レイ・ブラッドベリ『筋肉男のハロウィーン』

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serpent sea
 

 レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)著, 吉野美恵子訳『筋肉男のハロウィーン』("Heavy Set"『筋肉男のハロウィーン 13の恐怖とエロスの物語Ⅱ』文藝春秋 1996 文春文庫 所収)

 ブラッドベリのハロウィンもののなかでも、退廃的な雰囲気と美しい文章でとくに印象的なのが散文詩のようなこの作品。めっちゃインパクトのあるタイトルだが、原題は「Heavy Set」とシンプルで象徴的。以前サンリオSF文庫から出てた短篇集『ブラッドベリは歌う』("I Sing The Body Elactric!" 中村保男訳)には『強力君』というタイトルで収録されていた。

 有り余る時間と活力をただひたすら筋トレに費やし、大人になりきれず人付き合いもろくにできないまま30歳になった通称「筋肉男」と、その母親のハロウィンの夜の一幕。とくになにが起こるわけでもなく、彼ら母子がずっと繰り返してきた痛々しい日常の断片が、静かに緊張感たっぷりに描かれている。
 主に息子を病的に溺愛する母親の視点で書かれているからか、この作品には「マトモ」に感じられるところがひとつとしてなかった。家庭は間違いなく機能不全に陥っているし、母子は濃密な、危うい依存関係にある。息子はパンパンに張りつめた風船玉のようで、いつ暴発するとも限らない。母親はその危うさを認識しつつも息子の鍛え上げられた肉体を愛おしく眺め、息子と同じベッドのなかで、息を殺し、目をとじ、耳をそばだてながら祈る。すべてが歪んでいる。なんとも言えない不快感が尾を引く。

 ネタっぽいタイトルから受ける印象とは異なって、内容はとても重くメランコリック。これならいっそ悪魔が降臨したりマスクの怪人による大虐殺が起きたりするハロウィンの方がよっぽどスッキリする。うっかり読むと予期せぬダメージを受ける。


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Posted byserpent sea

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Re: 書評のお願い

>>玉村さま

はじめまして。
このような辺鄙なブログへのご訪問、コメントありがとうございます。
自叙伝の出版おめでとうございます。

ご覧のように非常にとり散らかっており、即応することが困難なため、
大変心苦しいのすが現在ご依頼はお断りさせていただいています。
また感想を書く場合は、自ら貴著を購入したうえで書かせていただきますので、
その節はどうかよろしくお願い致します。

serpent sea

2014/11/03 (Mon) 20:46 | EDIT | REPLY |   
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2014/11/01 (Sat) 11:35 | EDIT | REPLY |   

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