香山滋『ゴジラの逆襲』

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 香山滋『ゴジラの逆襲』(『香山滋全集〈14〉魔空要塞』三一書房 1996 所収)

 魚群探見中にエンジンの不調で不時着した同僚の小林を救助するため、岩戸島に向かったパイロットの月岡は、そこで格闘するゴジラ&トゲトゲの付いた亀のような怪獣を目撃する。二人の報告によって「アンギラス」と命名された新怪獣、そして二頭目のゴジラに対する対抗策が検討されたが「オキシジェン・デストロイヤー」なき今、人類には成すすべがない。そこで光に反応するというゴジラの習性を利用し、外洋に誘導するという作戦がとられた。大阪では大規模な灯火管制が実施されていたが、その真っ最中に、よりにもよって護送車から逃げ出した囚人によって大火災が発生する。爆炎に導かれたゴジラが、大阪に上陸する。

 前作『ゴジラ』と同様に、この『ゴジラの逆襲』も映画のシナリオをベースに児童向きに書き起こされている。『ゴジラ 大阪編』と表記される場合もあるが(詳しくは『ゴジラ』参照←前の記事へのリンクです)、クライマックスは北海道の近海の神子島だったりする。

 ストーリーは映画をしっかりトレースしていて、セリフもほとんどそのままで採用されている。もちろん例によってフィルムではカットされたシーンや、同じことやってるのに異なったニュアンスで表現されているところもある。なかでも顕著なのが最後の雪崩作戦からエンディングにかけての一連のシークエンスだ。小説版での雪崩作戦の経過は、一番機田島は成功大雪崩発生、二番機は雪崩を発生させるが放射能火焔を浴びて空中分解、三番機は爆撃に成功するものの上昇に失敗して山頂に激突、四番機月岡の爆撃によって発生した特大雪崩で、ついにゴジラは完全に埋没する。4機目の攻撃での勝利だ。これに対して映画はすごい数のF-86が雪崩作戦を決行し、成功したり爆発したりしている。ともに最後のトドメは月岡の攻撃だが、映画ではみんなでどうにかやっつけたって感じなのに対して、小説版ではほぼ月岡の働きによるものって感じだ。絵面が派手な映画も悪くないけど、小説の通り映像化されていれば、『スター・ウォーズ』(1977)エピソード4のデス・スター攻略みたいな爽快感が出たんじゃないかと思う。
 続いて映画では旋回するF-86のコクピットのなかで「小林、とうとうゴジラをやっつけたぞ」と月岡がつぶやき、直後に氷山みたいな神子島をバックに「終」が出て、あっさり気味のエンディングを迎えるが、この小説版には少しだけ続きがある。月岡のつぶやきのあと、場面は北海道支社に移る。小林と彼の恋人の写真の前で合掌するヒロインの秀美たち。雪崩の続く神子島の上空では月岡機が旋回を続け、そこに「やすらぎよそかりよ いまぞかえりぬ……」の『平和への祈り』が流れて、終わり。余韻のある美しいエンディングで、前作との繫がりもより強く感じさせる。雪崩作戦は甲乙つけ難いけど、ラストは小説版の方がいいな。

 それからほんの短いシーンだけれど、映画には少し違和感を感じさせる場面がある。ビルの屋上から大阪の町を眺める月岡と秀美、「小林さん、あなたのこと感心してたわ。大した度胸だって」という秀美に、「バカな。あれは度胸なんて言えるもんじゃないさ、一種の諦めだな」と月岡が応える。このシーン。何気ない会話だけれど、よく分からない。月岡のどんな行動に小林は感心したのか。月岡の言う「あれ」とは?
 実は映画ではカットされてしまったけれど、小説版では冒頭の岩戸島の絶体絶命の状況下で、月岡が小林にタバコをすすめるシーンがあるのだ。さらに上記のセリフのあいだに「あのとき──ゴジラに襲われたとき、あなたタバコをあげたでしょ?」(p.194)という秀美のセリフが入る。これでスッキリ。

 ところで前作『ゴジラ』の感想では書き洩したのだけれど、この正続編を通してとても物足りないところがひとつある。それはゴジラの見た目が全然描写されないところだ。シナリオがベースだし、この作品が世に出たときには、もうみんな映画でゴジラ見て知ってるだろって感じなんだろうけど、奇怪な生物がどんどん出てくる著者の他の作品と比べるとやっぱ寂しい。こういうことは映像作品のノベライズにはよくあることで、最近も『ブレンパワード』というアニメのノベライズを読んだ(おもしろかったです)のだけれど、主役メカの描写が全くなくてびっくりした。

 以下少し映画『ゴジラの逆襲』(1955)について。つい最近までしっかり観たことがなかったのだが、色々な技法が試されていて見せ場の多い楽しい作品だと思う。BGMが極端に少ないかわりに、エンジン音や爆発音などのSEが効果的に用いられている。とくに大阪で灯火管制が実施された直後の、静まり返った夜空にジェット機の轟音だけが聞こえる場面は、これから始まる大破壊の予兆のような不吉さで印象に残った。
 特撮シーンでは大阪湾のゴジラ迎撃時の、ポンポンって感じで炸裂する白い爆煙の合成が、シンプルなわりに効果抜群だった。終始色々な爆発が楽しめる映画だ。そして一番インパクトがあったのが、ゴジラとアンギラスの動き。めっちゃ速い! 生物の俊敏さを表現するために微速度撮影という方法で撮られたのだそうだが、なんだかカクカクしていて、奇しくもストップモーションで撮影されたみたいに見える。おかげで人知の及ばない神がかった雰囲気はなくなってしまったが、超兵器を持たない人類が対抗するにはこれくらいの怪獣具合がほどよいのかもしれない。


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