池田和子『ジュゴン 海の暮らし、人とのかかわり』

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 池田和子『ジュゴン 海の暮らし、人とのかかわり』平凡社 2012 平凡社新書

 海の哺乳類、絶滅危惧種、信じ難いが人魚の元ネタ、鳥羽水族館は昔飼育してるジュゴンと同名のジュンコという名前の女の子に入場特典をつけてた、高丘親王航海記、沖縄、辺野古の基地移設問題、食べられるらしい、でかい、大人しい、珍しいけど地味、つるっとしてる。……思いつくままに書いてみたが、これが本書を読む前のジュゴンに関する知識とイメージだった。われながら乏しいったらない。ところが本書を読み終わった途端、にわかにジュゴンに詳しくなった気分になれる。少なくともうちのマンションでは一番詳しくなったに違いない、と思う。なんせウンコの形状まで知ってるんだから。

 本書にはジュゴンを取り巻く環境から、生態、体の構造、食性、生殖、ウンコの形状までがつまびらかにされている。カラー口絵にはジュゴンの全体、各部、ウンコの画像が、本文にも適宜図や画像が用いられていて、『水産図解』(1889)の「ダコング」(ジュゴンの異名)の図なんてのも載っている(※)。辺野古の基地移設問題にも触れられているけど、あくまでもジュゴンを取り巻く環境のひとつとしての扱いで、それよりも埋め立てや造成、畜産排水、生活排水などによって、日々状況が悪化し続けているということがよく分かる。

 ※『水産図解』は独立行政法人水産総合研究センターの国書資料デジタルアーカイブで見ることができる。「ダコング」は下巻の最初の方(00007.jpg)に載っている。どうしてこうなったって感じの、全身に毛の生えた背びれのある動物。↓

 藤川三渓著『水産図解』井上神港堂 1889 上下巻
 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/book/D_archives/116_H90_1.html

 ジュゴンに関する伝説や「ジュゴン漁」についても、「第5章 人とジュゴンのかかわり」としてまるまる一章が割かれている。ジュゴンと人魚との関係についての著者の見解は「人魚のモデルはジュゴンであるとする説が広く知られている。見るからに人魚ではないジュゴンの外見を見るたびに「本当だろうか」と疑いたくなるが、まあ、何しろめでたい話なので、あえて否定的に話を進めるのはやめておく」(p.138)って感じで、これにはもう激しく同意。その否定的に進めた話というのもぜひ聞いてみたい。ジュゴンって暖かい海の動物だし、なにより不細工だし、一体どういう経緯でモデルってことになったんだろう。

 この本は日本でも数少ないジュゴンの研究者によって書かれたもので、前述の第5章や、古生物やステラーカイギュウについて言及される「第4章 ジュゴンの仲間と進化の歴史」を目当てに読みはじめたんだけど、最初から終わりまでずーっとおもしろく読めた。とにかく文章が分かりやすくて上手い。読んでるうちにどんどん興味が湧いてくる。著者のジュゴンに対する深い思いが伝わってくるのも良かった。ジュゴン以外の色々な生き物に関しても、こんな感じの手軽で楽しい本があればいいのに。

 ジュゴンを日本で唯一飼育展示している鳥羽水族館のサイトでは、ジュゴンの鳴き声とおならの音を聞くことができる。鳴き声はチューチューとかピヨピヨって感じ。↓

 鳥羽水族館
 http://www.aquarium.co.jp/

 鳥羽水族館「人魚の海」ジュゴンについて。鳴き声、おならの音。
 http://www.aquarium.co.jp/kannai/ningyo.html

 鳥羽水族館「フォトギャラリー」ジュゴンのアップの画像など。
 http://www.aquarium.co.jp/gallery/


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