県 中村千代子さん(仮名) ※幽霊屋敷
 「第八話 のびる髪」投稿者・熊本県 木下聡子さん(仮名) ※人形怪談

『霊感家族三代記 他』画・市川みなみ ’88『ハロウィン』 ’89『ハロウィン』冬の増刊『ほんとにあった怖い話』, ’87『ハロウィン』12月号 掲載掲載
 「第九話 霊感家族三代記」投稿者・東京都 菅原彩子さん
 「第十話 ブティックの幽霊」投稿者・愛知県 匿名希望さん(36歳・女性)

『いとこが私の身代わりに!? 他』画・佐和田和生 ’87『ハロウィン』10月号 掲載
 「第十一話 いとこが私の身代わりに!?」投稿者・山下真代さん
 「第十二話 プールはこわい!?」投稿者・千葉県 三浦由紀子さん ※プールの怪談

『婆 去れ!!』 画・田中夕子 ’88『ハロウィン』1,2月号 掲載
 「第十三話 婆 去れ!!」投稿者・埼玉県 茂手木裕美さん
 「第十四話 部屋の主」投稿者・神奈川県 匿名希望さん
 「第十五話 おじいさんの顔」投稿者・東京都 T子さん ※守護霊・背後霊

『第十六話 AM1:00の老人』投稿者・三重県 ナイト・ロアーさん 画・きむらひでふみ ’88『ハロウィン』2月号 掲載



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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Posted byserpent sea

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