『ほんとにあった怖い話〈1〉読者の恐怖体験談集』

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serpent sea
ほんとにあった怖い話〈1〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1989 ハロウィン少女コミック館

 以前朝日ソノラマから出てた「ホラー・オカルト少女マンガ誌」『ハロウィン』。残念ながら1995年に休刊してしまったが、雑誌レーベル「ハロウィン少女コミック館」はオカルト・ホラーに特化した大量のラインナップを誇り、作家陣には伊藤潤二、楳図かずお、御茶漬海苔、つのだじろう、山本まゆり、山岸凉子といった錚々たる顔ぶれが並んでいた。現在では『ハロウィン』の増刊号だった『眠れぬ夜の奇妙な話』が、タイトルや出版社変更などの様々な変遷を経て雑誌『Nemuki+』(朝日新聞出版)として隔月発行されている。

 そんな「ハロウィン少女コミック館」のなかでも、この『ほんとにあった怖い話』シリーズは、全30巻(作家編、チャネリング体験記等を除く)という巻数のわりに注目度が低いというか、あまり顧みられることがない。うちの近所のBOOKOFFでは、ちょっと前まで百円の棚にずらっと並んでたりしたのだけれど、90年代の終わりごろに出た「新装版」でさえ、最近では見かけなくなってしまった。今後も傑作選くらいは出るかもしれないが、なにかのはずみで再評価&全30巻まるっと復刊なんてことにはまずなりそうにない。このまま静かに忘れられていくのだろうけど、やはりなんとなく寂しい。幸い手元には全巻揃っているので、収録された「読者の恐怖体験談」のリストを作ってみることにした↓(下の方にちょこっとだけ感想があります)。



『消えた部屋の怪!? 他』画・近石雅史 ’86『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第1話 障子の向こう側」投稿者・東京都 植田あゆみさん ※旅先の怪談
 「第2話 学校の浮遊霊?」投稿者・東京都 植田あゆみさん ※学校の怪談
 「第3話 恐怖の四人ゲーム」投稿者・神奈川県 広尾かよさん ※四隅の怪
 「第4話 霊界探訪???」投稿者・青森県 熊谷雪絵 ※コックリさん
 「第5話 消えた部屋の怪!?」投稿者・埼玉県 つるかめ ※旅先の怪談

『学校は恐怖にみちて…』画・亜木蒼子 ’86『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第6話 うしろの正面だあれ!?」投稿者・福島県 ゲゲゲのたか子さん ※学校の怪談
 「第7話 鏡の中の少女」投稿者・鹿児島県 M²さん ※学校の怪談
 「第8話 きもだめしの夜」投稿者・千葉県 一樹亜紀羅さん ※学校の怪談
 「第9話 昼下がりの黒い顔」投稿者・新潟県 藤野瑞穂さん ※学校の怪談

『こっくりさん三話』画・鹿野景子 ’86『ハロウィン』『ほんとにあった怖い話』掲載
 「第10話 天井から落ちる生首!?」投稿者・千葉県 匿名希望さん ※コックリさん
 「第11話 こーゆーふーにとり憑かれたの」投稿者・兵庫県 高3・なっちゃん ※コックリさん
 「第12話 事故死した女の子の霊が!?」投稿者・広島県 優子さん ※コックリさん

『本が招く幽霊 他』画・市川みなみ ’86『ハロウィン』8月号 掲載
 「第13話 近づく足音」投稿者・新潟県 佐藤千恵子さん
 「第14話 本が招く幽霊」投稿者・栃木県 匿名希望
 「第15話 襲ってくる手首」投稿者・埼玉県 匿名希望

『岡田有希子TV現象 他』画・佐和田知生 ’86『ハロウィン』9月号 掲載
 「第16話 岡田有希子TV現象」投稿者・千葉県 田中美由貴
 「第17話 旅館はこあい!!」投稿者・東京都 やまもとたつひ子 ※旅先の怪談
 「第18話 死んだ兄がボクを……!!」投稿者・茨城県 伊吹隼人

