手塚治虫『ミクロイドS〈3〉』完

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 手塚治虫『手塚治虫漫画全集 MT185ミクロイドS〈3〉』完 講談社 1981

 前巻の最後でジガーに拉致されたマモルと担任のノラキュラは、小笠原のどこかの島に連行される。ギドロンが占拠したその島では、人間そっくりの「生ける人形」が大量に製造されていた。海中に身を投じてからくも脱出に成功したマモルたち。しかしマモルの父親の美土路博士は、ミクロイドを匿ったとして暴徒に襲撃され、今まさに殺されようとしていた。そのとき轟音が響きわたり、大地震が発生する。地虫の大群が地下を移動しているのだ。どうにか逃げ延びた美土路博士はジガーと会見し、侵攻を止めるように要請するが失敗。研究所にはルンペンや鑑別所から脱走してきたスケバンたちが押しかけ、事態は混沌としていく。そんな状況下でギドロンの本格的な地上侵攻がはじまる。

 かなりカオスな最終巻。収拾つかなそうだなーと思いながら読んだ通り、限りなく俺たたな最終回を迎える。びっくりするのはヤンマたちミクロイドが全然出てこないこと。暴徒の襲撃時に博士のもとを去ってからは、最後のシメに登場するだけで、主人公はすっかり美土路博士御一行になっている。各巻ごとに主人公が変わっているような印象だ。
 この作品で著者は、ちょっと考えただけでも難易度高そうな、人と虫というスケールの全然異なるキャラを絡ませつつ、その両方を主人公として立てるという荒技に挑戦している。スケールの異なる視点がランダムに切り替わるから、そのたびに虫がスウォームだったり、萌えキャラだったりするから大変だ。大襲来の際に人とミクロイドの絡みが極力押さえられているのも、視点を人間側に固定するための措置だろうと思う。ヤンマたちが出ないのはやっぱ寂しいけど。

 あとがきで著者は「テレビものは自由奔放な展開ができず、あまりのらないのです。ぼくの原作であるにせよ、漫画としてかきにくいことはたしかです」なんて言っていて、この作品をあまり気に入ってない様子。結局ストーリーも虫側の恋愛事情みたいになことに収斂してしまうのだが、それでも面白く読ませるのはさすがで、第1巻の冒頭の砂漠のシーンや、前巻のダムのバトルなど印象的な場面も多い。またあとがきではノラキュラ先生にしか触れられてないが、おそらく著者の顕著なフェチのひとつで、名傍役の人間モドキ系のキャラも「生ける人形」として大挙して登場している。あと5〜6冊くらい読みたい気もするが、どこまで行っても人類側には打つ手がなさそうなので、このあたりで終わるのが適当なのかもしれない。


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