手塚治虫『ミクロイドS〈1〉』

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 手塚治虫『手塚治虫漫画全集 MT183 ミクロイドS〈1〉』 講談社 1981

 侵略SF漫画。昆虫から進化し高い知能を獲得したギドロンは、アメリカの砂漠の地下にアリに似た階層社会を構築していた。ギドロンの奴隷階級であるミクロイドは、もともと通常の人間だったが、ギドロンによって何世代にもわたって改造を施され、昆虫(5cm)ほどのサイズに縮小されたミュータントだ。背中に収納可能な肉羽を持ち、昆虫のように飛翔することもできる。間近に迫ったギドロンの地上侵攻を人類に知らせるため、ミクロイドは一人の使者を送り出した。

『ミクロイドS』 は、小学生のころ友達の家にあったボロボロで、閉じてもばふっと開いたままになる少年チャンピオンコミックス(カバーなし1巻のみ)を読んだのが最初で、それ以来著者の作品のなかでもとりわけ好きな作品となった。感想を書けるほどしっかり見たことがないのだが、1973年にはアニメ化もされている。もともとアニメ先行の企画だったのだそうだ。アニメは原作の設定とキャラクターを生かしたヒーローもので、なかなかよくできた作品だったらしい。

 この「手塚治虫漫画全集」版の第1巻には全18章のうち、第1章〜第5章が収録されている。ミクロイドの使者「ヤンマ」のコミュニティからの脱走、ミクロイドの「アゲハ」「マメゾウ」そして人間の少年「マナブ」との出会い、ヤンマの実兄でギドロンの手先となって脱走者を追う「ジガー」との確執、アゲハの裏切りなどが、スピード感のあるいくつもの戦闘や、マナブの学園生活を交えつつ、怖ろしいほど手際よく描写される。
 初読のときから一番印象に残っているのは、冒頭の三人のミクロイドが荒野をさまよう場面、砂塵のなかから巨大なケモノがぬっと顔を突き出すシーンだ。トリッキーさもさることながら、画面に漂う殺伐とした雰囲気が素晴らしい。

 それからやっぱりアゲハがかわいい。グズグズメソメソするキャラは好きじゃないけど、著者のヒロインにはいつも不思議な魅力を感じる。上手く説明できそうにないが、性格や設定がどれだけカスタムされても、拭いがたくドMな感じというか、とにかくあまり健全?でない魅力だ。脱ぎっぷりもいい。
 この第1巻はさんざんメソメソしたり、裸で吊るされたり、裏切ったりしてたアゲハが、長い髪を切ってギドロンとの戦いを決意するところで終わる。ヤンマたちの逃走劇がメインで、まだギドロンの本格的な侵攻もはじまってないが、展開は非常にスリリングで読み応えがある。舞台もアメリカの砂漠から、国連本部、日本の学校と変化に富んでいる。……以下第2巻の感想に続く。


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