『宇治川ラインの怪!? 他』画・とりのささみ ’86『ハロウィン』10月号 掲載
 「第19話 身内の霊を見た!!」投稿者・東京都 森川明子さん
 「第20話 宇治川ラインの怪!?」投稿者・大阪府 青野真奈 ※心霊スポット

『守護霊が私を守ってくれた!? 他』画・南地ゆうこ ’86『ハロウィン』5.6.7月号 掲載
 「第21話 守護霊が私を守ってくれた!?」投稿者・東京都 伊藤美也さん
 「第22話 祖父の死を予知!?」投稿者・青森県 フルカネルリさん
 「第23話 さまよえる足音」投稿者・埼玉県 匿名希望 ※幽霊屋敷
 「第24話 トイレに響く笑い声」投稿者・東京都江東区 永田由美(仮名)さん ※学校の怪談
 「学校の七不思議」投稿者・秋田県 藤井倫子さん/名古屋市 匿名希望さん/千葉県 五十嵐明日香さん ※学校の怪談



 以上、第1巻には全24話+1話が収録されている。最後の「学校の七不思議」は「第24話」と一体なのかどうか微妙な構成。一応区切りはついているのだが「第○話」という表記がない。それから「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。

 このアンソロジーに収録された作品は、すべて読者から送られてきた体験談をもとに、毎回違う作家によって漫画化されている。ただ毎回違う作家によって……ということで、とくに最初の方の巻に顕著なのだが、それぞれの作品の雰囲気はバラバラ、よく言えばバラエティに富んでいる。例えば『消えた部屋の怪!? 他』の近石雅史は、「近石まさし」名義で数多くの成年向け漫画を発表しており、この作品ではエロ描写こそないものの少年漫画っぽい濃いめの作画で、他の作品の雰囲気とは一線を画している。登場する幽霊もストレートにグロテスクな表現だ。こうした作品ごとのバラツキは、この先巻を重ねるごとに徐々に解消されていくのだが、個人的には断片的な実話怪談によく似合っているように思う。

 個々の話を見てみると、対象年齢からさすがに学校の怪談系の話が多く、この第1巻ではコックリさんの関連のエピソードが4話と、かなり目立っている。『こっくりさん三話』のなかの「第10話 天井から落ちる生首!?」で語られるのは、コックリさんとは全く関係のない体験談なのだが、実は投稿者はこの話自体をコックリさんから聞いて応募したというのだからアクロバティックだ。「第16話 岡田有希子TV現象」はTVに幽霊が映ってるの見た! 姉の友人も見たらしい! ってだけの話。岡田有希子が自殺したのは1986年、時代を感じさせる。


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serpent sea
Posted byserpent sea

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serpent sea  
Re: ありがとうございます!

>>敏さん
 お役に立てたようで良かったです!
 佐藤くんは自分が幸福に生きた証である子孫を絶やすことによって、父殺しを償おうとしてたようです。ただそれだと生首を見せる必要はないわけで、この目的の見えない感じが怖いです。劇中ではみなこしか生首を見てないから、彼女に何らかの能力が備わってたと考えた方がいいのかな。
 この話は実話怪談ではありえない死亡エンドのストーリーを、コックリさんを用いて死者に語らせてるところが面白いですね。
 コメントありがとうございました!

2016/11/02 (Wed) 22:26 | EDIT | REPLY |   
敏  
ありがとうございます!

とても細かく教えてくださり、感激です!
謎の少年、佐藤君の行動がとても意味深な内容だったんですね……
みなこは佐藤君の「償い」のために死は免れなかった、ということですね。
佐藤君は普通の人と違うことと、百物語で話した大地主の息子の話と
合わせて考えたらそれとなく彼の正体は見えてくるようですが、彼の「償い」と、
みなこ及びその家族の関係性ははっきりとは明言されていないのが気になるところですね……。
そのあたりは読者の想像に任せられているのかもしれません。
(とりあえず、みなこに降りかかった不幸は佐藤君が原因ってことですよね?)

