江戸川乱歩『黄金仮面』

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 江戸川乱歩『黄金仮面』(『江戸川乱歩推理文庫〈11〉黄金仮面』講談社 1987 所収)

 天知茂の明智小五郎が大活躍する「江戸川乱歩の美女シリーズ」については度々触れているが、この作品も『江戸川乱歩の黄金仮面 妖精の美女』というタイトルでドラマ化されている。ヒロインの不二子を『水戸黄門』の「お銀」役の由美かおる、黄金仮面ロベールを『水戸黄門』の「格さん」伊吹吾郎が演じている。ドラマの内容はさておき、黄金仮面のマスクの絶妙な造形については少し書いておきたい。原作を踏襲すれば「FSS」の「ハインド・キル」のマスクっぽくなりそうなものだが、どういう経緯であんなふうな形状になったのか。「七色仮面」の顔面をもっとなまなましく邪悪にして、ムロタニ・ツネ象の「地獄くん」のカールした前髪をぺたっとくっ付けた感じ。カラーはもちろんゴールド一色だ。伊吹吾郎の顔をディフォルメしたように見えなくもないし、実はありものだったりするのかもしれないが、江戸川乱歩&井上梅次の世界観にドンピシャリの素晴らしいセンスだ。めっちゃオリエンタル。とりわけでっかいカタツムリを貼付けたような前髪は、静止画像で何度も確認してしまうほど気になる造形である。

 この『黄金仮面』は以前感想を書いた『蜘蛛男』(←前の記事へのリンクです)の大ヒットを受けて、『蜘蛛男』が掲載された『講談倶楽部』よりも、さらに一般向けの雑誌『キング』に連載された作品だ。一般向けということでお得意のエログロや本格的な推理ものの要素はほとんど除外されて、巷を賑わす怪盗「黄金仮面」と明智探偵のバトルに終始する健全な冒険活劇になっている。ある意味「少年探偵シリーズ」よりも健全かもしれない。とはいえサービス精神満点の著者らしく、湖上のチェイスやポーの『赤死病の仮面』を模した部屋での殺人などなど、読者を飽きさせない工夫が随所に凝らされている。とくに冒頭「産業塔」における黄金仮面の、人間臭くジタバタした逃走劇は何度読んでも素晴らしい。喜劇っぽく、かつサスペンスフルな名シーンだ。それから黄金仮面の正体にも驚かされる。残念ながらモーリス・ルブランの作品は読んだことがなかったのだけれど、読んでれば一層この作品を楽しめると思う。


 江戸川乱歩の黄金仮面 妖精の美女 [DVD]』キングレコード 2005


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Posted byserpent sea

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