『アダムとイブ VS 食人族』

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serpent sea
 アダムとイブ VS 食人族

 録りっぱなしにしてた冬アニメのなかから、繰り返し見そうなやつを選んでRECBOXに移動している。ぼちぼちスタートした春アニメの分の、レコーダーのスペースを確保するためだ。これが結構時間がかかる。そのあいだはレコーダーが使えないし、そんなときに限ってCSでも全然いいのをやってない。そこですっかり再生専用機と化してるPS3で、最近買った映画を何本か見た。そのうちの一本が変な映画だったので、珍しく映画の感想を書こうと思う。

 見る前から見終わった後の気分がなんとなーく予想できる映画がある。作品の出来不出来ではなくて、気分。自分にとって食人族系の映画はその代表格だ。見終わってもまず何も残らない。感想もない。強いて言えば、秘境っぽさがよく出てたなーとか、あのシーンほかの映画でも見たなとか、そんな感じ。心にぽっかりと穴の開いたような……って言うとマイナス評価みたいだけど、スッキリ、清々しい気分になる。そんなわけで食人族っぽいのを見かけるとつい買ってしまう。

 この映画もタイトルに「食人族」って入っていたので、とりあえず何も考えずに買ってみた。「食人〈帝国〉」ってなってても小さい一部族の話だったりするのが当たり前の食人族業界。アダムとイブとか言っても、きっと普通の男女二人が密林に迷い込んで、食人族に追いかけ回される話なんだろうなあ、なんて思っていたら大違いだった。ほんとに「アダムとイブ」がはじまってしまった。創世記だ。タイトルバックの食人族らしからぬ壮大さに違和感があったのだが、あれは天地創造のシーンだったらしい。

 ストーリーは最初のうち創世記を適当に改変しつつも、大まかになぞりながら進んでいく。問題は素っ裸で動物の交尾とか観察してたアダムとイブが、楽園を追放されて以降の展開。二人が追放されたエデンの東には、原始人っぽい人類が何種か群棲していて、日夜死闘と交尾を繰り広げているのだった。そんな原始人に襲われたり、助けられたりしながら、二人は(なぜか)海を目指して歩きはじめる。で、東映のオープニングにそっくりな荒磯に到着。終わり!

 途中原始人とのntr展開や、原始人とのバトルはあるものの、肝心カナメの食人シーンがない。いや正確にはないこともないのだが、カメラがめっちゃ引いてたり、犠牲者がギャッと叫んだところでカットなんてシーンばっかり。大半はアダムとイブの二人が、大自然のなかで揉めたりいちゃついてるシーンで占められている。いちゃいちゃのあいだに軽く原始人って感じ。
 イブの性格設定についても少し触れておきたい。端的に、柔らかめに言うと、何でもいいって言うから中華にしようとすると「中華はちょっと…」って言い出す人。あれのキツい版。終始ワガママ放題、そのせいで二人が死にそうになってんのに、反省の色もない。しかも全体にフンワリしたトーンのなかで、イブのワガママっぷりだけが妙にリアルで、メンタル的には完全に現代人のそれだ。確実に作り手の女性観が反映されてるな、これ。

 とまあこんな風に書いてくると見どころも何もあったもんじゃないって感じだけど、特撮ファンにはちょっと嬉しいサービスシーンがある。卵を盗んだアダムとイブを襲う怪鳥(体長1.5mくらい)と、唐突に転がってくるレイダースっぽい岩石が、なぜかストップモーションアニメで表現されているのだ。ライブシーンとの合成も頑張っていて、なかなかの出来映え。この二つのシーンが作品前半に立て続けに出てくるから、後半にもスゴイ期待できる! なんて思いつつわくわくして見ていたら、出てきた熊はとんでもない代物だった。着ぐるみがヤバすぎるうえ、なんかちっこい。着ぐるみのヘボさで有名な『ジュラシック・アイランド』(1948)のケラトサウルスに勝るとも劣らない(劣るとも勝らない)造形&演出。こっちはチョイ役なのがせめてもの救いか。

 そんなわけでろくな食人シーンもないのに、なぜか水中出産で、赤ん坊の頭ががばっとでてくるシーンがあったりする不思議な作品だった。もしかするとマジで生命の尊さとか、ありがたい感じのことを歌い上げようとしてたのかもしれない。主人公の二人が全裸、もしくはフンドシっぽいパンツしか身に着けてないにも関わらず、全然エロくないし。前にちょっとだけ感想を書いた『ラスト・カニバル 怪奇! 魔境の裸族』(1973)(←前の記事へのリンクです)では、例えるなら「変身するのがメガネの方」って感じの微妙なもやもや感が残ったが、この作品の場合はアルファロメオ注文したらα・アジールが届いてしまったかのような、諦めというか、清々しさを感じることができた。画質はあまり良くないが、環境映像としては悪くないかもしれない。



『アダムとイブ VS 食人族』("ADAMO ED EVA, LA PRIMA STORIA D'AMORE"/"ADAM AND EVE VS. CANNIBALS")
 1983 イタリア/アメリカ
 監督:エンツォ・ドリア/ルイジ・ルッソ
 製作:エンツォ・ドリア
 出演:マーク・グレゴリー/アンドレア・ゴールドマン
 上映時間:75分


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Posted byserpent sea

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