南村喬之『咆哮の世紀 南村喬之怪獣画集』

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 南村喬之『咆哮の世紀 南村喬之怪獣画集』朝日ソノラマ 1993

 1960年代後半に朝日ソノラマから出版された刊行物のなかから、挿絵・絵物語画家の著者よるとくにかっこいい絵柄をピックアップして再編集したもの。帯にある「第1次怪獣ブーム」の洗礼を受け、リアルタイムで原書に接した人にとっては、きっとたまらない一冊だと思う。収録された絵がことごとくかっこいいので、つい「とくにかっこいい絵柄をピックアップ〜」なんて書いてしまったが、残念ながら自分は復刻本を3冊持ってるだけで、下記の原書のなかには見たこともない本が多い。ひょっとすると著者の作品はかっこいい絵ばっかりなのかもしれない。この本を見る限りその可能性は大いにあると思う。

 元になった刊行物は『ウルトラマン・三大怪獣対決 恐怖の怪獣島』(1966)『怪獣大図鑑』(1966)『大魔神逆襲』(1966)『妖怪大図鑑』(1967)『怪獣解剖図鑑』(1967)『宇宙怪獣図鑑』(1967)『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967)『ガメラ対大魔獣ジャイガー』(1970)『怪獣大襲撃』(1970)『怪獣決闘大図鑑』(1971)『ガメラ対深海怪獣ジグラ』(1971)『大怪獣ガメラ』(1971)。以上12冊のなかから抜き出されたイラストが、70ページほどにぎゅーぎゅー詰めで収録されている。もとの本と比べるとロゴや文字が入ってない分、絵を見るにはもってこいだ。

 ※そんな本の中身を下の「続きを読む」から少しだけ紹介します↓


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 著者が最初に描いた怪獣はウルトラ怪獣だったらしい。これは1966年に出た『怪獣大図鑑』の表紙になった絵で、結構有名な一枚。『怪獣大図鑑』はかなり古書価のついてる本なんだけど、1997年に『妖怪大図鑑』『怪獣解剖図鑑』と3冊セットで復刻されているのでそっちを持ってる人は多いかもしれない。ソノシートを収録したCDも付いてて豪華→『大復刻怪獣大図鑑』(Amazonへのリンクです)

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 米軍が迎え撃つめっちゃかっこいい「キングギドラ」。本書には複数のキングギドラが収録されているが、どのギドラも漏れなくかっこいい。これは1970年の『怪獣大襲撃』に収録されたもの。本書のカバーには『怪獣大襲撃』の表紙と同じイラストが採用されている。
 第一次怪獣ブームは『ウルトラQ』をきっかけに起こり、番組終了後も引き続き同TVシリーズがブームの牽引役となった。劇場からTVへという、映像娯楽の中心の移行を象徴するかのような社会現象だが、当時TVで怪獣を見てた子供たちにとって劇場の怪獣はどんな存在だったのだろう。

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 1968年頃に収束したとされる第一次怪獣ブームに続いて、『ゲゲゲの鬼太郎』の人気をきっかけに「妖怪ブーム」が起こる。鬼太郎は当時『週刊少年マガジン』に連載中で、アニメ化もされている。大映が『妖怪百物語』(1968)『妖怪大戦争』(1968)などを矢継ぎ早に公開したのも同じころだ。
 この絵は『妖怪大図鑑』に収録された妖怪&幽霊。1967年刊行。当時の児童書には妖怪や幽霊をファンシーにカスタムせずに、怖いものは怖く描くという姿勢が見てとれる。立風書房から出てたジャガーバックスの超怖い本をはじめ、相当残酷だったりグロかったりするのだが、当時の世相にはそういったモノを受け入れる寛容さがあったのだろう。そこに訓話的なものがあるならば当然な気もするが。

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 大迫力の「ギロン」。めちゃめちゃなデザインの怪獣だが、とにかくかっこいい。一匹飼えるとしたらこいつを飼いたい。「大悪獣」という二つ名もいかしてる。著者が油の乗りまくってたころの作品で、著者自身印象的な作品としてこの絵をあげている。ガメラ関連には迫力のある絵が多く、とくにこの絵が載ってる『怪獣決闘大図鑑』からの収録分は傑作揃いだ。「ガメラ」もガメラらしくしっかり流血。

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 裏表紙。山海の珍味てんこ盛りの、ミックスフライ定食のような豪華さ。「ガイラ」の躍動感。表紙のイラストとは続き絵になっている。

 著者は日本通信美術学院で美術を学び、従軍中も、戦後シベリアで抑留されてるあいだも、ずーっと絵を書き続けていたらしい。カオスで泥臭いベクトルを邁進し、サービス精神と力強さに溢れた作風には、怪獣のモチーフがとてもよく似合っている。さすがに一大ブームの一翼を担っただけあって、当時のことを全然知らない世代の読者が見ても、そのころの熱気が伝わってくるような素晴らしい作品の数々である。著者は1997年逝去、享年78歳。


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Posted byserpent sea

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