楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-4 黒い絵本』

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 楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-4 黒い絵本』(『神の左手悪魔の右手〈4〉』小学館 1988 ビッグコミックス 所収)

 病弱な愛娘に読ませる絵本のネタにするために、猟奇殺人を重ねる父親の話。ベッドから起き上がることのできない、娘の名は「ももちゃん」。主人公の「想」はいつも通り意図せず超常的な能力を発揮して、ももちゃんの置かれた状況を察知、彼女を救おうとするのだが……。

 発表されてからすでに四半世紀以上経っているにも関わらず、いまだに全く色褪せることのない至高のスラッシャーコミック。むりやりケーキを食わされる→ゲロ→むりやりケーキとゲロを食わされる→裂かれた腹から内臓と一緒にケーキ&ゲロ噴出とか、両足のスネを折られて逆間接っぽくなった女性が一歩ごとに悲鳴を上げながら逃げようとするとか、一冊まるまる過剰な残虐シーンが目白押し。よくもまあこんなものすごいことが考えられるなあと、酷いシーンなのにうっかり感動してしまうほどのものすごさだ。
 そしてその着想を完璧に表現する作画もまた冴えわたっている。流血シーンばかりではなく、父親の重厚な存在感と、ももちゃんの子ウサギかチワワみたいな脆弱さとの、鮮やかな対比も素晴らしい。前にも同じようなことを書いたけど、あまりにも傑作すぎる傑作エピソードなので、体調が悪いときにはまじで避けた方がよさそう。

 ところでこのエピソードは2006年に「平成ガメラ・シリーズ」の金子修介監督によって映画化されている。先日たまたまCSでやってたのを見たんだけど(数回めの視聴です)、相当ライトな仕上がりの作品で、原作の異様な緊張感と鉛を飲まされたような手応えには残念ながら比ぶべくもない。ただ「メディアの違いを理解せよ」とはよく言ったもので、原作の大筋がどうにかキープされているだけに、メディアの違いを考える上で恰好の素材となっている。まな板の上でジタバタする素っ裸のももちゃん、なんてシーンの再現はとても無理だとしても、もう少しなんとか……。


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Posted byserpent sea

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