不完全な状態の漫画を読んだにも関わらず、首の落ちてくるシーン
(特にみなこ自身の)は格別な恐ろしさがありました。
最後の投稿者の体験(そうそうオレンジの光!)やらで
しばらくはトイレのドアを開けるのが怖かったですね。

長い間ずっとモヤモヤしてたのがスッキリしました。
ありがとうございます!佐藤君こわい!

2016/11/01 (Tue) 15:09 | EDIT | REPLY |   
serpent sea  
Re: トイレの生首の件で……

>>敏さん

 病院ってたまに何故これが??って本が置いてありますよね。怖い系の雑誌などもたまに見かける気がします。
 それでは「天井から落ちる生首!?」です↓

「これは「こっくりさん」で降りてきた「みなこ」という14歳の少女から聞いた話です。彼女は自分が死ぬまでの話を話はじめました。

 みなこの家は母子家庭で、父親は10年前に亡くなりました。当時4歳だったみなこには、父親の記憶はほとんどありませんでしたが、ひとつだけ忘れられない出来事があります。それは父親が死亡する前夜に強烈な夢を見たことです。トイレの天井から父親の生首が落ちてくる夢でした。そんなことを思い出しながら、みなこがトイレのドアを開けると、目の前に生首が落ちてきました。母親の生首でした。翌日、母親は死んでしまいました。
 葬儀の間も次は自分の番ではないかと落ち着かないみなこでしたが、参列した生徒の中の「佐藤くん」という少年に声をかけられます。みなこからただならぬ妖気を感じるとのこと。そこで佐藤くんの主導でクラスをあげて百物語を催し、みなこの家族に不幸をもたらす何者かの霊を呼び出すことになりました。その連絡を受けた直後、みなこは怖ろしいものを見てしまいます。それはトイレの天井から落ちてくる自分の生首でした。
 百物語がはじまります。最初は佐藤くんです。「昔、百姓を苦しめていた大地主が息子に殺された。息子は父を追って死のうとしたが、百姓たちが彼を讃えて死なせてくれない。結局彼は幸せな一生を送った」という話。彼の話を聞きながら、みなこは不思議な感覚に陥ります。この佐藤くんという男の子、わたしは彼のことを知らない……。
「つぎはみなこの番よ」という友達の言葉で、みなこは我にかえりました。最後の100話目、みなこの順番が回ってきたのです。みなこは自分が見た、三つの生首のことを話します。ところが話をしているうちに、徐々に視界が暗くなり、息苦しくなってきました。友達はみんなどうしてしまったのか。闇の中から「みなこを連れにきた」という両親の声が聞こえます。そして佐藤くんの声。「……これは幸せに生きてしまった、僕のつぐない……」

 この話を聞いた投稿者は、トイレの天井を見上げるクセがついてしまったとか。そして天井にオレンジ色の光が浮いているのを見た翌日、友人の母親が死亡したとの知らせを受けたそうです。」

 以上です。できるだけ漫画に沿ってまとめてみました。敏さんの参考になれば良いのですが。

2016/10/28 (Fri) 23:01 | EDIT | REPLY |   
敏  
トイレの生首の件で……

初めまして、敏と申します。
かなり昔に、病院の待合室で怖い漫画を読んだことがあります。
その時読んだのはこの記事で取り上げられている漫画に間違いありません。

いきなり現れてなんですが、「天井から落ちる生首!?」の内容について詳しく教えていただけませんでしょうか?
実は私が読んだものは、肝心な部分のページが破れていて何故あの女の子が怪奇な現象に見舞われたのかが分からずじまいで、今でもモヤモヤな気分を引きずっている状態でして……。
「途中から現れた謎の少年」と、「暗闇の中で苦しみながらフェードアウトしていく女の子」の間のシーンがまるまる抜けているんです。最後は投稿者はこの話のせいでトイレの天井が怖くなり見ないようにしていたけど、ある日不思議な光が漂っているのを見つけ、まもなくご近所さん?が亡くなった、というかんじでしたよね。

不躾で恐縮ですが、上記の抜けていた部分を詳しく教えて頂けないでしょうか……どうかお願いします。

2016/10/28 (Fri) 16:03 | EDIT | REPLY |   

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