伊藤潤二『うずまき 第14話 蝶』

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 伊藤潤二『うずまき 第14話 蝶』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 サブタイからはストーリが全くうかがい知れない、シフトチェンジって感じのエピソード。

 第12話で台風1号が上陸して以降、黒渦町には2号、3号……と立て続けに六つもの台風が上陸、しかも上陸直後に消失するという異常な現象が生じていた。町との連絡は完全に途絶え、外部からは被害状況すら把握できない。そんな黒渦町に赴いた東洋テレビの取材班の丸山(♀)は、町に入るなり竜巻に遭遇し、マスコミ他社のものとおぼしきヘリが墜落するのを目撃する。
 町はすっかり破壊し尽くされあちこちに腐乱死体が転がっている。巨大な渦を巻くトンボ池に、たった一人で辿り着いた丸山は、そこで柱に縛り付けられた三人の男の子を救出する。ところが開放された途端、三人は吐く息で強烈な竜巻を起こし、さらに町を破壊しはじめるのだった。
 凶暴な子供たちからどうにか逃げ延びた丸山は、瓦礫のなかで買い物かごを持った桐絵と出会う。桐絵によると、黒渦町では人のちょっとした素早い動作が大きな竜巻を引き起こすらしい。「小さな超の羽ばたきが、地球の裏側に大嵐を引き起こす」(p.447)、まるでバタフライ効果だ。おそらくトンボ池が呑み込んだ六つの台風のエネルギーの影響ではないかというのだが……。
 
 瓦礫の山と化した黒渦町。住人は前話に出てきた長屋のなかで、ギューギュー詰めになって暮している。町中に点在する長屋だけは竜巻の影響を受けず、なぜか破壊を免れているらしい。むちゃくちゃながらギリギリキープされてきた日常が、粉々に破壊されてしまっている。そんな状況のなか、買い物かごを持ってふつーに登場する桐絵の異常さがいつも以上に際立っているのは、このエピソードが外部からやってきた丸山嬢の視点で描かれているからだろう。
 こうなってしまってはもう後戻りできそうにない。これ以降ストーリーは瓦礫のなかのサバイバルが中心となる。

 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。


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Posted byserpent sea

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